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「キレるのが女だと、妻だと、これからニッポンどうなるの!」となるわけ?

具ゆり2017.06.15

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『ニッポンの家族が非常事態!? 妻が夫にキレる本当のワケ』(NHKスペシャル 2017年6月11日放送)を見ました。そういえば、と思って検索すると、ちょうど1年前にも『キレる妻が急増! 日本の夫婦に何が?』(NHKクロ現)がありました。そうだった、前に見た時もガッカリだった、と思いだしました。
どちらも女性が「キレる」ことに焦点をあてています。妻がキレるなんて、夫婦関係、家族の非常事態、「これって、どうなってるの!?」と言いたい思惑がみえてきます。

司法統計では、離婚理由は男女ともに「性格があわない」がトップです。ところが最近は、夫側からの離婚申し立て理由の2番目に「精神的虐待」が入ってきた。この特集では2年続けてそこが大きく取り上げられています。
もちろん「一体どうして、何でそうなるの?」とそこを探っています。でも、女性の社会進出を理由にして「女が強くなった」というイメージを目立たせている。仕事しながら家事育児を丸抱えして悪戦苦闘の「女性のしんどさ」をおっかけて「大変なんだ~」とは言うものの、迫り方はメチャ浅いし、その一方の夫の家事育児参加はまるで見えなかった。放映時間内の編集でできることは限られているのだろうけど「男性の被害感はクローズアップしている」。今回もモヤモヤ、脱力感が残ります。

キレるのが女だと、妻だと・・・これからニッポンどうなるの! となるわけ?

2年続けての特集番組で、女性側が夫に対して「強い不公平感を感じている」点に注目しているのは共通しています。脳科学の観点から男女の違いに迫っている点も。
ただ、問題点を探ろうとしているわりには、女性が抱える根本的な問題をなおざりにしてません?

番組で紹介された結婚5年のカップル。その「妻は」2歳と4歳の子どもを育てながら、片道1時間半かけて職場に通っている。それ聞いただけで、大変な日常が想像されます。朝起きてから出かける準備、自身や子どもの身支度、保育園の送り迎え、買い物、帰宅後の家事育児を考えると、目まぐるしいどころではない一日です。壮絶な戦闘態勢モードでやりくりしているのは目に見えます。
第1子の妊娠、出産で退職する女性が約6割いるのが現実だし、仕事をやめたことを後悔している女性は4割といいます。
彼女はシングルマザーではありません。夫がどの程度家事育児をしているのか、収録にはなかったので実際のところはわかりません。2人とも仕事をしているのだから、育休から職場に復帰する時点で今後の家事育児をどうするか、その分担などは話し合ったことでしょう。子どもが1人と2人では、大きく事情が変わってきますから、遠方の職場に復帰するのは相当な覚悟の上だと思います。往復3時間の通勤時間の職場に通うのは体力や気力の問題だけでは片づきませんからね。「妻」は転職も考えたようで、それについて夫婦で話し合ったようでした。

さて復職して仕事を続けている彼女。わずかな時短を利用して職場を後にすっ飛んで保育園に迎えに行っても、子どもたちからはいつも「ママ、遅~い!」って叱られてしまう。その場面でカメラが回ります。
「なんか、これでいいのかな」「子どもにも申し訳なくって」「私何やってるんだろ」・・・揺れる気もちが吐露されます。

その後、場面は食後の食卓。後片付けをしながら、妻はつい「転職しようかな?」と話しかけますが、夫はすかさず「いいんじゃない?」(ノー天気に※筆者主観です)とわかったような返事と態度・・・(ここでムッ!)妻はブチッ! (何それ! でしょ?) 彼女の気もちに夫が全く思い至っていないのがわかります。
カメラを向けられて、夫は「だって、転職の話はこれまで何度もしていて、(結論は)終わってるのに、なんでまた蒸し返すの?」と全然!理解できないという様子。この辺りは脳科学で男女の脳の活動部分が異なることで整理説明されてしまうんですけど、(はぁ~~、こうくるんだ・・※筆者主観)それって、仕方ないことなの?

妻が話したいのは「転職」のことなのでしょうか?
夫は「そのことはもう話し合って終わったこと」と思っていますが、妻はその話を蒸し返しているのでしょうか?
「だったら転職すれば?」「じゃあ仕事辞めれば?」「そんなにムリして仕事続けなくてもいいんじゃない?」「好きにしていいよ」・・・
自分は理解があると思っている夫は、こんなことを言うかもしれません。実際にそういわれている女性はいます。問題はそこ? そうじゃない・・・そんなことを言ってほしいんじゃない・・・夫のわからなさに傷ついてると思いません? キレて見えるのは外側だけです。脳の問題で片づけてほしくない。
これはほんの一例でしかありません。一事が万事、こんな生活が続くとしたら・・・

仕事や家事育児に限らず、女性が引き受けざるを得ないことがヤマほどある夫婦生活や家族関係の現実。仕方ないとは言いたくないけど、誰かがやらないと生活はまわりません。やりきれなさ、割り切れなさ、失望感、疲弊感をかかえて、積もり積もった不満やうっぷん、情けなさ、夫への期待をあきらめていくステップを一段一段上がっていくとしたら・・・今話題の「死後離婚」も、残念な夫婦関係の結末としてはさもありなん、と言えるでしょう。

「どうすれば夫婦の絆を強められるのか、最新科学で斬り込む」番組でしたが、「本当のワケ」は「キレる妻」の心理や背景にある問題には十分踏み込まず、妻にお手上げの夫を、男性の鈍感さをかばうようにホルモンバランスや脳のしくみ、機能の違いに集約していました。そこでまとめちゃう?って、ツッコミ入れたくなるし、個々、個別の夫婦のコミュニケーションで片づけてほしくないと言いたくなる。

社会に蔓延するジェンダー、労働環境、雇用問題、経済問題、ワンオペ育児、子育て政策、福祉政策などありとあらゆる政治的課題にぜ~んぶつながっています。その一方にある男性の暴力、男がキレる問題については一切触れないことも気になった番組でした。

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具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んで20年あまり。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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