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<緊急寄稿>棚卸日記 Vol.11「発達障害差別に反対なら『労働市場からの排除』という巨大な差別と戦うべき」

爪半月2022.05.26

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◆日本で障害者に向けられる偏見について◆

まず前置きとして、私自身が障害当事者として、日本社会の中で障害者がどんな偏見を向けられて行動を監視・制約されてるかについて抗議してきた人間です。

DPI日本会議「精神障害のある人の権利Q&A」に、偏見に基づく精神障害者差別の事例がたくさん紹介されてますので、関心のある方は是非お読みください。

「日本は、どこまでも病気や障害だけを取り出して『無理』『危険』と見て予防しようという姿勢が根深く、今も大量の欠格条項が残されています。
障害者権利条約を批准した国として、欠格条項をはじめとする法制度の差別の廃止、また、障害を隠す必要のない社会、国内法も掲げた『障害ゆえに分け隔てられることのない共生社会』との目的にむけて、あらためて、障害別をこえた取り組みが求められています。」(『精神障害のある人の権利Q&A』72ページ)

日本社会において障害者は、運転免許更新の際も適正能力を疑われ、育児する際もサポートではなく監視されるという屈辱的な風潮が未だに根強く残っています。

そして私は、そうした偏見をなくすために抗議している障害者の一人です。

ですが、だからと言って、私は性産業で搾取される女性たちが受けてる人権侵害の告発をやめようとは思いません。私の言葉が当事者を傷付ける可能性があっても、です。

なぜなら、現実に起きてる人権侵害を放置することは、人権侵害に加担することと同義だからです。

 

◆「偏見やめろ」の前に人権侵害防ぐのが先◆

先日行われたAV新法反対デモの妨害に来ていたカウンターデモ集団の中に、「発達障害への偏見やめろ」というプラカードを持った男性がいました。

私はそれを見て、(じゃあお前は発達障害の子がどんどん性産業に吸収されてボロボロになっても知らんぷりなんだな!)と猛烈に腹が立ちました。

(お前はうんこ食わされずに済む人生でよかったな!偏見とか言ってる場合じゃねえよ、現に被害がいくらでも起きてんだよ。「偏見やめろ」の前に人権侵害防ぐのが先だろ!!)

・・・今まで散々、トラウマや困難を抱えた女性たちが自分の被害を被害と自覚できないまま「君はドMだね〜」「こんなことまでできちゃうなんてプロ意識高いね〜」「天然でかわいいね♡」などと“褒められながら“暴力的なプレイを強要され、「調教」と称した虐待をされてる光景を現場で見てきた立場としては、逼迫した状況の伝わらなさに怒りが爆発しそうになりました。彼女たちは「お金をもらってる以上これは仕事」と信じ込まされてるので、自分が受けてる暴力を暴力だと認識できないのです。

すでに起きている人権侵害を放置し続けて何が“セックスワーカーの権利“なのか。カウンターデモの人たちが人権侵害を黙殺して、被害に遭う環境を温存させてるんじゃないのか・・・?とさえ思えて、無性に腹が立ちました。

 

◆労働市場からの排除という巨大な差別と戦うべき◆

そもそも、発達障害の女性が昼職から排除されて、性産業しか受け皿がなくなってしまうことの方がよっぽど差別的ではないのでしょうか。

発達障害は「勤怠不良」「成長性がない」などと見做され、会社で退職勧奨の対象になりやすく、自主退職や解雇になることが非常に多いことが指摘されています。

失業後は非正規労働者や無職などの低所得者になる可能性が高いですが、こうした困難に対する支援体制の不備を社会は放置し続けています。

また、採用段階でコンプライアンス違反やパフォーマンス不良などと言った人材リスクを排除するための適性検査を実施する企業も多く、発達障害者の採用を回避するための設問も設けられています。こうしたことこそが「差別」であり「排除」なのではないでしょうか。

日本はSDGsを採択した国連加盟国じゃなかったんですか?

インクルーシブな社会を目指すはずじゃなかったんですか?

差別構造はそのままにしたまま、人権侵害を告発した人間に対して「差別やめろ」って怒る人は糾弾のベクトルが間違ってます。

障害があっても同じように就労の機会を得られる社会を目指すべきだと思わないのでしょうか。

何かしらの困難があって一般就労に適応できない人が排除されること自体が強烈な差別なのに、そこに怒らないのはおかしいです。

負荷の高い社会適応を強いられなくても、ありのままの姿で当たり前に職業選択の自由と生存権が保障された国を目指すべきではないのでしょうか。

私は「朝起きられない子」「仕事を覚えるのに時間が掛かる子」「意図せず場違いな発言をして窮地に立たされてしまう子」そういう女性をたくさん見てきましたが、そういう女性に対して「空気読めないやつだ」「あの子使えない」って排除してきた社会に対して猛烈に怒ってます。昼職でパワハラされても「私がどんくさいからだ・・・」と自分を責めてしまう女性もいました。被害者が自分の被害に気付けずに自責してしまうような理不尽な社会は大至急変えたいです。

棚卸日記Vol.6 「成人女性に対する暴力だけが暴力と認識されない国」でも書いたように、「選択」という行為は選択肢を持つ人にしかできません。選択肢を持たずに、あるいは昼の仕事に対する苦手意識から性産業に来た人は、すでに「職業選択の自由」を制限されています…差別に抗議するのなら、まずはそうした社会の態度を変える努力をすべきではないのでしょうか。

◆情報格差により医療に繋がれない当事者がたくさんいる◆

発達障害が社会に広く認知され始めたのはまだ最近の話です。検査できる医療機関もようやく普及し始めたばかりです。医師の理解度や解釈もまちまちで中にはトンデモ医師も存在します。

1990年代後半から発達障害に関する本が普通の本屋さんにも少しずつ並ぶようになり、2000年代~関心を持つ医師も徐々に増えましたが、専門的に検査できるクリニックはほとんどありませんでした。

2010年代になると、メディアが特集を組む頻度が上がり世間の認知度も上がりましたが、反面、特性を面白おかしく描写したり自虐ネタにするような傾向も目立ち、誤解されやすくもなりました。2020年代に入ってようやく、レビューをみて医師を選べる程度に選択肢も増えましたが、それでも情報への理解度も、普及度も、依然として不十分です。

未発見なまま、未診断なまま、自分が感じてる生きづらさの原因を「知らない」まま、混乱しながらもサバイブしてる人はとても多いです。

 

◆医療への接続難度にジェンダー差が出ることも◆

自閉症の女性は「マスキング」といって、幼少期に周りと自分の差異に気付いても、いじめられたり仲間はずれにされないために特性を隠し、「普通」に振る舞うことで周囲からの敵意を逃れようとする生存戦略を無意識に取ることがあるため、障害が見つかりにくい傾向があることも指摘されています。

同じ困難があっても、女性の方がソーシャルスキルが高いため、なかなか診断されずに見逃されてしまい、医療インフラの悪さの皺寄せを自助努力で間に合わせてしまう。自分ではコントロールできない困難を抱えながらも、自分が発達障害だと「知らない」まま生きてる女性たちは、どうにか適応できる場所で適応して生き抜こうとしてしまうのです。

自分が発達障害だと「知ってる」人は、ある意味で対症療法もあるし、ケアにも繋がれますが、診断もされず医療にも繋がれない女性たちは五里霧中のまま自助努力で生き延びるしかないのです。

先述の「発達障害への偏見やめろ」というプラカードを持っていたカウンターデモの男性が障害当事者かどうかは不明ですが、仮にもし当事者だったとしても、そうやって自分が発達障害だと「知ってる」時点で彼はまだ恵まれた環境にいるのです。

自分が発達障害だという情報を「知ってる」のと「知らないまま」生きるのとでは、困難に対応する際の選択肢には大きな差が出ます。

医療アクセスの改善を求めるためには、そこに「接続の悪さ」があることを可視化させなければならない。風俗の場合、自分が受ける人権侵害さえ妥協すればどうにか生き抜いてしまえるから、声をあげられる当事者は少なく、いつまで経っても医療インフラは改善されないままです。

 

◆葛藤しながら書く以外に方法がない◆

棚卸日記Vol.8 「搾取構造の告発は『差別』なのか」で、「障害のある女性を狙って搾取する人間を告発すること」は障害者に対する差別なのでしょうか。明確にそうした搾取の類型が存在して、すでに深刻な人権侵害が起きていても告発すべきではないのでしょうか。という問いを投げました。(そんなわけねえだろ。偏見差別言ってる場合じゃねえんだよ)、というのが正直な感想です。

この問題は今まで語られてこなかったから議論の俎上に上げるだけでありとあらゆる矢が飛んできますし、私自身も、(過去の自分が同じことを言われたら確実にブチ切れるだろうな)ということばかり書いてます。現役時代の私と今の私は、別人かと思うくらい考え方が変わりました。私の文章を読んで傷付く当事者がいることも理解しているし、適切な言葉を探せないときもあります。当事者なら何を書いてもいいとも思っていません。

だけど人権侵害を放置していいとは絶対に思いません。

 

◆性産業は、スーパー自助努力◆

現場で頑張る当事者を応援し続けることが、公助を節約したくて仕方ない国をどれだけ甘やかすことになるか知ってほしいです。

当事者の決定を尊重すればするほど、当事者に自己責任論を押し付けてしまうことも。

そして、今この構造を改善しなければ、次世代にも同じような自助努力を強いてしまうことになります。本当にそれが妥当なのでしょうか。

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