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第17回 優先課題、それじゃない!

打越さく良2015.07.02

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輝いてほしいのはトイレ?

 前回は有村大臣肝入りで「ジャパン・トイレ・チャレンジ」、「快適トイレ」国民運動がスタートするとやらで、「まずそこ?」(脱力)で終わった。そんなネタあったなあ~と今月を迎えられると思いきや、内閣官房のwebページにはダ・ダーン!と誇らしげに「トイレ大賞」なるものの募集を掲げている。6月26日に首相官邸「すべての女性が輝く社会づくり本部」が公表した「女性活躍加速推進のための重点方針2015」にも、「暮らしの質の向上のための取組」の項目の中でトップバッターとして「暮らしの質の向上に資する空間づくり」が挿入され、「世界で最も快適なトイレ環境を実現する。このため、」、「女性の職域拡大に資するトイレ整備の促進」etc.と大真面目に書かれてある。
 はあ…。まあね、たとえば、男女共用トイレだけしかないと女性はウンザリするかもしれない(もっとも、トランスジェンダーの方には共用トイレはほっとするとか。いろいろと選択肢があるといい)。そういえば、深澤真紀さんが津村記久子さんとの共著『ダメをみがく “女子”の呪いを解く方法』(紀伊国屋出版、2013年)で確かトイレに汚物入れ(←これ、ひっかかる言葉。さらりとした他の用語に置き換えられないものか。取りあえず使うが…)を備え置かれておらず、備え置くよう働きかけねばならなかった、と書かれていたような。うーむ、確かに。しかしまあ、トイレのせいで女性の職域拡大が阻まれているって理解なのか?快適なトイレでゆったりお化粧直しができる職域が広まれば、女性はバンバン進出するのに、そうでないから、キャリアを断念している?それデータでもあるの?
 あるわけないだろうな。「なんか、面白くね?」くらいののりで、「目玉政策」に押し上げられてしまったのだろうか。軽い、あまりに軽い。男だってトランスジェンダーだってトイレは利用するだろうに。何で「快適トイレ」が、「女性活躍」政策のひとつになるのか、理解できない?
 報道によれば、「そこじゃないだろ!」という女性の批判に対し、内閣官房の担当者は、「一連の反応に対し、内閣官房の担当者は、「待機児童や労働時間の問題にかかわる政策は、王道として進めている。空間にかかわる施策はこれまでなかったので」と理解を求めた、とのこと(2015年6月26日5時16分朝日新聞デジタルニュース 杉原里美記者、仲村和代記者)。ん―?釈明になっているのだろうか。「空間にかかわる施策」といわれても、女性だけが使う空間でないのだから、どうして女性活躍政策になるのかという疑問は解消しない。
 ああ~本当にこの「思いつきました」感、脱力する。
 いや、もしかしたら、思いつきではないのか?トイレ大賞の募集が始まったころ、朝日新聞夕刊(6月8日~に、「トイレ掃除をすると心も磨くことになる、そして社会の荒みもなくすことができる」とトイレ掃除運動を展開する「日本を美しくする会」に感化された人々の連載が載った(http://www.asahi.com/sp/articles/DA3S11798092.html )。第1回にはさらりと近所の神社等で清掃とある。日本を美しくする会のwebページを参照すれば、靖國神社等でのトイレ掃除イベントがあるらしい。同会のwebページを熟読する。なぜタワシや軽石等に留まり、巷にあふれるもっと便利なグッズを使ってはいけないのか、等、よくわからない。それで果たして本当にきれいになったのか(実際に減菌を果たせた等)もよくわからない。いやそこは、実はポイントではないのか。人の嫌がるトイレを率先して磨くことは、自分を磨くこと…?科学もなにもない、道徳ないし修養、それこそがポイントなのでか。この連載にも登場した日本を美しくする会の相談役鍵山秀三郎氏は、日本教育再生機構の相談役でもある。八木秀次氏(選択的夫婦別姓反対論者でも知られる)が理事長を務める日本教育再生機構は、「美しい日本の心を今の日本に伝え、次の世代に伝える」べく結成されたという(結成呼びかけ文参照)。「新しい歴史教科書をつくる会」の内紛により同会を離れて結成された同機構のwebページを開くと「あなたのまちにも育鵬社教科書を」シンポジウムを主催している等の活動を確認できる。有村治子大臣は、同機構の機関誌に、育鵬社教科書を称え、「教科書によって、何を子々孫々に伝え遺すべきなのか、大多数をなす世論が納得して支持する国民的教科書を育てていくことが、教育正常化に務める保守の役割」と任じているとの一文を寄稿している。いや教科書の内容は多数の支持がどうとかで左右されるべきではなく、科学的実証的な研究成果、知のエッセンスを盛り込んでほしいものだが。 また、鍵山秀三郎氏は、日本会議の機関誌「月刊 日本の息吹」に数回掲載されている。そして、有村大臣は、日本会議の下部組織である日本女性の会の副会長であるとか(ウイキピディア参照)。なお、女性の活躍担当大臣だが、選択的夫婦別姓には反対。
 保守反動なひとびとから非難をあびやすい朝日新聞(そういえばこの前百田尚樹氏が自民党議員の勉強会「文化芸術懇話会」で沖縄の二紙をつぶせとの発言が問題にされたあと、これまた「ギャグ」のつもりで、本当につぶしたいのは毎日、東京のほか、朝日と挙げていた。まだ槍玉にあがる、頑張って朝日!)すら、中小企業にとって輝ける未来を導くかのように、トイレ掃除を取り上げる。なんだ、この流れ?
 タイミングが同じだっただけもしれないが、「トイレ政策だって(笑)」と小馬鹿にしているだけではいけない、大臣が日本教育再生機構ともつながりがあることを踏まえると、真面目にウオッチングしていく必要があると襟をただす。
女性活躍推進法案と労働者派遣法見直し法案
 トイレ問題は前置きに過ぎなかったがつい長々と失礼。インであがたかったのは、6月19日の政府与党が衆議院厚生労働委員会及び本会議で労働者派遣法見直し法案を採決に持ち込み、本会議では民主党・生活の党・社民党が退席する中で採決したことだ。
 この国会で提出された女性活躍推進法案をまず取り上げよう。この法案が成立したら、従業員301人以上の企業(圧倒的少数では…)は2016年4月から、自社の女性の採用比率や管理職比率、勤続年数の男女差などの実態を分析し、改善のための数値目標や取組みを行動計画にまとめなくてはいけない。達成度の定期的な公表も義務になる。お、前進では…?と思いたいところだが、計画をまとめなくても、目標に到達しなくても、罰則があるわけではない。契約社員やパートの女性が、計画に組み込まれるとは限らない。これらの非正規の社員は実に働く女性の6割に近いというのに(2014年正規の女性1019万人、非正規1332万人)。女性の出産後の就業継続率をみると、実際には正規雇用者(52.9%)と非正規雇用者(18.0%)では3倍程度の開きがあり、育休取得率をみると、正規雇用者(81.5%)と非正規雇用者(22.2%)と差は広がっている(http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2013/eye130613-2.html )。非正規の女性の活躍を実効性あるものにすることが喫緊なのに、そこは放置されているのだ。
 そして、労働者派遣法見直し法案は、さらに女性の雇用の安定を脅かす。政府は、派遣労働者の雇用安定化に向けた措置を盛り込んだと胸を張る。あ、そうなんだ、だったら良いではないか、なぜ反対する?と思われるかもしれない。そう、注意深く読まないと、問題点がわかりにくい。多々ある問題点については、こちら(真のポジティブアクション法の実現を目指すネットワークのコメント)を参照してほしい。かいつまんで紹介すると、期間制限緩和で雇用の安定は図れないこと(むしろ派遣契約、派遣労働契約の期間は短期化、不安定化している)、教育訓練や雇用の安定化に向けた義務は規制をかける国に対する義務に過ぎず、派遣労働者に対する義務ではないこと(つまり不履行があっても派遣労働者が裁判で訴えることができない)、秘書や通訳など専門26業務であっても派遣先の同一組織単位では3年を超えて就業することができなくなり、契約打ち切りが早晩問題になること、などなど…。な、何が雇用の安定化なのかと目がくらむ。
待機児童解消策で上の子が保育園退所?
 何とか仕事を確保したとして、子どもを預けて仕事に馳せ参じたい、と願っても、保育園に入れられるのか。ん?所沢市が2015年月から保育園に通う0~2歳児がいる母親が下の子を出産し育児休業に入った場合、原則として保育に通う0~2歳児を3か月後までに退園させる「育休退園」制度を始めたのは違法だとして、同市の保護者11人が6月25日、市に退園さないよう差し止めを求める行政訴訟をさいたま地裁に起こし、運用差し止めの仮処分も申立てたというニュースが飛び込んできた(東京新聞2015年6月25日夕刊、朝日新聞2015年6月25日夕刊(戸谷明裕記者))。原告らは、「育休中も保育園を利用できるとした『子ども・子育て支援法施行規則』の解釈を誤った運用で、違法だ。子どもの保育を受ける権利も侵害している」と主張している。市がこの制度を始めたのは、「待機児童解消」のためというから、ねじれている。ん?ネットには「待機児童のためにでしょ?保育園通わせられていない人からすると提訴している母親達がすごい自己中に見えているような」「育休とれないで困っているパートを切り捨てろってことかな」「そもそも育休取得者が育休をとれなかった人より保育園入園で優遇されるのは不公平なのでは」という意見もあるという。ん…?そもそも育休が終わったら第一子のみならず第二子も預けることになるわけで、トコロテン方式で待機児童が入れ替わるだけ。待機児童対策になるなんてとんでもない(普光院亜紀さんの解説参照)。それに育休をとれない、保育園に入園できない、というのは、企業や保育園を確保していない行政側の問題で、親同士(なぜか「母親」と目される)が対立することではない。
 ずれたところで対立しては不毛。批判すべきは何なのか、見極めたい。ああそれにしても、こんな状況で「女性の活躍」って言葉…あまりにきらびやかすぎて…(くらっ)。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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