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「男の人がみんな怖い」と話した性暴力被害者の彼女が自分を取り戻すために。

具ゆり2015.06.18

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フェミニストカウンセリングでは、女性が被っている差別的で暴力的被害などの相談が、残念ながら、今日もかわらず寄せられています。フェミカンに限らず、警察や行政を含むすべての相談機関で増えているのが実情です。
その一方で、最近は日本社会の安全神話や日本アゲをあおるようなマスコミのムードづくりが蔓延してきていますね。そのことにとても違和感があります。先日、デバ子さんが書かれていた「居眠りをしても強盗に遭うこともないほど“安全”な日本」なのに、女性が受けている性暴力やセクハラ、DV、ストーカー、虐待など、深刻な被害ケースが後を絶たないのは、どうしてなのでしょうか?
<思春期のセクシュアリティ>という科目を開講している福祉系大学で、今年は「デートDV」と「セクハラと性暴力」の2テーマを担当しました。「セクシュアリティを学び、考える」がねらいのリレー形式科目で、性教育や障害児教育を研究している教員や大学外の特別講師が複数担当しており、とても充実した科目構成になっています。
「性暴力」を語るときは、学生の中にいるだろう当事者も想定して慎重な配慮をしています。具体的な実態やデータ、被害者の心理、誤った強かん神話、本来の問題の所在、性暴力がもたらすトラウマ症状などの話を聞き、辛い記憶がよみがえったり、身体症状が出ることもありうるからです。もちろん回復のために何が必要かも話します。
その日、講義のあと、1人の学生がそっと近づいてきました。
<当事者かな・・・>ピンとくるときがあります。あるいは講義中に何度も目があって、気になる学生を意識することもあります。
講義終了後の雑然とした雰囲気の大教室で、学生たちが席を立って行きかう中、彼女と2人だけの空間が生まれる瞬間です。私は隅に腰掛けて、彼女を少し見上げる角度で話を聞きます。誰にも聞こえないように話ができる空間を配慮します。
だけど休憩時間は10分。私にも彼女にも、5分程度しかありません、短いけれど濃密な時間です。
<どうしたの?>ちょっと離れたところで、彼女を見守るように友人が2人待っている様子。
「・・・」ゆっくり深呼吸をしたあと
「子どもの頃、夏のおまつりの夜、知らない人に襲われて・・・相手は大きなおとなの人で、お酒を飲んでいたと思う。・・・何も(抵抗)できなかったし、親にも話せなかった。・・・それからは、男の人がいや・・・普通に友だちでいるうちは別にいいんだけど、それ以上になれない。近づいてこられると怖くなる。逃げてしまう。男の人が怖くて・・・」思いきって言いにきたんだな、友だちに背中を押してもらったのかな、そんな様子が見て取れます。
<そうか、今日の講義は聞いていてしんどかったかもしれないね? よく話してくれた。えらいよ。・・・でも、辛かったね。そんなことがあったのに、ちゃんと大学に入ったし、頑張ってきたね。そのことが犯罪なんだって、わかるね? あなたは何も悪くない。今日の話聞いて、そのこと、ちゃんとわかったよね?>
緊張して小刻みに震えていた彼女に、小さいけれど、ハッキリキッパリ言い切ると、やっと彼女も少し顔がゆるんでうなずいてくれました。
<これまで誰かに話せた?>「・・・親には言ってないし、これからも知られたくない。今は友だちには話せたけど・・・」
<よかった、それでいいよ。あなたが恥ずかしく思うことじゃないからね。今の状態はそのことの影響。誰でも、そんなふうに男性が怖くなったり、拒否したくなるのは当たり前のこと。ただ、このままじゃよくないよね?
相手は、子どものあなたを狙った卑怯で、悪いやつなの。そんなやつのために、これ以上苦しむのはもうやめよう。これからは、自分が楽になるようにしていかないとね?>
様子をみながら、確かめながら話を続けます。
彼女が性暴力被害によるトラウマ反応としてのPTSD症状に対応する必要があるからです。トラウマとは「心的外傷」と訳されていますが、一生涯消えることのない心の傷という意味です。その反応の1つとして、PTSD(心的外傷後ストレス障害)があります。性暴力事件や大事故、震災などによって、強いストレスを受けて、1ヶ月以上が経過してもなお日常生活に支障をきたしている状態をいいます。
<男の人がみんな怖い人じゃない。でもそう見えちゃう、思えちゃう、その後遺症から回復して健康にならなくちゃ。ちゃんと自分をとり戻さなきゃね?>
大学の相談室でのカウンセリングをすすめながら、サポートを受けられる環境、カウンセラーを信じていいこと、大学がこういう講義を提供している意味を伝えると、たいていの学生は安心します。少し話を崩して、ちょっと背中を押すのも忘れません。
<恋愛だって、ほんとはしたいでしょ? 大丈夫、できるから。このことにちゃ~んとカタをつけて、青春しなくちゃね!> 少し笑いあえて、緊張がほぐれた様子になった。
彼女の受けた性被害が、何歳のころ、どのような被害だったのかはわかりません。重要なのは、信頼できる人のサポートと大学でのカウンセリングにつながることが必要なケースでした。自分が受けた外傷を秘密にしないで語ることが、彼女の暴力的性被害からの回復につながるのです。秘密にしなくていいことは、「自分は悪くないんだ」という証明でもあり、自己肯定になるのです。
「性」と「暴力」について体系的なシラバスを組み立て、外部専門講師から学ぼうとする大学が、ほかにどれほどあるか知りませんが、どこでもやっているとも思えません。
私にとって、将来、教育職や心理・福祉専門職に就くだろう彼らに出会うこと、カウンセリングルームの外に出て、相談支援の現場での経験や見えること、被害者の視点を語ることができるのは、とても貴重な時間です。

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具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んで20年あまり。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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