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安保関連法案衆議院可決…でも民主主義を諦めない

打越さく良2015.08.06

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違憲と明言された安全保障関連法案が衆議院可決
 7月のトップニュースとして、やはり、7月16日、安全保障関連法案が衆議院で可決されたことをあげなければならない。安全保障。胡散臭い言葉だ。福島みずほさんが戦争法案といったら自民党理事が4月17日に議事録からの削除修正する要求をしたことは記憶に新しい。しかし、審議が進むにつれ、小林よしのり氏ほか多くの人にとって、これらの法案を戦争法案と呼ぶのが正しいと認識された。

 安倍首相は、7月27日、昨年12月の総選挙で「去年の総選挙での主要な論点であったことは明らかで、国民から強い支持をもらった」と答弁。え。そうでしたっけ?江川紹子さんがすかさずツッコミを入れた通り、「昨年自分で言ってたこと忘れちゃったのかにゃ」。おさらい。
<href="http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2014/1121kaiken.html">昨年11月21日の記者会見で、首相自ら「アベノミクスの成功を確かなものとするために、私は、消費税10%への引上げを18カ月延期する決断をいたしました。」云々とアベノミクスと消費税引き上げの延期を争点にしていたではないか。女性の活躍やら地方創生については呟いてはいる。しかし、安全保障のあの字もない。

 潮目が変わったのは、6月4日の衆議院憲法審査会において、各党の推薦する3人の憲法学者(長谷部恭男早稲田大学法学学術院教授・小林節慶應義塾大学名誉教授・笹田栄司早稲田大学政治経済学術院教授)が揃って安保関連法案を違憲だと明言したことだろうか。特に、自民党推薦の長谷部教授の発言のインパクトは大きかった。与党、政権は憲法学の英知を真摯に受け止めるどころか、審査会幹事の船田元自民党憲法改正推進本部長を批判する声が上がったり(ええっ、批判の矛先そっち!?)、菅官房長官が同日の記者会見で「全く違憲でないという著名な憲法学者もたくさんいる」と誰もがハッタリとわかるハッタリをかけたりした。さらに、与党議員らは、長谷部教授について「従来の政府見解を誤解している。外交の素人だから」などと謗り出す有り様。オックスフォード大学出版局発行の比較憲法大辞典の「war powers」の項目を担当した長谷部教授に、何という不遜な物言い。このようなそしりには長谷部教授も黙ってはいない。6月15日の記者会見で、そもそも、特定秘密保護法という安全保障に不可欠な歯車というべき法案の参考人として、私という安全保障の素人を呼んだ。明らかな人選ミス」、特定秘密保護法の成立の経緯に重大な欠陥があったことを示すもの」である以上、同法を廃止すべきだ、と皮肉を述べられた。

 各紙が生真面目に憲法学者にアンケートをとってみたところ、圧倒的多数が違憲と考えていることが判明(たとえば、朝日新聞のアンケートでは違憲104人、合憲2人)。その後も憲法学者の活躍は素晴らしい。204名もの憲法学者による安保関連法案廃案を求める声明も出された)。菅官房長官は6月10日、合憲の学者として3名のみを挙げたあげく、「数の問題ではない」と述べた…。え、「たくさんいる」って言っていたのに!!

 こんな衝撃いや笑撃の事態に、さすがに人びともおかしいと気づき出す。各社の世論調査では、安保関連法案に「反対」が「賛成」を上回り、政権への不支持が支持を上回るようになる。なんと、読売新聞の世論調査の質問は、「安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか」とあからさまに誘導するもの。池上彰氏が指摘するように、こんな聞き方だったら、「それはいいことだ」と賛成と答える人が大勢出そうだ。それでも、「賛成」38%、「反対」51%だったのだ。

理解してこそ反対
 ところで、読売新聞に限らず、男性より女性のほうが安保関連法案への反対の割合が高い。これをもってたとえば読売新聞は、「女性や無党派層の間で、安全保障関連法案への理解が広がらず」と記す。ん?安倍首相も7月院特別委員会での法案採決直前に、「国民の理解が進んでいない」と述べた。あれ、国会審議が始まる5月26日には「国民の理解を得て」って言ってませんでした?理解得てないと言いながら強行採決って自分が言っていたことも矛盾する。

 そしてこの言い方ってあたかも反対の人は「理解してない」からだという決めつけを感じる。特に女が理解していない、女子どもめ、という上から目線を。池上彰氏も上記のコラムで、誘導的質問にもかかわらず反対と答えた人のほうがはるかに多いことから、むしろ、「国民の「理解」は深まっているように思えますが」と指摘。「私は、国民の理解はむしろ進んでいると思います。法案は違憲の疑いが濃く、日本の安全保障に役立ちそうもない。そうした理解が進んだからこそ、反対の声が強いのだと思います。」という長谷部教授の指摘にも頷く。

傲慢症候群に手を打たねば
支持率が下がろうと、国民が「理解してない」からだとし、著名な憲法学者がこぞって反対しようとなんだろうと、自分たち政府が出した法案が間違っているとは認めない。いったいどういうことだ。反対意見に耳を貸さない安倍首相に、香山リカさんは「典型的な傲慢症候群の特徴」を見出している。そして、「問題は、リーダーが傲慢症候群に陥った場合、その人による統治は必ずと言ってよいほど破綻して終わる、ということだ。」「傲慢症候群は本人にとってというより、組織や社会を「死に至らしめる病」なのである。これは、一刻も早く手を打たなくてはならないだろう。」えええっ。そんな大げさな、と笑い飛ばせればどんなにいいか。立憲主義を反故にする反知性主義的な強引な政府の姿勢に、笑い飛ばすどころか凍り付く。もっとも、中野晃一教授の『右傾化する日本政治』(岩波新書)を読めば、日本政治の右傾化は、安倍首相の登場で急に始まったものではない。寄せては返す波のように逆方向への限定的な揺り戻しを挟みながら、過去30年ほどの時間を経て進展してきた。安倍首相だけ辞任してくれれば…と祈っているだけではむろん足りない。

 そういえば、安倍首相が「国民の理解」を求めるべくテレビに出演したが、火事の例え話は「武力行使と火事は違う」と元内閣官房副長官補の柳澤協二氏らに批判されたほか、腐った生肉のような質感の「煙」の模型にweb上は失笑とともに大ウケ、画像をたくみに編集し嘲笑する「コンテスト」まで繰り広げられた。いやテレビがない私としては、いったいどこまでが弄びでどこまでがマジめな映像なのかももはや不明…。「理解してない女たち」に「わかりやすい」メディア戦略を狙ったのもしれないが、惨憺たる有り様。

デモに繰り出す女・子ども
 学生たちによるSEALDsが毎週金曜日国会前で戦争法案に反対する抗議活動を展開している。7月31日には、学者も国会前で学生たちと共に集会や抗議行動を行った。集会での岡野八代教授の言葉は胸を打つ。8月2日には、SEALDsに触発された高校生たちが渋谷でデモを行った(主催者発表で5000人参加)。
 まだまだたくさんのデモがこの猛暑の中行われている。岡野さんがいうように、民主主義は、「わたしがわたしであるための、あなたがあなたであるための、人類が長い時間をかけて作り上げた政治システム」であり、「民主主義を破壊するものは、他の誰でもないわたしを破壊する。民主主義をかけた闘いは、わたしを賭けた闘いでもある」と気づいた大勢のひとたち(女・子どもも含まれる)が、民主主義の根幹を守るために立ち上がっている。

 立ち上がった人々への攻撃は、織り込み済みともいうべきか。それにしても、SEALDsの女性が「痴漢冤罪」をしかけたとのデマやメンバーの写真等を熱心に流す「経済評論家」のツイートなどちらっとみただけで、「どうしてこうも気に入らないものはすぐさま共産主義だ極左だと決めつけるのかな…」とその定型的な思考回路に首を傾げる。そういえば、私がコミットしている選択的夫婦別姓など民法改正運動も共産主義運動なんだ!やはりそうか!という「分かり合い」言説web上点々とあったりする…。ええっ!?何度も書いているが、憲法や女性差別撤廃条約に基づき、個人の尊厳、両性の本質的平等に適う選択的夫婦別姓を求めているのだけれども。共産主義国でない国々でもというか、日本以外はほぼ世界各国は夫婦別姓を認めている。何をいっているんだ、一体。という理屈は受け付けないのだろうなあ。お手上げ、なんて諦めてはいけないか。

 7月26日には、「安保関連法案に反対するママの会」が東京・渋谷駅前で「戦争立法反対!ママの渋谷ジャック!」と題したデモを開催した。「渋谷ジャック!」と題したデモを開催し、「だれの子どもも、殺させない」と安保法案反対の声をあげた。東京だけではなく、各地のママの会の活動が始まっている。「え、フェミニストが『女性こそ、母こそ平和を愛する!』的な本質主義的な言説にのっていいの?」というツッコミを誰にも言われないうちに予想するが、「平和はママの専売特許」と言っているわけではないし、「大学教員」「高校生」「大学生」etc.の属性と同様にひとつのくくりということで様々に連携してもよくはないだろうか、SEALDsに触発された高齢者たちのOLDsとか、いろいろあるし…、(われながら弱弱しい言い訳のような気もするが…)。

 ところで、このママの渋谷ジャックデモに、ホリエモンや高須クリニック院長がweb上で攻撃。これに対して、女性たちは速攻で反撃した。大体、東京ディズニーランドetc.に子連れで出かけているのを揶揄しないくせに。「子連れで出かける女」ではなく、「安保法制に反対する女」にケチをつけたいのは明らかだ。「安保、政治に女が口を出すな、男に任せろ。分をわきまえろ、家に戻れ」という、とてつもなーくいや~なツイートである。

 何言ってんの。口を出さなければ、憲法を無視した法案が成立してしまいかねない事態だ。家に戻ってなんぞいられない。

 老若男女、街頭へ出よう、SNSを駆使しよう、だ。

 おおっと。今回は7月29日に公表された「第四次男女共同参画基本計画案策定に当たっての基本的な考え方(素案)」に、第三次計画までおざなりでも一応は記載されていた、選択的夫婦別姓など家族に関する法制をばっさり削除していることを取り上げるつもりだった…。パブリックコメントは9月14日まで。どうも、よいしょな記事が多いことが気になる。次回はパブコメ〆切の間近だが、この素案を俎上にあげたい。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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