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スクールフェミ  実効性のある少子化対策とは

深井恵2023.01.11

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2023年始まりました。今年もよろしくお願いします。

年間出生数が80万人を切るという事態に、岸田首相は「異次元の少子化対策」をすると発表したが、具体的な中身は不明だ。「異次元」などと表面的には大きく出た感があるが、果たして内実が伴うものなのか、大して期待していないのは筆者だけだろうか。
東京都の小池知事は、少子化対策待ったなしと、「子ども一人当たり月額5000円の子ども手当」を支給することを公表した。確かに先立つものはお金だ。子育てにはお金がかかる。だが、月額5000円で子どもが増えるのか。出さないよりはいいが、根本的な解決策には程遠い気がしてならない。

では、何が必要か。そう簡単にはいかないが、職の安定と十分な賃金、教育の無償化、ワーク・ライフ・バランス、そしてジェンダー平等教育と労働教育ではないかと考える。

小泉政権以降、派遣などの非正規労働者が増え、「数カ月後、自分がどこの会社で何の仕事をしているか、わからない」「派遣会社に上前をはねられて、手取りではカツカツの生活」「そもそもボーナスはない」といった若者が多い。
数カ月先の見通しも立てられないのに、子どもを産めと言われて、はいそうですかと産めるはずはないだろう。非正規労働では産休 ・育休取得は望めそうにない。日々の生活費で精いっぱいなのに、子どもを産み育てる経済的なゆとりがどこにあるだろうか。北欧のように教育の無償化が進めば、安心して子育てができるはずだ。

また、イーロン・マスク氏の望むような「会社に人生を捧げる働き方」では、家に帰ってゆったりとした時間を過ごすことができず、家事の役割分担もできないままだ。「家事・育児は女子力」などと勘違いしている夫がいれば、妻の不幸ははかりしれない。子どもを産みたいと思えない女性が増える要因だ。
家に帰って家事すらままならなければ、セックスする時間もないだろう。仮にセックスできたとしても、男性の一方的な排泄セックスレベルで終わり。お互いが心地よい豊かなセックスは、短時間では無理がある。お互いを求めあっての子づくりなど望めない。

2023年1月3日の「毎日新聞」に、育児休業を取った男性の、情けない実態が掲載されていた。出産・育児に関するアプリ「ママリ」を運営している「コネヒト」という会社が命名した「取るだけ育休」だ。読んで字のごとく、育休を取るだけで実際にほとんど育児しない男性の育休。記事によると、育休中の32.3%が「1日の家事育児は2時間以下」で、47.4%が「3時間以下」だったとのこと。この中に、30分未満や0時間も含まれているかと想像すると、ダメだこりゃ……という気分になる。
記事にあった妻からの自由回答では「共働きで余裕がないため家事分担を決めたが、忘れていたりなかなかやってくれなかったりした」「仕事から帰ってスマホばかり見ている。もっと子どもに向き合ってほしい」「オムツ替えや抱っこ、お風呂を赤ちゃんの機嫌よくできるようになってほしい。出掛けたいのに預けていけない」「(夫の育休)取得期間が短すぎる」など、育休の意味わかってんの? と夫に問いただしたくなる内容が寄せられていた。筆者が、ジェンダー平等教育が必要と考える理由もここにある。

先日、ある男子生徒が、制服が破れたと保健室に来ていた。家庭科の教員がいなかったので保健室に来たようだった。養護教諭は針と糸をその生徒に渡し、生徒自身が破れた制服を針と糸でチクチク縫っていた。その時その生徒が「俺、女子力高いやろ」と言ったので、「裁縫できる力は、女子男子問わず必要だから、それは女子力とは言わず、人間力と言ったほうがいい。自分で縫えるのがいい」と返した。
ジェンダー平等教育は、そんな小さなことの積み重ねだ。破れたと自分の服を、「女子力」のある女性(母親や妻)が縫って当たり前だとするのではなく、「人間力」として自分の力を発揮し、自ら縫う。将来、そんな夫になれよと願わずにはいられない。

今回のケースで、養護教諭が「女子力」を発揮して縫ってやらずに、生徒自身に縫わせていたのがよかった。教員によっては、ジェンダー平等教育をせずに、縫ってやる場合も考えられた。

3学期には、メディア・リテラシーの授業を予定している。情報をうのみにしない、複数の情報を比較する、自分でじっくり考えるなどなど、インターネットやSNSに常時触れている今の子どもたちに特に必要なリテラシーだ。
昨年の3学期にメディア・リテラシーを扱った授業の際、筆者に聞こえないような小さな声で「AV (アダルト・ビデオ)」と口にした男子生徒がいた。この手の性的な言葉を、授業とは無関係で口にして雑談する男子生徒がまれにいる。彼らの授業担当者のうち、女性教員は筆者だけだ。筆者が女性だからなのか、他の男性教員の授業時にもそんな性的な言葉を生徒が口にしているのかどうかはわからない。
「AV」発言をここで無視するわけにもいかず、逆手にとって「いま誰かがAVって言ったけど、AVにも嘘がたくさんある。AVを信じて生身の女性に対して同じようなことをしたらとんでもない。うんぬん…」と話をした。男性教員なら「AVは嘘」などと話をしないだろう。自分にできるジェンダー平等教育を、あらゆる機会にある場所で行うのみだ。彼ら自身のために、そして将来、彼らと関わるすべての女性のために。

そして最後に労働教育。いま、労働者のうち、労働組合に加入している割合は16%程度だという。組合がない職場も増えている。賃上げの要求も権利の拡大も、組合がなければそう簡単にはいかない。職場に組合がなくても、ユニオンに加入すれば一緒に闘ってくれるが、労働組合やユニオンなどについて、学生の時に学んでおかなければ、働き始めてからでは遅い。高校生までのうちに、しっかりとした労働教育を行い、労働者として声を上げられる大人に育てていく必要がある。そしてそれは、少子化対策の根本に関わることだと信じている。

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