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「売れる本がいい本」だなんて。すべての本に懺悔しな!

2019.05.29

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玖保樹です。

先日古本屋を徘徊していると、『バルカン現代史』という約40年前に出された本が視界に入ってきました。玖保樹には昔セルビアに住んでいた友人がいるので「お」と思いましたが、手には取りませんでした。あまり売れた本だとは思えません。でも必要な人が確実にいたから、今こうして古本屋の棚に置かれていたのでしょう。

本というのは売れればいいというものではなく、売れなくても世にあるべきものがたくさんあるのです。なぜなら、その本がなければ知ることが叶わない世界が存在するからです。

もちろん出版社も会社組織ですから、営利を追求して誹(そし)りを受けるいわれはありません。しかしそれだけを追及していたら、それこそ偉大な知の集積が失われてしまうわけで。編集者たちもそれを知っているから、試行錯誤しながら硬軟取り揃えて、売れる本の売り上げで売れないけど必要な本の居場所を確保しながら、ビジネスを成立させているのです。

先日、作家の津原泰水さんが『日本国紀』の批判をしたことで、版元である幻冬舎代表の見城徹氏が、こともあろうか同社から発行された津原さんの著作の実売部数を暴露し、炎上する事件(?)が起きました。見城氏にしてみれば自分の本の何倍もの売り上げがある本にかみつく著者を、揶揄してやろうという気持ちがあったのかもしれません。

しかしあり得ない行為だし、その本を出した版元にも責任はあるのに、著者を貶めるツールとして実売部数を持ち出すなんて。この件に対しては花村萬月さんはじめ、何人もの作家が抗議の声をあげていました。

「売れる本こそが良い本で正義である」

という考え方もあるでしょう。

でもさっきも言いましたが、じゃあこのご時世あまり読まれないからといって、『小川芋銭先生と私』や『相互扶助論』や『ハブと人間』がこの世から消えることは、あってはならない。売れる本と誰かにとって必要な本は必ずしも一致しないから、人気がない=いらないではないのです。

本に限らず制作物における「売れるものこそが正義」「ランキングこそが真実」という考えって、ウェブメディアが浸透してきたこの10年ちょいでどんどん広がってきたように思えます。

玖保樹はかつて、当時の友人とともにとあるウェブニュースサイトの立ち上げをしていました。当時ウェブニュースサイトはまだ黎明期で、何でもありというか何が望まれているのかわからなかった。そこで知りたいこと、気になることを自分なりに取材し、記事にしていました。しかしPVが圧倒的に多いのは、芸能人のブログを引用した「〇〇が××に行き▲▲した」という記事でした。

足と頭を使って書いたものより、ブログをコピペしたようなもののほうが圧倒的に読まれていたんです。まあ知らない場所で起きたよくわからない出来事より、芸能人(当時はブロガーはまだほとんどいなかった)が行く場所やしていることを知りたい、という気持ちはわからなくもないですが……。

PVをあげる=広告収入が増えるということで、そのサイトも芸能人ネタばかりになり、真面目なニュース記事であっても、煽るようなタイトルで人目をひくことがミッションとなっていきました。なのでほどなくして、私は辞めました。今もそのサイトは健在ですが、もう何年もアクセスしていません。

収入源となるPVをあげることが第一になると、知名度や人気に頼るようになります。そして知名度や人気を得るために、過激なタイトルや言葉で耳目を引くことばかりを考えるようになります。

そのなれのはてが、長谷川豊氏だと私は思います。彼は凄まじく人権意識が欠如した、普通では思いつかないような酷い言葉を繰り出しました。そしてウェブニュースのインタビューで、かつて透析患者を中傷するコメントをしたことに対し「強いタイトルを使わないと読んでもらえないという思いが強くあった」「炎上商法と言われる、とにかく過激な言葉を使って、たたかれてもいいからとにかく知名度を上げようよと」と言いました。
https://abematimes.com/posts/7004471

長谷川氏が人気者だとは言いませんが、彼の言葉が多くの人の耳目を引き、話題になったのは事実です。

このように人気や知名度を追い求める先には、一体何があるのか。それはある属性の人たち(今回は同和地域の人たちでした)をターゲットにし、酷い言葉で貶めて注意を引くことを憚らない、良識の底が抜けた修羅だと思います。

ただ、そもそも津原さんは『日本国紀』に出典の明記がない引用が複数あることを指摘し、批判してました。でもそこはスルーだったのに、版元代表が「実売部数晒し」をした途端に怒り出した作家陣も、ちょっとどうかと個人的には思うのですが……。

話は変わりますが、このLPCのサイトにもリニューアル後、アクセスランキングが登場しましたね。確かに私も以前、他サイトでヒロシ(あえての敬称略)の本のレビューを書いた際、本人が見つけて褒めてくれたことで、アクセスがびょーんと伸びて嬉しかったことは否定しません。

でもやっぱりこれからも淡々と粛々と、ぬるい言葉と変わらぬスタンスでモノを言い続けていきたいと思います。

ではまた。

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