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15年くらい前から少しずつモノ言えぬ空気が漂い始めていた。
しかし、東京から距離がある所に位置するローカル局は自由を謳歌していた。

東京で活躍するタレントや文化人が海を渡って来るたび、毒舌まさに舌好調で。
テレビ、しかも編集が効かない生放送なのに、ポロリを装いローカルの大らかな空気を堪能していた模様。
映画評論家家と服飾評論家の有名ふたごタレントは、
「ホントに好きなこと言えていいわっ!」と常に言いながら、好きな男とのデートに余念が無かった(笑)

わたしが長い間作っていた番組は、
そんなローカル局の中でもかなり自由度高く。
政権批判は当然、右翼の街宣車にも囲まれたこともあった。
女性の自立、自由、セックスのテーマは普通。夫を捨てて恋をしろ!を声高に叫んでいたりもした。

不倫は文化だ!という台詞がワイドショーを席巻する前、
バブル時代にブイブイ言わせていた世代が、
不景気の空気の中にありながらも水面下でブイブイ言わせ、
恋愛が人生の価値の上位にまだ食い込んでいた頃の話。
わたしは番組で、不倫特集を組んだ。
事前に「いまあなたがしている不倫はどんな恋?」と募集をしたところ、
まあメールやファックスが来るわ来るわ。

なぜテレビ局に?と思う人もいるだろうが、
こういう話は意外と知り合い出来ないものらしい。
話すと、余計な情報も出してしまい、必ずバレてしまう理だとか。
なので、全く関係の無いテレビ局に匿名で話をしてくるのだ。

6人の男と付き合う女性からメールが来た。
彼女の恋を再現ドラマにすべく本人に会った。

待ち合わせのカフェにやって来たのは、
6人もの男を手玉に取る女性のイメージ…例えば女王様的な(笑)…と真逆の姿をしていた。

小柄でぽっちゃり
化粧っ気無しのショートカット
普通の、ものすごく普通、
柔らかい印象の三十路半ばの女性だった。

付き合っている男性は、年齢が下から順に、

浪人生、
営業マン、
パート先の主任、
同じくらいのサラリーマン、
60代のオジサマ、

下は20歳から上は65歳まで。
出会い系サイトで相手を見つけることが多いとか。
さらに彼女には夫もいる。計6名。

男たちに会う予定は花柄のスケジュール帳で管理されていた。

月曜昼:明子とランチ(営業マンとホテルの意味)
火曜午後:パート後魚屋→主任とホテル
水曜午前:デパートでショッピング→オジサマとデート
木曜夜:真由美とカラオケ→浪人生宅へ

というように、
名前を書き換えながら誰に見られても大丈夫なように記録されていた。可愛らしい文字で。
スケジューリングも各男性と月1〜2程度の密会。
これなら無理も無い。

素晴らしい管理能力!!

それぞれの男がどんな男か、
どんな付き合い方をしているかを懇切丁寧に話してくれた。

夫は居ると伝えているが、
これだけ複数股をかけていることは伝えていない。
みんなのことを比べられないくらい好きだと言う。

ならば夫と別れて自由に恋愛したら?と問うと、
「夫は保険。老後を考えても離婚は損。夫には捨てられたく無いから空気のように迷惑をかけない妻を演じている。」と。

夫とは何年もセックスレス。
生きている実感ある時間が、
出会った男たちとの逢瀬。

「デートやセックスしている時、血が通っているように思うんです。」

家庭で癒されない乾き
自分の存在を認められたい

「夫だって多分浮気しているから、私だって。おあいこです。」

「女としての現役感を確かめて噛み締めているんです。」

承認欲求をセックスで叶えるのか、
と、インタビューしながら頭でまとめていたわたし。

そんなキレイな言葉で整理したわたしから何かがにじみ出たのか、
そうじゃない!と言わんばかりの勢いで彼女が被せてきた。

「セックスして普段家庭では見せないドロドロの自分をさらけ出したいんです。
ずるい自分のドロドロの部分を、
セックスという行為でドロドロにしたいんです。
そして、彼達にドロドロになっても汚くないんだよ。いいんだよ。それでいいんだよ。ってゆるされたいんです!」

それまで温厚だった彼女の感情が迸った。
圧倒された。

何もわかっていないわたしがいた。

彼女の思いを放送で少しでも伝えようと努力したが、
やはりMCたちは、彼女のエピソードを、
満たされない承認欲求のひとつのケースとして片付けた。
悔しかった。

確かにまだ若く、
狩のようなセックスしかしていなかったわたしは、
彼女を理解し切れないでいた。

今、彼女の年齢を遥かに超えてしまったが、
なんとなく彼女の言ったことが腑に落ちてきた。

許されたいんだ
そうして、
赦されたいんだ

四十路半ばも越すと有事の際に、
ハイ!喜んで!と服は脱ぎにくくなる。
怖さも比例。
崩れた身体で乱れたらビジュアル悪すぎる!
そんな自分イヤ!なんてのも邪魔している。

見栄、体面、それを取り払った先に見えているのが、件の彼女の台詞。

セックスという単語を会社や仕事に置き換えると、
もう自分で自分を許したからモヤモヤは無い。
少しずつ色んな荷物を降ろし、
素直になって来ている今。

50代になるとセックス良くなるよ、
先輩たちは口々にそう言う。

自分を許して、許されて赦されて。

デリケートゾーンの乾燥の自覚症状に、
更年期真っ只中を認めアワアワしていた今日この頃に、
ふと思い出した強者彼女のエピソード。

50代に向けて無駄な鎧を脱いで、
セックスを楽しんでいきたいとしみじみ思う。

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昌浩子

昌浩子(まさ・ひろこ)

バブルのしっぽの時代に青春を謳歌。パーティコンパニオン/家庭教師/スナックのホステスのアルバイトのおかげで財布の中には常に30万円が入っていた学生時代を経て、テレビディレクターとして仕事に人生を捧げたものの、福島原発の事故により人生観がガラリと変わり、エシカルやオーガニックな世界に身をおくべく日々奔走中。東方神起とシャンパンと飛行機をこよなく愛する札幌在住の三碧木星天秤座。

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