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夜間定時制高校総括

深井恵2013.06.30

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「春闘の一時金満額回答」という見出しが躍るニュースばかりが目立つが、これって本当に「アベノミクス効果」なのか。いまの円安レベルは民主党政権下でなかったことなのか。日本銀行のHPで過去の外国為替相場を検索してみた。2009年9月16日鳩山内閣が発足、その年の12月18日の為替相場は1ドル89円だったようだ。同HPの2013年2月20日の外国為替相場は1ドル89円。同じ額の相場もあったことがわかる。「円安で好景気、安倍政権のおかげ」というフレーズが垂れ流されているが、円安に嘆く企業も当然あるはずだし、海外旅行をしたい人等にとってはデメリット。
加えて、今回の春闘、「一時金の満額」が大半であって、ベースアップになったところは少ないよう。非正規労働の割合が労働者の3人に1人、若者世代は2人に1人と言われる今日、一時金をもらえる非正規労働者はどれだけいるだろうか。非正規労働者の大半は「賞与なし」ではないか。正規労働者でも「賞与なし」の勤務労働条件の人もいる。今年度、4年生のクラス担任をしていて、生徒の進路指導で就職希望の生徒の関連で、高卒の求人票を見る機会がおおかったのだが、正社員募集でも賞与なしのところが多いという印象を受けた。「一時金の満額」で小躍りしているようでは、労働者間の分断・亀裂は深まるばかりではないか。いままで出し渋ってきた企業利益を、一部の労働者に限ってこの時期まで先送りして分け与え、「安倍政権のおかげ」を印象づけるための片棒を担いでいる印象を受ける。
公務員の賃金は、「震災の復興」に充てるため国家公務員の賃金が7,8%減額になったのを受けて、地方公務員の賃金も下げようとしている。今回の春闘で多くの企業の一時金が満額回答だったとしても、公務員の賃金(細かくいうと、今年の一時金)の向上にはつながらないのではないかと懸念される。この予言、外れることを祈るばかりである。
話は変わるが、3月は異動の季節。どうも今年度末で、いまの学校を異動しそうである。(今月末までどうなるかは不確定だが・・・)。そこで、今回は、夜間定時制高校の総括をしておこうと思う。
定時制高校に赴任した6年前、全日制との大きな違いは、「生徒の大半が働いている」「制服がない」「夕方に給食がある」という点だと思っていた。まずはその3点を通して気づかされた問題について述べたい。
「生徒の大半が働いている」という点については、「子どもの貧困」が絡んでいることが多い。生徒自身のアルバイト代が、その家庭の生活費の大半を占めるといった家庭も珍しくない。生徒が働くことは悪いことではない。働くことで社会人としてのマナーを身につけたり、自己肯定感を高めたりすることもできるし、定時制高校に通うなら、できるだけ働いて欲しいと思っている。だが、その働く場が、劣悪な労働条件・労働環境であることも多々あった。以前このコラムでも書いたが、セクハラ・パワハラが横行している職場や、飲食店で働いていてお皿を割ったら賃金からお皿の代金を弁償させられる職場、残業代の未払い、割増賃金の未払い、雇い始めるときに労働条件を明示しない等々枚挙にいとまがない。この実態は、定時制高校の通う生徒だけの問題ではなく、むしろ、一般労働者がおかれている労働実態を表していると言える。
そして、定時制高校に通う生徒の保護者自身も非正規労働で、ダブルワーク・トリプルワークも珍しくはない。子どもの教育に関心を持ちたくても、時間的にも肉体的にも精神的にも、無理な状況につながる。
次に「制服がない」についていだが、「女子はセーラー服、男子は詰め襟」あるいは、ブレザーの制服であっても「女子はスカート、男子はズボン」を強制させられ、「女は女らしく、男は男らしく」を求めてくる全日制のジェンダー感覚を受け入れられない、セクシュアル・マイノリティの子どもたちが、制服のない定時制高校へ進路変更してやってくる。しかし、定時制高校の多くは高校再編の統廃合の対象になって、学校数が全国的に激減している。自宅から遠いところにしか定時制がなく通いたくても通えないケースや、通えても通学費用がとても高額になるケースが増えている。
先日、『格差社会にゆれる定時制高校 ~教育の機会均等のゆくえ~』(手島純 著 2007年9月25日 彩流社発行 1500円+税)という本を読んでいたら、「1947年に成立した学校教育法では、高等学校教育が、通常課程(いわゆる全日制課程のこと)・夜間課程・定時制課程の三つの課程で行われるという規定であった」と書かれていた。夜間課程と定時制課程は別だったということ。職場の同僚の大学時代の同級生に「定時制高校」出身者がいて、「農閑期等に学校がある定時制課程」の出身者だったという。その後、夜間課程が定時制課程の中に包括されたらしい。
また、首都大学東京の教育学研究室「高等学校定時制課程についての研究」によると、1947年12月27日に文部省が「新制高等学校実施準備に関する件」(発学534号)を出し、「新制高等学校実施の手引」を頒布。この手引の「新制高等学校定時制課程について」で、「分校を設け通学の便宜を計ること」と謳われているという。もともと高等学校の分校は、定時制課程だけであったということだ。学校教育法の該当箇所を引用すると、以下の条文になる。
学校教育法 (昭和22年[1947年]3月31日 法律第26号)
第一章 総則
第四条
国立学校及びこの法律によつて設置義務を負う者の設置する学校のほか、学校(高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)の通常の課程(以下全日制の課程という。)、夜間その他特別の時間又は時期において授業を行う課程(以下定時制の課程という。)及び通信による教育を行う課程(以下通信制の課程という。)、大学の学部、大学院及び大学院の研究科並びに第六十九条の二第二項の大学の学科についても同様とする。)の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項は、監督庁の認可を受けなければならない。
さらに、分校は定時制だけだったことについて、北海道大学の「定時制高等が校の成立素描」(田丸啓 「教育学研究紀要」第85号)の「高等学校設置基準と分校」の指摘によると「高等学校発足当時、予算と資材に乏しく、多数の学校を設置することは困難だった。そのため、当分の間、国は暫定基準で行くことにする。これは新設校には適用されないが、定時制には認められた。「金を使わ」ず、「無理なく移行」するためである。直ちに、基準通りの高校を作ることはできないから、分校(主として定時制)制度によって、その不足、不備を補おうとしたものと考えられる」という。
発足当時からお金をかけてこられなかった定時制高校(分校)が、「教育の機会均等」を謳った日本国憲法に則って「分校を設け通学の便を計ること」として、多くの分校がつくられたにもかかわらず、その精神は受け継がれずに真っ先に統廃合の対象となり、多くの夜間定時制高校がその灯火を消そうとしている。これから先の日本で、「教育の機会均等」が守られるのか、はなはだ疑問である。
三点目の「給食がある」ということについてだが、「夜間定時制高校の給食をなくそうとする動き」が全国的にある。すでに「パンと牛乳」程度の「補食」しかない定時制高校も増えていると聞く。都道府県の職員だった栄養士や調理員が民間委託された自治体も多い。民間委託されると、フルタイム労働だったのが、一日5時間・時給○○○円のパートタイム労働に切り替わってしまう。長期休業中は賃金はない。女性の正規労働の枠が、女性の非正規労働の枠へと変わる。手作りのメニューは減り、冷凍食品が増える。教育委員会の中には「なぜ、定時制高校に給食を出さなければならないのか」と
開き直り、給食廃止の方向へ動こうとする向きもあるという。しかし、夜間の高校における給食に関して、きちんとした法律がある。以下にその大本となる法律の一部を掲載する。この法律の他にも「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律施行令」、「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律施行規則」もある。
夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律(昭和31・6・20・法律157号 )
(目的)
第1条 この法律は、勤労青年教育の重要性にかんがみ、働きながら高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。以下同じ。)の夜間課程において学ぶ青年の身体の健全な発達に資し、あわせて国民の食生活の改善に寄与するため、夜間学校給食の実施に関し必要な事項を定め、かつ、その普及充実を図ることを目的とする。
(定義)
第2条 この法律で「夜間学校給食」とは、夜間において授業を行う課程(以下「夜間課程」という。)を置く高等学校において、授業日の夕食時に、当該夜間課程において行う教育を受ける生徒に対し実施される給食をいう。
(設置者の任務)
第3条 夜間課程を置く高等学校の設置者は、当該高等学校において夜間学校給食が実施されるように努めなければならない。
夜間高校に通う生徒に中には、「一日一食、給食だけ」という生徒もいる。民主党政権時に高校の授業料無償化になり、1000円出すのも苦しいような家計の生徒が救われたが、安倍政権で高校の授業料無償対象に所得制限を設けようとしている。教育のセーフティネットとしての定時制高校の網が、破られないようにしたいものである。

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