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3回目の4月11日、もう時計の針を戻したくない。

北原みのり2021.04.09

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2019年4月11日にフラワーデモは東京と大阪ではじまりました。
性被害者の言葉を信じる#WithYouを表明する花を持ち、性暴力根絶と刑法改正を求めるデモは今、全国47都道府県にまで広まり、今も多くの都市で毎月11日にフラワーデモが開催されています。

2021年4月11日は私たちにとって、3回目の4月11日です。
フラワーデモのきっかけとなった2019年3月に連続した性暴力事件の無罪判決は、一審で無罪が確定したものをのぞき全て、高裁で逆転有罪となりました。これはフラワーデモをはじめ、この社会で多くの性被害者が#MeTooの声をあげ、性被害者側からみえる現実への理解を求めてきたことの結果だと、私たちは考えていました。

ところが、残念なことに2021年3月に、私たちが知る限り二件の性暴力事件に関して、性被害の実態から考えるとあまりにも無理解、そして現在の刑法の限界を突きつけられる判決が出てしまいました。

3月22日大津地裁で出された判決は、時計の針をフラワーデモ以前の2019年にまで戻す内容でした。当時12才の実子への強制わいせつと強制性交等罪の罪に問われた男性に対し、娘の証言の信用性に疑問があるとして無罪判決を言い渡しました。疑わしきは被告人の有利になるべきであるという大前提をもってしても、判決要旨を読む限り、裁判官が女児の証言が不自然であるとする根拠は、あまりにも性暴力について無知なものでした。

例えば女の子は最初の被害の日を明確に覚えていません。これをもって裁判官は強い印象を残す日なのに、日付を覚えていないのは不自然だとしました。また、女の子は学校の教員に家に帰りたくない、体罰を受けるからと相談します。性被害について語り出すのは、その後です。これをもって裁判官は、性被害によって追い詰められているならば最初に性被害を申告しなかったのは不自然だと考えます。そして「性被害をしないお父さんは大好きだ」と言った証言から、そもそも父親と良好な関係を築いているのだから証言は不自然だと考えます。この事件は、女の子が家に帰りたくないあまりに一度ついてしまった取り返しのつかない嘘を嘘で重ねたと考えるのは「自然」だとしたのです。

言うまでもなく、裁判官が不自然だと考えた女の子の言動は、性被害者にとってあまりにも自然な行為です。自らの心身を壊す被害であっても、共犯者のような気持ちを強いられ、その羞恥故に申告することが難しく、また継続的に家庭内でおきていた性被害であれば日時の特定は難しく、子どもであればなおのこと、自身の身体についての理解もないなかで証言が曖昧になることは当然のことです。そのような性被害の実態を知ることなく、自身の性規範の中で導きだされた大津地裁の判決は、性暴力への無知を剥き出しにした不当な判決ではないでしょうか。

3月15日には川崎地裁で、当時17才の女性が母親の交際相手からの強制性交等罪を訴えた事件で無罪がだされました。裁判所は、この女性が継続的に性被害をうけており、その結果、精神的に追い詰められていることも認めていますが、被害があったとされる日に実際に被害があったことを証明する合理的な証拠がないとして、無罪になりました。
強制わいせつの時効7年、強制性交等罪10年の時効によって、性被害が認められているにも関わらず無罪という、性被害者にとっては残酷な結論になってしまいました。

判決要旨を読む限り、裁判官は決して性被害に無知ではなく、性被害がどれほ被害者を追い詰めるかについても理解しているようにみられます。とはいえ、当時17才だった被害者が、被害後すぐに婦人科に行かず、妊娠の心配をそれほどしていないことが日記などで見受けられることを不自然だと考えるなど、10代の女性にとっての知識や現実が見えていないなど、推論の過程にジェンダーバイアスが色濃くあります。
いずれにせよ、この判決は、2017年に時効に関する刑法が改正されていれば、無罪にはならなかった可能性が非常に高い事件です。

2021年4月11日、3回目のフラワーデモは、この二つの判決を受け、大津地裁、川崎地前に集まり、裁判官のジェンダーバイアスを問題視し、刑法改正を強く訴えます。

4/11(日)緊急フラワーデモ
・12:00〜大津地裁前でスタンディング
詳細:@flowerdemoshiga
・15:00〜横浜地裁川崎支部前でスタンディング
詳細:@FD_kawasaki

※東京は19時〜行幸通りで集まります。

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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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