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フランスの女子と大学入試

中島さおり2014.06.27

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 フランスの6月は大学入学資格試験(バカロレア)の季節だ。高校三年生にあたる最終学年の生徒およびフリーの受験者が、高等教育へのパスポートを手にするために挑む。これに合格して手に入るのは「高卒」の資格と同等だから、日本の大学入試とは少しニュアンスが異なるが、多くの生徒が一斉に受ける点では、センター試験に似ているかもしれない。
 日本の試験より大変なのは、受験科目が多く、理系であろうが経済系であろうが哲学や体育の試験も必須科目、語学も第二外国語までは受験しなければならなかったりすることだろう。音楽や美術、ラテン語やギリシャ語なども得意であれば選択科目として受験できる。そんな試験が一日一科目、数日間に渡って行われるのだ。今年は6月16日から週末を挟んで23日までの6日間が受験日だった。
 さて、バカロレアの合格者は、1981年から一貫して女子の方が男子より多い。2013年の数字では、男子志願者の合格率は82,3%に対し、女子はなんと86,7%。合格率ばかりではない。昨年のバカロレアでは、全受験者のうち、1番から3番まで、上位合格者はすべて女子だった。
 こんな風に元気のよい女子だが、かつて女子は試験を受けさせてさえもらえなかった時代があったことを考えると、感慨深いものがある。フランスで最初にバカロレアに合格した女性は、ジュリ=ヴィクトワール・ドービエといい、それは1861年のことだった。合否判定は10人の審査員がしたそうだが、赤玉(合格判定)6、白玉(意見不表明)3、黒玉(不合格判定)1だったという。彼女は37歳だった。この後、勉学を続け、5年後には医学部を卒業している。ちなみに日本で最初に女子が大学に入学を認められるのは、1913年だ。
 さて、例外的女性は別として、フランスの女子一般に中等教育が開かれたのは1880年のことだ。それからさらに、男子と教育内容が同一になるには1924年まで待たなければならないが、その象徴となる科目はラテン語だった。女子もラテン語を習うことができるようになったわけだ。
 ところで日本では、男女の履修科目に差がなくなるのは、なんと1993年だということをご存知だろうか。こちらは、家庭科が男子も必修科目になることによって果たされた。
 家庭科はフランスの学校の科目にはない。女子のみの学校にはあった科目を削る方向で平等化が進んだのだろう。日本とフランスでは平等化のやり方が違ったわけだが、この点に関しては、男女ともに家庭科を学校で履修できる日本のカリキュラムのほうがよいと私は思っている。
 さて、フランスでは1970年代に女子の進学率が大きく伸び、1981年には学生総数に占める女性学生の数が男子学生の数を上回った。
 現在では、女子が占める割合は、医学部で64%、法学部66%である。医者、弁護士、判事の数はいずれも、すでに女性の方が多くなっている。
 しかし、「女子優位は見かけだけだという見方もある。エリート・コースである理系バカロレアを受ける層では女子は少数派、理系グランゼコール準備学級(グランゼコールは大学よりプレステージが高い高等教育機関で、バカロレア取得後2年の準備をして受験する)に残る女子は少ない、エンジニア学校の学生は70%が男子、とまだまだ不平等があるのだ。
 理系バカロレアにおける女子の割合は45,7%。これが文系となると79%が女子になる。フランスではなぜか成績の良い子は理系でバカロレアを受けなければならないというような常識があるので、文系はプレステージが低いのだ。グランゼコール準備学級というのは、成績上位者しか残れないエリートコースだが、理系の準備学級に残る中では、女子は30%を切る。大学でも、学士号、修士号の数は女子の方が多いが、博士号となると男女が逆転するのだそうだ。
 エリートコースはまだ男子が優勢であるとしても、全体的には教育課程における女子の快挙は間違いない。今年はどうなるだろうか。総受験者数は68万6907人。結果発表は7月4日だ。

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中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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