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#なんでないの プロジェクト代表福田和子さんたちの働きかけで、緊急避妊薬(アフターピル)がオンライン診療で処方できるようになった。ただし条件付きで、近くに受診できる医療機関がない場合や精神的に受診が難しい場合に限るという。対面診療なしに処方箋を受け取ることができるというが、郵送での受け取りだ。

緊急避妊薬は性交から72時間以内に飲むと8割程度の確率で妊娠を防ぐことができるらしいが、オンライン診療で処方してもらって、郵送されて、本人が薬を飲むまでに72時間以内が可能だろうか。

加えて、処方が可能なのは産婦人科医と所定の研修を受けた医師のみで、転売を防ぐために処方は一回一錠、かつ、薬剤師の前で服用させるという。さらには、妊娠の有無の確認のために、服用から3週間後の対面受診を要求する内容だ。

精神的に受診が難しい女性に薬剤師の目の前で薬を飲むよう求めたり、妊娠の有無を確認することが、緊急避妊をしたい女性に必要な要件だろうか。そんな要件を前にしてためらっていたら、「望まない妊娠」をしてしまう女性が出てくるだろう。

もし生徒が被害にあって、緊急避妊薬をオンライン処方してもらおうとした場合に、72時間以内で服用することができるだろうかと想像してみる。どう考えても、服用できない確率が高いだろうと思われる。

医療関係者の中には、緊急避妊薬が悪用されて薬が転売されたり、性風俗産業に携わる女性が服用させられたりするケースを危惧する声もあるらしいが、被害女性の立場に立った対応が求められよう。

そのためには、緊急避妊薬の適切な使用方法の確立と学校教育でのしっかりとした性の教育が欠かせない。かつて東京都の七尾養護学校で実践されていた性の教育に対して、「行き過ぎた性教育」と政治が介入したことは記憶に刻まれている。「学習指導要領を超える」として、教育委員会や管理職から指導されるのを恐れて、性の教育に二の足を踏んでいる教員は多い。

その東京都の教育委員会が「性教育の手引」を改訂した。学習指導要領では高校で扱うとされている避妊などを、中学校で扱う内容も盛り込まれている(詳細は東京都のHPで)。学習指導要領を超える内容を扱うとは、画期的だ。

スマートフォンが普及して、アダルトサイトなどで偏った性に関する情報に子どもたちが簡単に触れられる今日、性に関する正しい知識を身につけさせる教育が早期に必要だ。

ただ、東京都の手引きは、学習指導要領を超える内容を扱う場合は、保護者全員への説明と了解を得なければならないことになっている。

授業をするたびに、保護者への説明と了解が必要となれば、実践する教員側のハードルは高くなる。教員が実践するのをためらっているうちに、「望まない妊娠」をしてしまう女子中高生を生み出すことになるだろう。

少子化が進んでいるから、とにかく妊娠させたいのではないか……そんな目で世の中を見ていくと、教科書内容も「妊娠すること」を後押ししていることにつながる。

昨年度三年生で扱っていた教科書の内容に、「家父長制復活・繁殖活動推進教材」がたくさんあることは以前このコラムに書いたが、今年度扱っている一年生の教科書内容も同様だった。

まずは現代文の分野。小説や評論などの単元が一区切りついた後に、「表現」するページが数ページずつ設定されている。その中に、「日本人の人口について」のグラフが掲載されていた。「ここから読み取れることを文章にまとめよう」と課題が設定されており、少子高齢化について考えさせる内容だった。

そういえば、数学の「グラフを扱った単元」に掲載されていたグラフも、少子化が進んでいるグラフだった。教科書会社は違うのに、判で押したように少子化が進んでいるグラフが掲載されている。家庭科の教科書もしかり、現代社会もしかり。

古典の分野も同様だ。古文に親しむ最初の教材は、『宇治拾遺物語』の「ねずみの婿取り」。いきなり結婚を意識させる内容だ。恋愛を中心とした『伊勢物語』では、定番の「芥川」と「筒井筒」。

「芥川」では(男が女のところへ)「年を経てよばひわたりけるを」とあり、本文の注釈は「求婚し続けてきたが」となっている。「筒井筒」では、「男はこの女をこそ得め」など、求婚求婚、また求婚。

こちらも、単元が一区切りついた後のページがあって、「恋愛と結婚」というタイトルの文章が掲載されている。そのものズバリだ。古典の世界の恋愛や結婚についての説明が書かれている。「昔の恋愛や結婚の形態は現代と異なることが多い」と断っておいて、以下の内容が続く。

「通い婚」が一般的で、一夫多妻であること、身分社会だったので、結婚においても家柄が重視されていたことなどの説明から始まっている。その後、「恋の始まり」から「求愛・交際」へと説明は及び、和歌のたしなみが重要だったことについて述べる。

最後に「結婚とその後」の説明になり、正式に結婚しても「通い婚」が続くこと、二人の間に生まれた子どもは女性の家で養育されたことなどが記載されている。結びは「家柄の高い女性を正妻として迎え、同居する場合が多い」「男性が女性の家を訪れなくなると、夫婦関係は自然に解消した」。以上終わり、だ。

こんな伝統文化、尊重しなくていいや。と、思ってしまうが、どうだろう。「尊重して、一夫多妻、子育ては妻に任せっきりな男」を大量生産することを願っているのだろうか…などと勘ぐってしまう。

この教科書の編集委員は20人。そのうち女性は2人。男性が圧倒的に多い。大半が大学教授という肩書きであることも性の偏りにつながっていようが。ちなみに、昨年度の現代文の教科書の編集委員は9人。女性は2人だった。

編集委員の半分くらいが女性なら、もっと書き方も変わるのではないか。いや、おおもとの学習指導要領が変わらなければ無理か。

学習指導要領では、小学生で「初潮や精通など」を、中学生で「受精や妊娠など」を、高校生で「受精、妊娠、出産など」を扱うようになっているが、「性交」については触れられていない。先ほど述べた古典の世界の「恋愛と結婚」も同様、「性交」については一切触れていない。

「性交」については学ばせない、避妊も女性の主体的にはさせない、望まなくても子どもを孕んで産んでほしい、そんな思惑がこの国のいたるところにあるのではないかと、妄想を膨らませている。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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