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TALK ABOUT THE WORLD ドイツ編「北国の猛暑」

中沢あき2019.07.22

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「明日は40度近くまで上がるでしょう」

と、ラジオの天気予報が言うからスペインかイタリアのことかと思ったら、なんと我が町のことだった……。

6月後半、ドイツを始め欧州各地は熱波に襲われて、フランスでは史上最高気温の45度を記録したとか、暑さがすさまじい。

北国のドイツの夏は、日中は暑くても朝晩は15度前後などとひんやりと肌寒いくらいなのが普通なのだが、雨も降らずに連日30度超えともなると夜になっても20度を下回らない日があり、さすがにちょっと寝苦しい。

私たちは夏用とはいえ羽毛布団で、娘は冬からずっと使っている赤ちゃん用の寝袋で寝ていた我が家。さすがにそれじゃ暑いだろうと、あわてて夏用の寝袋を買いに行ったが、娘のサイズはすでに売り切れ、どうしようと売り場で一瞬悩んだが、よくよく考えればこういう熱帯夜(日本のそれとは比べものにならないが)が続くのは、せいぜい数日だろうと思い直し、その日は娘の腰から下をモスリンのおくるみで巻いてやり、大人は大きなバスタオルを掛けて寝たら充分にしのげた。

昨年のこの時期もやはりえらく暑い日が続いたうえに雨が降らず、農業や畜産業が打撃を受けて大変だったのだが、こういう暑さはそもそもドイツの気候らしくない。
夏といっても平均は25度くらい、湿気もない爽やかな天気が5月半ばから7月あたりまで続き、8月に入ればはやくも涼しい風が吹き始める、というのがいつもの夏だったのだ。だから、ドイツの多くの公共施設から一般家庭まで、まず建物にエアコンというものがついていない。

日本だったら北海道では似たような話らしいが、冷房が必要ない気候なのだ。たまにカフェやレストランで「冷房効いてます」とわざわざ掲げる店があるのは、それを売りにできるくらいめずらしいことだからなのである。

ちなみにこの「冷房のある店」は、中近東系の飲食店に多い。かの国々ではその熾烈な暑さゆえ、冷房をガンガンにきかせた環境は当たり前だから、エアコンのいらない気候でもその文化を持ってきたんだろう。

いまとなっては、このところの猛暑が来る未来を見越していたか? なんて……。

冷房のないドイツの暑さ対策というのもそもそも日本とまったく違う。湿気もなく、基本的に建物が石造りで冷えているので、暑い日はまず朝、窓を全開にして冷えた外気を入れる。その後の日中は窓を閉め、雨戸やカーテンをしっかり閉じて陽射しを遮断し、熱気を室内に入れないようにするのだ。

なので暑い日は皆、暗い部屋の中でじっとしている、というわけだ。

だから外から見ると、日中なのにどこの家も雨戸がしっかりおりていて、ちょっと異様な気がすると、窓を開けて風を通すようにしている私は思うが、かくいう我が家も以前は、夫が閉めた窓を私が開ける、また夫が閉める、といういたちごっこがあったっけ……。

というわけで暑さに耐性のないドイツの人々だから、こんな猛暑がやってくると皆の日常が非常へと変わる。

一般的に建物にはエアコンがついていないと書いたが、学校の校舎にも同様に冷房設備がない。なので気温が30度を超えると休校になり、子どもたちはいつもよりも早く家に帰ってくる。学童保育などに子どもを預けている家庭はいいが、自宅で仕事をしている友人は「先生が休みたいだけよ」とぼやいていた。

暗くて寒い冬が長い北国だから、爽やかな夏の時間をおおいに楽しみにしている国民性なのに、これだけ気温が上がるとやはりつらいらしく「しんどい」と皆が口々に言い、メールや電話では「暑さに気をつけてね」との挨拶がつくようになった。

行きつけの肉屋の女将さんとも暑さの話になる。移動屋台のこの店はもちろん空調なんてついてない。売り物を並べたショーケースには冷蔵機能がついているが、店内にはない。

気温がぐんと上がる天気予報を見てあわてて扇風機を買おうとしたら「どの電器店でも品切れだったのよ」とため息をつくから「さっき通りがかった雑貨店の前に扇風機の箱が山積みになってましたよ」と教えたら、「あら! すぐ見に行かなくちゃ!」とうれしそうだった。

かくいう我が家もこの暑さで地下室の物置きから小さな扇風機を出してきた。数年前に日本へ帰国した知人から譲り受けたこの扇風機。我が家で使うのはせいぜい年に数日くらいの頻度である。

ドイツはこの程度で足りるのよね。

そもそもドイツでは扇風機も売れ行きが上がったのはこの数年のことなのだ。まあドイツの猛暑ならこれで充分、と思いきや、今年はついにエアコンを買った、という人が身近にも数人出た。おお、いよいよドイツも家庭用エアコンが出回るようになってきたのか。

とまあそんなドイツの熱暑だが、東京のうだるような真夏の蒸し暑さを知っている私にとっては、気温は高くとも湿気のないカラッとした暑さはまだまだ楽しめるレベル。

そもそも一年の大半は気温が低く薄暗い気候の国なのだから、こんなときこそ短い夏を楽しまなきゃ。冷え性の私はおおいにノースリーブやサンダルのサマーファッションを楽しめる。
いやそれよりも、気温が30度近くになるという天気予報を見たら、まず数日分の献立と買い物を考える。冷やし中華に冷製パスタ、ガスパチョ、そうめんetc。重いスイカは夫に買ってきてもらう。自分の大好物だから、いつもは重い買い物を面倒くさがる彼も張り切って買ってくる。

今年は授乳中で断酒しているが、いつもならスイカをミキサーにかけてジンで割ったカクテルもいい。もちろん冷たい白やロゼワインをお供にスパイスの効いた中近東風のメニューもいいし、ハーブや唐辛子の効いた東南アジアのメニューもいいよね、などなど。

やっぱり花より団子。

だってね、涼しい気候で食べるスイカの味気ないことと言ったらないのです。

© Aki Nakazawa

今年はついに大手スーパーの広告にもエアコンが登場しました!といっても日本のように室外機が取りつけられないドイツの建物なので、こういう太いホースを窓から出して使うらしいです。
でも日本のエアコンほどの冷房効果はないんじゃないかなと思いますが、要はそれでまだ足りる暑さってことです。とはいえ、北国がこんな気候になるのはやはり地球温暖化の影響かなと思わざるをえず、複雑な気もするこの夏です。

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中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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