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<緊急寄稿>棚卸日記 Vol.10 「カウンターデモの恐ろしさ」

爪半月2022.05.25

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先日から続いている悪質なデマを本気で信じてる人が大量にいます。

◆デマと戦ってる暇はないのに◆

たくさんの問題を残したまま、AV新法が今にも可決されてしまいそうな逼迫感の中、5月22日に緊急アクションとして反対デモが行われました。

ところが、この反対デモを「セックスワーカー差別集会」と糾弾し、まったく同じ時間に同じ場所でカウンターデモをする''当事者団体''が出現しました。

抗議内容を見ると、「反対デモの賛同者は"セックスワーカーは判断もできずに搾取されているかわいそうな人たちで、その存在を許すことはできない"と主張しセックスワーカーを差別してる」などという、曲解によるデマが書かれていました。

棚卸日記 Vol.7 「性産業の『当事者』とは誰なのか」で解説した通り、性産業には①買われる当事者(風俗嬢)②買う当事者(買春客)③斡旋して利益を搾取する当事者(スカウト、店舗経営者)がいます。

常日頃から「許されない存在」として批判している対象は②と③の搾取者です。

搾取構造を温存させるべきではないと主張しているのです。

この三者を意図的に混同するのは①に対する深刻な二次加害なのですが、カウンターデモ団体は、まるで①が「許されない存在」であるかのような印象操作をして、仮想敵を作り出しました。こうしたデマが、今現場にいる現役の当事者たちをどれだけ傷付けるかわからないのでしょうか。

 

◆当事者の声を塞ぐ''当事者団体''◆

「セックスワーカー差別やめろ」と大騒ぎして、引退した風俗嬢やAV女優たちの口を塞いできたカウンターデモの人たちが「セックスワーカーの声を聞け」などという欺瞞に満ちたハッシュタグをつけてデマを拡散し、「セックスワーカーが安心・安全に働けるようにしたい」などと言いながら、当事者が劣悪な労働環境や人権侵害を告発すれば「スティグマに繋がるからやめろ」とトンポリする。

当事者に向かって「セックスワーカー差別やめろ」と絶叫して被害の告発を妨害する行為は当事者の声に対する蔑視であり、人権侵害ではないのでしょうか。

そして、「セックスワーカー」を一番見下してるのは買春客なのに、当事者団体を名乗るカウンターデモの方が買春客に怒らないのはなぜなのでしょうか。

風俗嬢に対する偏見をなくすためには、風俗嬢だけに押し付けられてきた蔑視や偏見を買春者たちに押し返す必要があるのではないでしょうか。

日本社会では大昔から女性だけが道徳的な正しさを問われ、女性だけに罪悪感が押し付けられてきました。援助交際が話題になれば、「性を売る少女たち」を道徳的に堕落した存在としてセンセーショナルに報じ、ブルセラが流行れば「売る動機」を問うべく少女たちにマイクを向ける。買う男性にこそ取材に行き、少女に性的な眼差しを向けることの倫理観を問うべきなのではないでしょうか。いつもいつも、社会の中で最も権力を持たない女性たちだけが責任を問われ、男性側の有罪性は不可視化されてきました。

スティグマを解消したいなら、こうした社会の歪みこそ是正する必要があるのではないでしょうか。ところが、「セックスワーカー差別」に反対する人たちは、決しておじさん社会を責めることはせず、当事者たちを「差別主義者」と糾弾することで二次加害に明け暮れるのです。(おじさん社会の利益を守りたいのか…?)と訝るほど執拗に。

 

◆「差別反対」を主張しながらハラスメントを正当化させるカウンターデモ◆

反対デモでは、カウンターデモによる悲惨な妨害行為がありました。

被害者が必死に声をあげてるのに、スピーチ台の近くを「赤い傘」を持ってウロウロして妨害するカウンターデモの男性。反対デモの主催側は点字ブロックを塞がないよう徹底してたのに…。そして当事者がいるから撮影禁止と言ってるのに隠し撮りされ、ニヤニヤした男性が「説明してください」と話し掛けて来る始末。(後から聞きましたが、当日反対デモに参加してくれた男性参加者はこのように絡まれたりしなかったそうです。カウンターデモの男性は、セキュリティ上のリスクを冒しながら当事者が参加するという状況の複雑さを熟知した上で、女性参加者を狙ってハラスメントをしているのです。どこまで卑劣なのでしょうか)

カウンターデモの人たちは、「セックスワーカーの声を聞け」などと言いながら当事者の告発の妨害ばかりして、藁人形論法によるデマが掛かれたビラを撒き、自分たちに好都合なナラティブばかり取捨選択して人権侵害の可視化を妨害し続けていました。

 

◆被害者/支援者の名誉を汚辱するデマ◆


また、Twitter上では「(性売買を禁止すれば)反ポルノの活動家が、殺人が起きても「自業自得」とか言うだけ。」といった憶測に基づくデマもありました。

殺人が起きて「自業自得」などと言うような"反ポルノ活動家"がいるなら名前を聞いてみたいです。少なくとも、私が知ってる支援者にそんな人は一人もいません。

苦しんでる当事者がいても本人の決定を否定できないから、介入したくても介入できずに、歯痒い思いをしながら必死に奔走してる支援者に対する名誉毀損です。

支援者の中には、かつて当事者だった人もいます。

彼らは自分自身が苦しんで、そして苦しむ同業者をたくさん見てきて、その上で「搾取構造を温存させるべきではない」と性売買に反対の立場に立ってるのです。

苦しんでる当事者がこれ以上自分を責めないように、気持ちに寄り添いながら慎重に解決を模索する人たちに対して、あまりにも失礼なのではないでしょうか。

デマを信じてる人たちは、支援者たちがどれだけ切実な思いで、これ以上被害者が出ないように、自殺者が出ないように奔走してるかがわからないのでしょうか。デマはやめてください。

 

◆「正しいセックス」の話は誰もしてません◆


当事者が現実に起きた被害を告発してる最中も、カウンターデモはすぐ隣で「正しいセックス勝手に決めるな!」などと絶叫して、当事者の声を掻き消そうとしてきました。

「正しいセックス」の話なんて誰もしてないのに、あたかもそんな話をしてるかのように印象操作して仮想敵を作り出して妨害するカウンターデモのみなさんは、一体誰と戦ってるのでしょうか。

誰がどのような性交をするかについてジャッジしたり、性行為の内容の妥当性に優劣をつけたり、健全度を序列化するための議論はしてません。どんなセックスが健全かなんて話は誰もしてないのに、「セックスフォビアだ」と腐す人や、「差別だ」と論点ずらしをするカウンターデモの人たちは、被害者に対する二次加害をしている自覚はあるのでしょうか。

セックスで重要なのは同意の有無です。

好きな人同士が、同意の上で楽しむプレイなら全て健全ですし、逆にいわゆるノーマルなセックスでも同意がなければ暴力です。

暴力の中でも特に、支配欲と嗜虐心の充足を目的に作られてる映像(肛門性交やSM、輪姦や凌辱行為)による被害が甚大だという話をしているだけであって、ノーマルなプレイならOKという主張ももちろんしてません。

そして、AVや性売買の世界に「同意」はありえません。

同意とは、

・対等な関係性でないと成立しない。
・完全な形で拒否権が保障された状況でなければ成立しない。(合意することも合意しないことも等しく尊重されることが前提)
・可能性のある結果や、別の異なる選択肢がわかっていて、双方の情報への理解度に格差がない。

と言った条件が必須になるため、性売買のように金銭授受を介した関係性に対等はありえないのです。そこには必ず権力勾配と圧力が発生します。

以上のことから、極端に酷いプレイに限らず、性売買もAVも全て同意がないという意味では暴力なのです。一般社会でやればセクハラ・性暴力となって慰謝料が発生することを、金銭授受により正当化させる、そういう世界なのです。

 

◆偏見の原因を作ってきたのは被害者ではなくAVプロダクションです◆


本来、対等な関係性で同意があれば犯罪ではない行為が、性産業やAVの世界では「支配や加害の手段」として利用されていることが問題なのです。

言うまでもなく、私はLGBTQ差別に反対です。AVの中で展開される加害行為に対する批判が、LGBTQへの偏見や抑圧を強化するようなことはあってはならないと思います。

ですが、その原因を作ってきたのは、被害に遭った女性たちではなく、加害行為を「文化」として流通させてきたプロダクションと男性社会なのです。「LGBTQへの偏見を強化させないでほしい」といった批判を向けるのであれば、被害者に向けるのではなく、こうしたAVを作ってきたプロダクションと、歓喜して買い支えてきた男性社会に向けるべきです。

攻撃の矛先を見誤らないでほしいです。

「AV出演被害防止・救済法」の話をしているのだから、被害の話をするのは当然です。

どんな被害の類型があるか洗い出し、全ての被害者が救済対象から取りこぼされないように検討するための議論をしています。

藁人形論法による論点ずらしで妨害されるたびに、この国の暴力に対する感度の鈍さを突き付けられた気持ちになります。

曲解によるデマに対する消火活動に明け暮れる間にもAV新法が可決してしまいそうです。

どうか、今一番必要な議論を遮らないでください。

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