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待機児童問題は、「女性」の問題なのか?

深井恵2016.04.14

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 新学期が始まりました。入学式も終え、新入生の初々しい笑顔を見て、こちらも気持ちを新たにしたところです。毎年この時期、新入生から新鮮な気持ちを味わわせてもらっています。教員という仕事をしていてありがたいなぁなどと思うひとときです。この子どもたちを前に、何を語ろうかとわくわくします。

 子どもたちに語ると言えば、先月、大阪の市立茨田北中学校校長の全校集会での発言が物議を醸しました。「女性にとって最も大切なのは子どもを二人以上産むこと。仕事でキャリアを積む以上の価値がある。子育てした後に大学で学べばいい」などと言った内容でした。その後も、「男女が協力して子どもを育てるのが社会への恩返し。子どもが産めず、育てられない人はその分施設などに寄付すればいい」などと主張。こんな管理職のもとで働いていた女性教職員の気持ちを想像すると、胸が痛みます。そんな校長の務める学校に通っている子どもたちのことを思うと、いたたまれなくなります。

 この発言は61歳の校長の発言。61歳になって突然、こんな発言をするに至った訳ではないでしょうから、それまでの40年近い教職員生活を、ずっとこんな価値観をもったままで、子どもたちに接してきたのかと思うと、ぞっとします。こんな人物が定年退職後に再任用で校長までされていたとは。任命権者にもびっくりです。

 この校長の発言で「女性」を「男性」に置き換えてみるとどうなるでしょう。「男性にとって最も大切なのは子どもを二人以上身ごもらせること。仕事でキャリアを積む以上の価値がある。子育てした後に大学で学べばいい」・・・。いかにナンセンスかわかります。男女を入れ替えて考えてみて、「あれ、おかしいな」と思ったら、そこに差別が潜んでいるとみて間違いありません。3月の卒業式の当日、卒業証書を壇上で一枚ずつ校長(男性)に手渡す、介添え(?)を和服姿の女性教員がしている光景がどこかのニュースで報道されましたが、校長(女性)に紋付き袴の男性教員が手渡す光景を想像すると・・・どうでしょう。まぁ、「それもアリ」なのかもしれませんが・・・。

 そんななか、俳優の山口智子さんの発言に大きな反響が寄せられているようです。その発言が掲載されている雑誌を実際に読んだわけではないのですが、「FRaU」の3月号で山口さんが、子どもを産み育てない人生を選んだことに対して、「一片の後悔もない」とインタビューで語ったとのこと。子どものいない方や独身の方々から「勇気づけられた」との支持が多くよせられたことと思います。

 「産まなければ一人前でない」「活躍しなければダメ」といった発言は、「その人がその人であるだけでいい」「そこにいてくれるだけでいい」という価値観とは対極にあるのではないでしょうか。子どもたちに対しても同様で、「テストで高得点をとらなければダメ」とか、「スポーツや勉強で活躍しているからすばらしい」とか、何か成果を残さなければその子の価値を認められないなら、それは教育ではないと私は思います。

 成果主義は教育現場にもどんどん入り込んでいます。教職員の管理職による評価が、賃金に反映されるようになった自治体も増えています。基本的に、教育現場に評価はなじまないと私は思います。百歩譲って評価を受け入れたとしても、きちんとしたリーダーシップを発揮する、尊敬すべき管理職による公平公正な評価なら、まだ納得がいきますが、「女性にとって最も大切なのは子どもを二人以上産むこと。仕事でキャリアを積む以上の価値がある」などという価値観の管理職に、女性教職員がどのように評価されるのか。そんな価値観を持つ校長が、子どもを産んでいない女性教職員の評価を高くするとは到底思えません。

 賃金に反映されない評価なら、「まぁ、好きに評価してくれ」と開き直ることもできますが、賃金に反映されるとなると、そうも言っていられません。そんなセクハラ管理職は、管理職としての資質を質し、子どもたちに与える悪影響も考えて、校長自身の評価を下げるべきでしょう。そんな人物を管理職にした教育委員会の責任も問いたいところです。そんな管理職のもとでは、女性が「活躍」したくてもできない相談です。

 また、「女性の活躍」と言いながら、保育園に子どもを入れることのできない家庭がなくなっていません。「保育園落ちたの私だ」と国会前で行動を起こしている方々や、待機児童問題に対する要請行動なども報道され続けています。その姿に、あまりにも男性が少なすぎる気がします。日中、仕事を休んで要請行動を起こすのは大変なことだから、働いていないほうが行動するのはわからなくもありません。しかし、待機児童問題で困っているのは「女性」だけなのでしょうか。同じように「男性」も困っていると捉え直す必要があるのではないか、「男性」も一緒に困っていないならそれはそれで大きな問題ではないかなどと、最近の報道を見ながら考えているところです。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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