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盗撮と非盗撮の間

深井恵2019.09.12

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8月の中旬以降、しつこくしつこく報道されていた「あおり運転」。何度も何度も同じ映像が流れて、うんざりしていた。「あおり運転」以外に報道すべきニュースはないのか?  報道すべきニュースを何か隠してないか? などと、うがった見方をしていた。

「あおり運転」のニュースの影に隠れていたことは何だろうかと、友人と話をした。アマゾンの森林火災やスウェーデンの16歳の少女から始まった地球温暖化に対する抗議行動は、もっと報道されていい項目としてあがった。

そのほかにも、厚生労働省がHPで「水道民営化についてのパブリックコメント」を募集していたことも出された。
水道の民営化に反対の立場をとっている友人は、「気がついたら、パブリックコメントの募集の締め切りが過ぎていた」と、嘆息していた。ツイッターの情報で知ったとのこと。私自身は、パブリックコメントを募集していることすら知らなかった。

命にかかわる大切な水について、多くの人に知らせるべきだったろうに、ほとんど報道されなかった気がしている。民営化を推進したい側は、民営化賛成のパブリックコメントを送信するよう、密かに要請していたりして。パブリックコメントの集計結果が気になるところだ。

省庁のHPに、いつ何のパブリックコメント募集が始まるかわからないので、日常的にチェックしていく必要があると思ってはいたものの、なかなかHPチェックが習慣化しない。実際のところ、「そんなヒマはない」と思ってしまう。しかし、「政治に無関心な市民」ではいけない、香港市民の連日のデモ行動を見習わなければと、反省することしきりである。

「あおり運転」のニュースの影に隠れていたことのもう一つにあがったのは、東京電力福島第一原子力発電所事故の処理で、煙突(?)を切り離す作業を進めていることだった。作業を進めるにあたって、放射能漏れ等の危惧する点はなかったのか。

福島原発では、地下水の汚染が毎日続いている。溜まりに溜まった汚染水を最終的にどこに持っていくのか、解決策は出されていない。汚染水を薄めて海に放出する案が出ているようだが、ほとんど報道されていない。このまま忘れ去らせようとしているのだろうか。オリンピックを前に、放射能汚染についての話題はタブーなのか。

次に、「あおり運転」の報道自体には、問題はないか考えてみた。確かに、危険なあおり運転は悪い。だが、あおられた側は、まったく非の打ち所がない素晴らしい運転をしていたのか。気になるところだ。だが、「あおり運転」が始まったところからの映像は繰り返し流されたが、その前の段階の映像は報道されなかった。映像はあるはずだが、編集されて報道されると、全貌は見えないのではないか。

最後に、「あおり運転」をしつこく報道していた意図を考えてみた。「あおり運転」の厳罰化に向けた世論の喚起か、あるいは、「あおり運転」ならぬ「あおり報道」によって、車載カメラを搭載しようキャンペーンではないかという結論に達した。消費が冷え込んでいるいま、「あおり運転」の恐怖をあおって、車載カメラを購入させよう、消費税が増税される前に買わせようというシナリオ。考えすぎだろうか。

車載カメラなんて、絶対に自分の車にはつけたくない。車内の自分の行動がすべて録画され、自分の運転も録画されるなんて、まっぴらごめんだ。車載カメラをつける人は、自分の行動・運転に自信があるのだろうか。
車の運転をしたことのある人なら、一度もルール違反したことのない人などいないだろう。信号が「黄色から赤に変わる瞬間」に交差点をすり抜けたり、制限速度をオーバーして走った経験がゼロではないと確信している。それらすべての、ときに「違反」とも取れる運転が、全部録画されるのである。

車内での会話も、車内での行動も、すべて録画され、場合によっては警察に提出することにもなりかねない映像データ。それをわざわざお金を払って車載カメラを購入して録画するなんて、考えただけで、ゾッとする。

しかし、「車載カメラ」が標準装備の車も売り出され、車のリアウインドウに「録画中」のシールが貼られた車のうしろを運転することも増えてきた。「録画中」シールがあればまだいいが、録画されていることを知らないまま、勝手に録画されることが、当たり前になろうとしている。

撮影されている自覚のない状態での録画は、盗撮ではないのか。「防犯カメラ」の名のもとに、商店街等には監視カメラが当たり前になってきて久しい。もはや、路上でも、常に前後の車から監視され、自らの車載カメラで自らを録画し続ける時代になろうとしている。

「あおり運転」報道真っ盛りの先月、片側一車線の自動車専用道路を走っていたら、「もっとスピードを出せ」と言わんばかりの車間距離で、うしろの車が迫ってきた。スピード違反で捕まりたくはないので、「これ以上スピードを出すのは嫌だよん」と速度を上げずに、うしろの車を牽制しながら、前の車との車間距離を保って走っていた。自動車専用道路や高速道路では、前の車との距離を80~100メートルくらい空けるようにしている。もしものときにも、追突事故を起こさないためだ。

うしろの車にあおられながらも、同様の車間距離を保ちつつ、追い越し車線がきたら追い越させればいいやと、バックミラーをチラチラ見ながら走っていた。そうしたら、あろうことか、対向車線から中央分離帯のポールとポールの間を縫って、車が目の前に進入してきた。まさか自動車専用道路で対向車が前に割って入ってこようとは、まったく予期していなかった。
あわててクラクションを鳴り響かせ、進入してきた車とうしろの車に警告を発し、急ブレーキをかけ、自動車専用道路上で完全に停止した。

幸い、進入してきた車にもぶつからなかったし、うしろからあおってきていた車からも追突されなかった。冷や汗ものの体験だった。
進入してきた車は、その後、一度タイヤを切り返してからようやくUターンを完了させ、挨拶代わりにハザードランプを点滅させて、走って行った。
「危ないだろ!? ふざけた運転するな!」と車内で一人で怒鳴ったものの、クールダウンして、また車間距離を保って走った。うしろの車は、もうあおってこなかった。追い越し車線になっても、追い越していかなかった。

それにしても、こんな危険な運転をされたら、人によっては、追いかけて行って、注意の一つもしないと気がすまない場合もあるだろうなと思った。

「あおり運転」の報道と重ねて考えてみた。一方的に録画された映像が、私が激しくクラクションを鳴らしたところから始まったとしたら……。そして、「ふざけた運転するな!」と、怒りを爆発させて、追いかけていたとしたら。
自分の知らないところで勝手に撮影されたのを、盗撮されたとは言わないのだろうか。どうも「盗撮」の定義がわからなくなってきている。

通勤途中に、「車載カメラ録画中」のシールを貼った車が、制限速度をはるかに超えたスピードで走っていく様を見るたびに、「一発免停」の証拠映像を自分で撮影してることに気づいてないのかと不思議に思う。
まぁ、自分で自分を撮影する分には、盗撮にはならないからいいのかな。私は到底つける気にはならないが。何が盗撮で何が盗撮でないか、曖昧なまま、いつか「車載カメラ搭載割引」の自動車保険が、出回る日がくるかもしれない。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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