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誰かの尊厳を毀損する「表現の自由」はないと思う

2016.12.22

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 玖保樹です。いやあ1年ってあっという間ですね。
 皆さんにとってはどんな年でしたか? 私的には2016年の新語・流行語大賞は、『AV強要問題』なんじゃないかと思ってます。
 前回記事に登場してくれたくるみんアロマさんをはじめ、元&現役AV出演者が声をあげ、被害が可視化されたのはかつてなかったことではないでしょうか。でもここに来て急に強要被害が増えたのではないのです。というのも吉田豪さんが取り上げてましたが、たとえば麻美ゆまさんは2014年に、穂花さんは2010年にそれぞれ自著の中で、強要被害に遭っていたことを告白しているそうです。以前から起きていたのに、被害者の叫びを聞き取れなかったorあえてスルーしていた、のが実情なようで……。

 で、先日玖保樹はPAPS(ポルノ被害と性暴力を考える会)世話人でソーシャルワーカーの、宮本節子さんにお会いしました。ホームページによるとPAPSは「ポルノグラフィの制作・流通・消費などを通じて、あるいはその影響を受けて生じているさまざまな人権侵害や性暴力の問題について議論・調査・検討しこの問題を社会に広く訴えていくことや、ポルノ被害を受けた方の被害者支援を行うことを目的とする」ことを掲げているボランティア団体で、AV強要被害者の支援にもあたっています。宮本さんはこれまでの実態をまとめた『AV出演を強要された彼女たち』(ちくま新書)という本を出したばかりです。

 PAPSには2012年から2016年12月までにAV出演に関する266件もの相談があったそうで、どのように被害者を支援してきたかについては、同書に詳しいのでぜひ読んでみてください。
 しかしこの本にはDMM.comはまだしもSODだのCAだのマークスジャパンだの、それこそAVに知識がなければ「?」な固有名詞が登場します。玖保樹もこの問題について考え始めてからずいぶん知識がつきましたが、私の母親世代の宮本さんの文章から出てくるなんて。「真摯に問題に向き合ってこられたんだな……」と、舌を巻くばかりです。

 宮本さんも当然以前からAVについて詳しかったわけではなく、婦人保護施設の関係団体から、売春防止法の改正を考えるための外部アドバイザーを依頼されたことがきっかけだったそうです。なんでも1956年に制定された売春防止法は第一条に

 「この法律は、売春が人としての尊厳を害し、性道徳に反し、社会の善良の風俗をみだすものであることにかんがみ、売春を助長する行為等を処罰するとともに、性行又は環境に照して売春を行うおそれのある女子に対する補導処分及び保護更生の措置を講ずることによつて、売春の防止を図ることを目的とする」

 とあるように、売春のおそれがある女子を補導及び保護更生の措置が目的であって、買春する男性を取り締まるためのものではありません。要するに性を売る不法行為をおこなう女どもを取り締まってやるぜ、というものなのです。

 「何ともいえない前近代的な法律で、現代では通用しない文言が書いてあるのに、いまだに改正される様子がないんです。だから「こんな法律のもとで仕事をしていて屈辱に思わないのか」と、社会福祉の現場で働く人たちとともに法律の改正案を模索し続けていた時に、あるAV監督が書いた本を知ってしまったんです」(宮本さん)

 それは凌辱もののAV『女犯』を撮ったバクシーシ山下監督の『ひとはみな、ハダカになる』という児童向けの本で、この本が老舗出版社から、子供向けに出されたことを問題視したことから、現在のPAPSにつながる運動が起こっていったと語ります(この問題に関してはPAPSのホームページに掲載されています。ちなみに『女犯』は内容に抗議が寄せられたものの、監督曰く「演出」だそうで)。

 宮本さんに、いわゆる「凌辱ものAV」についてどう思うかと問うたところ、こうかえってきました。
 「表現の自由によって守られている自由は何か、ということを確認しなくてはいけないと思います。本の“おわりに”の部分に

百合みだら 五つひらいて みなみだら

 という時実新子の川柳を引用してるように、決して性や性的なものを否定しているわけではありません。ただこのように言語表現を視覚表現に置き換えて表現したエロスと比較すると、女性の器官の一部をただ見せて興奮を煽ることに対しては、性の貧しさを感じます」(宮本さん)

 表現の自由は守られるべきものだ、という考え方には玖保樹も異論はありません。しかし表現の自由の名のもとに誰かの尊厳が毀損されるなら、それはまた別の話になると思います。2017年はそのあたりについても、考えていく年になるような気がします。玖保樹は「伝えること」ぐらいしかできませんが、読んでくださる皆さんと一緒に考えていけたらと思っておりますので、どうぞ2017年もよろしくお願いします。よいお年を!

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