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「あなた、それはDVなのよ」と言われて、目が覚めるようだった…

具ゆり2016.04.21

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 今回は、あるサバイバー女性のレジリエンスストーリーをご紹介します。

 「結婚」・・幸せな生活が待っているはずだったのに、残念ながらその制度とパートナーによって、自分の人生を縛られ続けた生活を、「仕方ない」「受け入れるしかない」と考える女性が多いのは現実です。「こんなはずではなかった・・」という思い、苦痛でも、納得がいかなくても、「この生活を変えるには、よほどの勇気、そして決断がいる」と多くの悩みを抱える女性は訴えます。

 確かに、今得ているもの、もっているものはあるし、それらを失う不安や家族を守るべきだという律儀さ、自分がいなければどうなるのか、と求められる期待に応えようとする気持ちはわからなくはない。それに、精神的に辛くても、「見返り」として得ている経済的価値が大きければ大きいほど、それらを失ってやっていけるのだろうか、と考えてしまい、自信がない、その後の生活の変化が怖い、そんな不安も強くなりがちです。
 相手はたいてい、「お前のため、家族のために自分がどれほど苦労しているか」を言い立てて、自分が優先されることは当たり前だと思っていますしね。
 でもね、果たしてそれら失いたくないものの代償として、自分が払っている犠牲や失っているものがどれほどか? 「してやってる」と言うけれど、「得ている」というけれど、ほんとにそれが自分のほしいものなのか? 考え直してみてほしい。「そうかな?」「当たり前なのかな?」どこかに感じているおかしさに気づいていけるはずです。
 カウンセリングではそこをじっくり問いかけ、自分に向き合う時間です。

 長年のパートナーからのDVに絶え続けたEさん。出会った当時にはとても考えられなかった生活を切り開いていったサバイバー。人生の逆転!を勝ち取った女性の一人です。
 Eさんは40代後半。ずっと専業主婦だったけれど、現在はフルタイムの専門職、しかも正規採用です。立派でしょ!? 「自立」を目指した人生はまだまだこれから!
 それに、なんてきれいになって、スリムでおしゃれになって! こんなに自由で充実したシングルライフをあなたが送っているなんて!と感動モノです。

 ただし、そうやすやすとサバイブできたわけではありません。4年前の彼女は、今の生活なんぞとても想像しようのない、心身ともに深刻な状況でした。
 夫の暴力、支配、モラハラは、本来の彼女の主体性を根こそぎ奪い取って、完全に夫のコントロール下にありました。うつ状態は重篤で、体調は最悪。夫への嫌悪感、拒否感を抱えながら、非難や暴言にさらされ、それでも家事を徹底してこなすしかありませんでした。台所の隅に小さくうずくまる日々だと訴える彼女の姿は痛々しいものでした。唯一のよりどころは、一人娘の成長を見届けること。娘を大学に行かせたい、成人するまでは夫の元で耐えるしかないと、それが支えでもあり、彼女の夢でもありました。

 それでも、彼女には夫の言動や自分の生活が「どこかおかしい、何か変だよ」という感覚が残っていたのが救いです。地域の女性相談にアクセスしたEさんは「あなた、それはDVなのよ」と言われて「目が覚めるようだった」と言います。
 実は当事者にとっては、自分が暴力や虐待の「被害者」だという認識は、誰かに認定されないとなかなか自覚しにくいのです。「もしかして、そうかも・・」と思っていても、誰かにハッキリ断言されたり、指摘されてはじめて「やっぱり・・」と腑に落ちる、目がさめる、というのはよくあることです。

 Eさんは、本来明るく、人から好かれる人間味やリーダーシップをとる力のある人です。夫はそれが気に入らなかったのか、彼女のことを人前でバカにしたり否定したり愚弄したりと、長い時間をかけて彼女の自尊感をくじき、自信をそこなわせていきました。
 いったい、何のため? 彼女のそうした魅力や個性を妬んでいたとか? 自分より妻のほうが有能だったりすると、自信のない人って、すねるんですよね~。で、相手をやりこめて自分が優位に立ちたがる。なんて、情けない。でもとってもよくあるパターンです。それに責任転嫁がすごくうまい。これ、モラハラ夫の特徴といえる。
 夫の暴力と粘着質な気分にふりまわされて、屈服させられて、行き詰まっていくのは、彼女に限ったことではありませんが・・。

 Eさんの場合、カウンセリングの初期は、夫の事業が行き詰まって家計もカツカツの最悪状態でした。受験を控えた子どもへの影響も含めると、なによりもまずは彼女の健康をこれ以上悪化させないことが最優先でした。医療支援、自治体支援も同時進行です。
 その試行錯誤の面接も2年が過ぎたころ、娘の自立時期とEさんの覚悟の時期が重なり始めます。そして、仕事を始めます。とても働ける状態ではなかったことを思うと、やはり社会での居場所、収入を得ることがどれほど人としての自尊感を取り戻すことにつながるかと思えます。その1年後には別居と同時に離婚の決断。じわじわと自立に向けて、力を取り戻していったEさんに、夫の「神通力」はどんどん色あせていったわけです。
今だに、何かと口実を作って嫌がらせをしかけてくる「元夫」。「何をされるかわからない」という恐怖心、飼いならされた「私なんか・・」が復活したり、へこんで相手のおもうツボにはまってしまう傾向はまだ残っています。だけど、結局その程度しかできない元夫だよ、「その手にのらない」「相手にしない」で境界をもつしかないのです。

 「いったいこの人に何ができるというのだろう」・・・正直、私が途方にくれてしまうほど困難な事態もありました。お金もない、エネルギーもない、症状が悪化してる、右往左往するEさんと手探りばかりの時もあったけれど、Eさんは自分のレジリエンスを開花させていきました。あきらめないで、自分のために生きる道をつかんでいったのです。
 娘は大学生になり、成人。親のDVの渦中にいて、子どもなりに傷ついていた彼女とも、今は一緒にお酒を飲んで女どうしの話しができるようになったといいます。
 諦めないって大事! よくぞここまで来たね! まだまだこれから、楽しみだね!


お断り:Eさんの情報はご本人が特定されないよう、配慮、修正してお伝えしています。
なお、経済的困難を抱えたDV被害女性のための民間の支援基金の利用、医療機関との連携もありました。

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具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んで20年あまり。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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