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今日は皆様に盗み聞きを伝授したいと思います

野沿田よしこ2017.02.08

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私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではなく、 “おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。私の趣味は人の恋愛話、セックスの話を聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、のぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
“人の話を聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ばれる人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力が なかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。 
と、いうことで、25回目の「よしこおばさんは見た!」よろしくお願いいたします。
今日は皆様に盗み聞きを伝授したいと思います。私のように、盗み聞きを目的に国道沿いのフレッシュネスバーガーに行くのはちょっと・・・という方。そんな方でも大丈夫。少し耳を放牧してあげるといろんな声が聴こえてきて、自然にのぞき聞き盗み聞きができるものです。特に馴染みのある慣れた空間の中に驚く言葉、信じられない会話はあるものです。
例えば自宅。夜、寝る前にぼーっと天井を眺めます。自分の心と対話するのも止めて、ただただぼーっとしましょう。そうすると耳の穴はパッと開き、いろんな音を取り込んでいきます。静かな場所で、しかも近隣の生活音が聞こえてこないような方には当てはまらないケースですが、そうでない方はお試しあれ。日頃聴こえてこないような会話が聴こえてきます。
例えば、今この原稿を書いているのは月曜日の夜0時。東京某所のマンションの4Fに住んでいる私にはこんな会話が聞こえてきました。
「てめぇふざけんなよ。いつも威張りやがって。そんなことしったことか!どこにいようと関係ねーだろー。ばーか。おまえの母親も最悪だな。そんな甘やかされてるからおまえは何にもできねーんだよ。くたばれたこっ!・・・・・」
4Fで交通量もある通り沿いにあるこのマンションは、耳を開放しないと車の騒音しか聴こえてきません。しかしそこには、その騒音に安心して無防備に会話をする人で溢れているのです。今回の会話は20代と思われる声の女性でした。ベランダから下を覗いてみると、自転車を止めて話していました。そして自転車の荷台には子供が乗っていました。夜中の0時。子供を連れて自転車で家を出たのでしょうか。
口笛。会話ではありませんが、夜中の歩道には口笛が溢れています。上手い人から下手な人まで様々ですが、この4Fの部屋まで聞こえてくるような口笛吹きの方は大抵お上手です。よく音が通ります。私はたまにそんな口笛をのぞき聞いています。
年末に聞いた、歌い上げるように吹くプリンセスプリンセスの「M」。これはちょっと酔っ払ってそうなサラリーマンの方が吹いていました。昔の恋を思い出しているのか、今日振られたのかわかりませんが、私が聞き取れた曲の中盤では、間奏も後奏も省かずしっかり演奏されており、思わずベランダで共演してしまいそうになるほどでした。アナ雪。これは最近の定番口笛ソングのようです。サビの部分をよく聞きます。変わったところでは、「水戸黄門」の主題歌。どんな方が吹いているかすごく気になったので1Fに降り、探ってみたら意外にも40代後半の女性でした。しかも素面。 ♪(イントロ部分)ズン ズズズズン ズズズズン ズッズッズッズッズッズッズッズッズッズン(人生〜) やりきれないことでもあったのか、それとも前進あるのみというやる気の表れか。歩みも早く、すべてを聞き終わる頃には、信号3つ分の道を歩いていました。
盗み聞きではありませんが、街にはとんでもない言葉が落ちているものです。先日、大きな交差点の近くにある喫茶店で紅茶とクッキーを楽しんでいました。店内には静かなBGMが流れているのですが、立地のせいで大量に外の音が流れ込んできてまるで野外にいるようでした。トラックが通る音、クラクション、・・・その中で一際うるさかったのが、交番のおまわりさんの声と違反を取り締まる白バイのサイレンでした。マイク越しに叫ぶおまわりさん。右折禁止の交差点の角にある交番からは「そこは右に曲がれません。直進してください。」という主旨の言葉を発しているのですが、この言い方が・・・・ 「そこの車!右折できませんよ!!ただちに直進してください!そこの車!!止まりなさい。止まりなさい!!」 こう文書に書くと、事故や違反を未然に防ぐために必要なアナウンスのように思えますが、語尾が強いのです。注意を促すとかそういう雰囲気でなく、とにかく怒鳴る怒鳴る怒鳴る。そんな声なのです。それはラーメン屋で威張った店主が従業員に怒鳴っているようなそんな感じとでもいいましょうか、注意というより苛立ちや怒りといった感情がむき出しの声でした。その声を聞いて、街全体がぎょっとしたような、緊張が走る瞬間をその日何度も味わいました。横に座っていたおじさんの背筋も数センチ伸びていました。
実は10年ほど前に、私はこの交番の近くに住んでいました。おまわりさんの声をマイク越しに聞くのが日常でしたが、その頃はここまでうるさいとは感じませんでした。もっと冷静な指示だったように記憶しております。 「運転手さん、そこは右折できません。止まってください。直進してください。右折禁止の交差点です。」 冷静に、的確に、未然に事故を防ぐために、感情をむき出しにしない指示。わかりやすく伝えようとしている言い方。これこそ職務を全うするおまわりさんの基本の姿だと思ったものです。街に寄り添うはずのおまわりさんが、“見てるぞおら!”と、まくし立て、張り上げる今のこの交番のおまわりさんと昔のおまわりさんでは、何が変わったのでしょうか?それを知りたくて、私は10日間この喫茶店に通い、その様子を聞いておりました。昔のような言い方で注意を促していたおまわりさんはお一人だけでした。おまわりさんの声に気がつかず右折しようとウィンカーを出す車に、さらに語気を強め阻止しようとするおまわりさんがほぼ。そんな声に逆にびっくりして急ハンドルを切る車も見かけました。そして冷静な指示を出すおまわりさんは、呼びかけに気がつかない運転手さんに、再び同じような語気でこう注意していました「そこの品川ナンバーの白いトヨタのプリウスの運転手さん、右折できません。直進してください」と、車の車種を言うことで、すぐに運転手に気がつかせるというテクニックをみせていました。感情をむき出しにして人を動かすのではなく、“街の中に自分達はいる”と自覚して仕事をしているようなそんな仕事ぶりに、少し安堵したわたくしでございます。
先日バスに乗りました。お年寄りが全体の8割を締める中で、運転手さんがこんなアナウンスを始めました。 「最近、降車中の事故が増えております。危険ですのでお降りになる時は、バスが完全に停止してからゆっくりお立ちください。ご自身だけでなく、転倒されたりするとダイヤが乱れ、他のお客様のご迷惑にもなります。くれぐれも気をつけてください。」 耳を疑うとはまさにこのこと。お年寄りを気遣うのではなく、ダイヤの乱れを気にするとは。マニュアルを読むようなアナウンスに、お年寄りが黙って聞いている風景が印象に残りました。その瞬間、私は都バスが姨捨山のように見えました。
あなたの街にはどんな会話、音が流れていらっしゃるでしょう。盗み聞き、のぞき聞くとあなたの街がよくわかるかもしれません。お試しあれ。
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野沿田よしこ(のそえだ・よしこ)

年齢敢えて不詳。私の名前はよしこ。でも“よしこおばさん”となってこそ“私”であると人は言います。なぜ“おばさん”なのか?誰かの“おばさん”というわけではなく、“おばさん”=加齢具合を表現しているわけでもありません。私の行動が“おばさん”以外では成しえないものであるからです。
私の趣味は人の恋愛話し、セックスの話しを聞くことです。と、いってもガールズTALK的に盛り上がり話し、その場で共に聞くようなスタイルでは楽しめないのです。あくまでのぞき聞き、のぞき見すること、百歩譲って1対1で根掘り葉掘り的なTALKが好きなのです。
“人の話しを聞く”“心の中や状況を探る”という力はどうやら“おじさん”“お兄さん”“おじいさん”には装備されていないようです。“お姉さん”と呼ばれる人達には盗み聞きする根性がないようです。そして“おばあさん”には興味と能力はあっても、盗み聞きできるほどの聴力がなかったり、長時間粘れる脚力がなかったり。でも、体力的にまだその余地がある。それが“おばさん”なのです。 

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