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妊娠・出産を理由に生徒を学びの場から切り離さない

深井恵2018.05.10

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#Me too の世界的なうねりもあってか、セクシュアルハラスメントが原因で、官僚が減給になったり(もっと厳罰がほしかったが)、芸能人が退職したりしている。日本社会のセクシュアルハラスメント全てにきっちり対応して、処分していけば、減給による「人件費の節減」や「女性の活躍」が進むのではないかと思ってしまう。もっとも、セクシュアルハラスメント自体がなくなることが一番なのだが。

先日、あるアニメーションを見ていたら、「きれいなカラー刷り」が売りの小学生むけ国語辞典のCMが流れてきた。小学校高学年と思われる女子児童二人が、「しりとり」をしながら、辞典を楽しそうに次々とめくっていく。調べた言葉には色のきれいな写真がついていた。どんな言葉を調べていたかというと…。

「ほうおう(鳳凰)」→「うつぼかずら」→「らっこ」→「こけ(苔)」と続く。

なぜ鳳凰から始まるのか? 想像上の鳥の色は決まっているのか? 「う」で始まる言葉なら、「うつぼかずら」より「うさぎ」や「うま」を小学生は思い浮かべるのでは? 「らっこ」の次は「コアラ」でしょ? 「苔」など調べたいと思うのか?

などなど、突っ込みどころ満載の「しりとり辞典調べ」だが、「こけ」の次の言葉に驚いた。「こけ(苔)」→「けっこん(結婚)!」と女の子二人は叫びながら外へ駆け出し、「ママ~、結婚って何色?」という台詞が続き、ママは何と答えていいのやら…で、CMは終わる。小学生にまで、露骨に結婚を奨励してきたとは、驚くばかりである。

露骨と言えば、最近は複数のCMで「人生100年」の連呼がかまびすしい。人生100年。「だから、それに備えた保険に入りましょう」「だから、投資して資産を増やしましょう」「だから、健康でいるためにサプリを飲みましょう」「だから、副業を始めましょう」等々。

人生100年を「自己責任」で解決させようとしているかのごとく受け取られる。併せて、年金支給開始年齢68歳説も出始めた。その布石としての「人生100年」連呼なのかも。あっちでもこっちでも、結婚させたがり、100年の人生に備えさせたがる。

その一方で、大事な情報はあまり人に知られることなく世の中は進んでいく。

今年の3月29日付で、文部科学省から「公立の高等学校における妊娠を理由とした退学に係る実態把握の結果を踏まえた妊娠した生徒への対応等について」の通知が出された。

調査自体は昨年の9月頃に全国の高等学校を対象に行われたようだ。実態把握をした文部科学省の資料によると、2015年度と2016年度の2年間に、生徒の妊娠の事実を高等学校が把握した件数は2098件。そのうち、妊娠して理由に懲戒として退学処分を行った事案は認められなかったものの、生徒又は保護者が引き続きの通学を希望していたにもかかわらず、学校側が退学を勧めた事案が32件認められたとのこと。このことは、3月30日の新聞に、一部取り上げられていた。

実態把握を受けて出された通知は、妊娠した生徒を「学びの場」から切り離さないよう、学校側に注意を促している。これまでの教員生活の中で、「妊娠を理由に学校を去っていった生徒」を複数目の当たりにしてきているので、今後、全国各地で「妊娠を理由に学びの場から女子生徒を切り離さない」ためにも、少々長くなるが、通知の詳細について触れたい。

この通知文全文を手に入れるのに、文部科学省のHPをいくら探しても見つからず、インターネットでもヒットしなかった。また、大事な通知なのに、「3月29日付」という年度替わりに出されたため、学校内でもあまり多くの教員には供覧されず、一体どんな通知が出されたのか、熟読した教員もほとんどいないと思われるからだ。

校長、教頭、当該の分掌主任は通知文書を見ていたとして、果たしてその中に、女性教職員はどのくらいいただろう。管理職の女性割合は低く、該当分掌主任を担っている女性教職員もほとんどいないのが、高校の現状だ。以下、主な通知内容を示す。

1 妊娠した生徒の学業の継続に向けた考え方
(1)生徒が妊娠した場合には、関係者間で十分に話し合い、母体の保護を最優先としつつ、教育上必要な配慮を行うべきものであること。その際、退学、停学及び訓告の処分は校長の判断によって行うものであるが、生徒に学業継続の意思がある場合は、教育的な指導を行いつつ、安易に退学処分や事実上の退学勧告等の対処はおこなわないという対応も十分考えられること。(中略)

(2)妊娠した生徒が退学を申し出た場合には、当該生徒や保護者の意思を十分確認することが大切であるとともに、退学以外に休学、全日制から定時制・通信制への転籍及び転学等学業を継続するための様々な方策があり得ることについて必要な情報提供を行うこと。

2 妊娠した生徒に対する具体的な支援の在り方
(1)妊娠した生徒が引き続き学業を継続する場合は、当該生徒及び保護者と話し合いを行い、当該生徒の状況やニーズも踏まえながら学校として養護教諭やスクールカウンセラー等も含めた十分な支援を行う必要があること。

また、体育実技等、身体活動を伴う教育活動においては、当該生徒の安全確保の観点から工夫を図った教育活動を行ったり、課題レポート等の提出や見学で代替するなど母体に影響を与えないような対応を行う必要があること。

(2)妊娠を理由として退学をせざるを得ないような場合であっても、再び高等学校で学ぶことを希望する者に対しては、高等学校就学支援金等による支援の対象となり得ることや、高等学校卒業程度認定試験があること、就労を希望する者や将来の求人活動が見込まれる者等に対しては、ハローワーク及び地域若者サポートステーション等の就労支援機関があることなどについて、当該生徒の進路に応じた必要な情報提供を行うこと。(中略)

3 日常的な指導の実施
妊娠による学業の遅れや進路の変更が発生する場合があり得ることにも留意が必要であることを踏まえ、学習指導要領に基づき、生徒が性に関して正しく理解し適切な行動をとることができるよう性に関する指導を保健体育科、特別活動で行うなど教育活動全体を通じて必要な指導を行うこと。

以上である。

この通知文を読むと、教員として当たり前にすべき教育支援の内容が書かれているだけのように思われるかもしれないが、これまで学校現場において、十分に行われてきたとは言いがたい。「周りの生徒に与える影響が…」とか「授業を受けている間に、赤ん坊はどうするのか」等と、学業継続に後ろ向きな発言を必ず耳にしてきた。

今後は、その手の発言に対して、文部科学省の「お墨付き」通知を盾に加えて、女子生徒を学びの場から切り離さないとりくみをパワーアップさせたい。その前に、望まない妊娠をさせない性の教育も不可欠だ。

「『セクハラ罪』という罪はない」と口にして憚らない大臣が居座り続けるこの国の未来の色は、残念ながら、明るい色とは言えまい。「結婚って何色?」と問われて、「ブラックよ」と答えるシュールなCMを想像してしまう。

生徒には、セクハラは人権侵害だという認識を持たせ、セクハラをしない・させない・許さない大人に育て、「人生100年はバラ色」と言える日をめざしたい。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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