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高校生と労働基準法

深井恵2012.01.21

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2012年が始まりました。今年もよろしくお願いします。
さて、年末はバタバタしていました。昨年度、生徒への聞きとり調査で、働く職場にハラスメントが横行していることが判明して、今年も職員で手分けして生徒全員の聞きとり調査を実施しました。今回は、「労働条件を明示されているか」にも焦点をあてた調査でした。その結果、働いている生徒のうち半数を超える生徒が、明示されていないという実態が浮き彫りになりました。
その実態を前に、いまの自分に何ができるのか・・・と、あれこれ考えて、とりあえず一人でもできることとして、?地元新聞社の「読者の声」に投書すること、?労働局に行って、定時制に勤務する一教員として相談してみることを、実行することにしました。本当は、学校や教育委員会、組合など、組織的な動きができればいいのですが、組織が動くのを待っていては、時間がかかっていつまでたっても進まないので、自分の責任で行動のできる範囲で動いてみることにしたのです。
まずは投書。投書は「匿名希望」もありえますが、実名と職業(公務員)で自宅の電話番号を連絡先にして送信しました。すると、新聞社から職場に問い合わせの電話がかかってきました。連絡先を自宅にしていたのに、なぜ職場に?と警戒したら、記者が自宅に電話したところ、母が電話に出て「職場にかけてくれ」と職場の電話番号を教えたらしいのです(母の言動と背景については話すと長くなるので今回は省略します)。
新聞社がなぜ電話をかけてきたかというと、「高校生の多くが労働条件を明示されていないのは本当なのか、なぜあなたはそのことを知っているのか、その根拠は? できたら詳しい話を聞きたいので、日を改めて取材させてもらえないか」ということでした。個人的な日常生活の他愛もない内容の「読者の声」なら無条件で掲載できるが、社会問題にかかわることについては根拠のないことは掲載できないのか? もしかしたら、その新聞社も労働条件を明示していないのではないか? 新聞社に広告を出してくれている地元企業への影響を考えているのか? などなど、あれこれと頭の中で考えました。
こちらとしては、「読者の声」に一回掲載されて終わりというより、新聞社が独自取材して、労働者の人権を守る立場から「セクハラ」「最低賃金違反」「賃金未払い」などの連載企画の記事となることを望んでいたので、詳しく話をして今後につながればと取材に応じました。
取材対応した記者は、労働問題を担当している記者だということでした(「読者の声」を担当している人とは別の人)。高校生の働く職場で起こっている労働者としての人権が侵害されているケースを知っている範囲詳しく伝えました。コンビニやラーメン店など、男性客が多く利用する店では、「金銭の授受の場面で手を握る」「ものを尋ねる時に店員の肩を抱くようにして話しかけてくる」「アドレスを聞いてくる」、介護のアルバイトでは性器を見せつける高齢男性がいること等のセクシュアル・ハラスメントの実態があること。労働時間を値切るためなかなかタイムカードを押させない、勤務時間を15分単位で端数を毎日切り捨てる等の未払い労働があること。労働条件を書面で示されていないまま働いている生徒が多いこと。
これらの労働問題は、何も定時制高校に通う生徒だけの問題ではないし、全日制に通う生徒の中にもアルバイトをしている生徒もいるだろう。高校卒業後に働き始める子どもたちや、パート労働をしている人、ひいては、全ての労働者にも当てはまるのではないか・・・云々。
担当記者は、今後も取材を続けていきたいと言ってくれました。最後に、本校だけ学校名が出されると、本校の生徒の不利益になりかねないのでそれだけは避けてほしい。学校の調査結果を出す場合は管理職の許可を取ってからにしてほしいとの確認をして取材を終えました。取材を受けた2日後、投書した文章が「読者の声」に掲載されていました。送信した文章は以下のものです。新聞用語等の関係で、掲載された文章とは若干異なっていますが、ほぼ同様です。
「労働基準法違反がまかり通っている」
労働基準法第15条をご存じだろうか。詳細は省略するが、使用者に対して、労働者への労働条件の明示を義務づけているのだ。ところが、高校生のアルバイトでは、その多くが労働条件を明示されないままになっている。高校生だけではなく、非正規労働の若者の多く、そして、パート労働者も明示されていないのではないか。
そもそも、雇う側が、この「労働条件の明示義務」を知らないことが多い。明示すべき事項は、労働契約の期間、始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇、賃金の決支払い時期、退職に関する事項など多岐にわたる。労基法を使わなければ「絵に描いた餅」に終わってしまう。非正規労働者が多くを占める今日、労基法を遵守する社会である必要性を強く感じる。国や県の関係諸機関が、労働者としての人権を守るために動いてくれることを切に願う。
この文章を、労働局の職員が読んでいて、地元新聞社に電話をかけてきたと、取材を受けた記者がメールで教えてくれました。労働局へ直接訴えに行く計画は、この「読者の声」掲載よりも前に日程が決定していたので、「点が線になった」と実感した次第です。次回は労働局に行ったときのお話を書きます。

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