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外出禁止令下のフランスのDV対策~「マスク19」は危険を知らせる暗号

中島さおり2020.04.11

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世界中でコロナ対策の外出禁止が始まり、それに伴う問題も起こってきた。家を出られないことで、家庭内暴力が激しさを増す危険は当初から指摘されていたが、危惧されたとおり、世界中でDVの通報が増えている。アントニオ・グテーレス国連事務総長は「すべての政府にコロナ対策のなかにDVの予防を盛り込むよう」強く求めた。

フランスでも外出禁止令の出た3月17日以来、DVの通報が30%以上増加している。外出禁止でも開いている薬局を、助けを求める拠点として役立てることにしたことを、前回の連載中に書いたところ、もう少し詳しく聞きたいという要望があった。その後に追加された対策もあるので、ここにまとめて置くことにする。ちょうど先週の月曜日にマルレーヌ・シアッパ男女平等差別対策副大臣が新たな対策も打ち出している。

全国に約2万2000件ある薬局で「マスク19がほしい」といえば、これが危険を知らせる暗号になる。薬局員たちは女性たちを励まし、情報を聞いて警察に知らせる。
本人や目撃者が直接、警察を呼ぶためには緊急番号17番が使用できる。SMSを使うという方法も4月1日から可能になった。SMSは日本のCメールやショートメールに当たる電話番号を使用したメッセージで、114番がこの番号になる。またオンラインで知らせるプラットフォームもできた。
常時から使われている匿名、無料相談番号3919ももちろん機能している。

政府は、既存のシェルターのほかに、ホテル宿泊費2万2000泊分の援助を決めた。またDV被害者を助けるための非営利団体に100万ユーロの援助を決めた。非営利団体は全国におよそ1630あり、援助金はその職員、ボランティア、また世話を受ける人がウイルスから守られるようにするために使われる。

裁判所は現在、火急でない案件は処理しないことになっているが、重要案件と、DV関係は扱いを継続している。フランス北部地域圏の地方紙「ラ・ヴォワ・ド・ノール」は、リールの裁判所では、家庭内暴力に関しては、数よりも内容が深刻になっていると伝えている。

また全国の都市に、直接駆け込むことができる相談所が設けられる。シアッパ副大臣が大手不動産グループの合意を得てショッピングセンターのなかにすでに設置され始めている。
このほか、予防措置として暴力を振るってしまいそうな衝動を覚える男性のための電話番号も設けられた。話を聞いてもらい、暴力を事前に食い止める策である。
また、子どもに対する暴力は119番が受ける。

しかし、専門家たちはこれでは不十分だとして、「ル・モンド」に意見を投稿している。
裁判所が開いているといっても、彼女たちの申し立てを緊急と判断してもらえるとは限らない。先送りにされている間に死んでしまうかもしれない。
DVで殺されてしまうかもしれない命を救うには、緊急対策をするだけではたりない。

大事なのは、ただちに暴力夫を遠ざけることであり、そのためには裁判所が、「保護命令」を簡単に出すことを求めている。「保護命令」は被害者の申し立てが「真実と思われる」という理由だけで加害容疑者に別居を命じるもので、加害者に刑事上の責任は問わない。
フランスの裁判所はイギリスやスペインに比べて、「保護命令」を出す数が極端に少なく、告訴状や医師の診断書を「真実と思われる」ための根拠に提出させるケースが多いが、外出禁止でそれも容易でない現在、簡単に「保護命令」を出すようにと求めている。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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