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 「高校のトイレにはコンドームの自販機があるのに、生理用ナプキンのはない。生理用ナプキンの自販機をつけて欲しいよ」

 ある日、娘が学校から帰って来て仏頂面でこう言った。うーん、たしかに。フランスの高校では、性病対策と避妊用にコンドームを配っているというのは知識として知っていたが、保健室に行ってもらうものだと思っていた。昨今、フランス人の初体験年齢は平均17歳ということだから、高校にコンドーム自販機をつけるのも見識なのかもしれないが、トイレで緊急に必要なのは、やはりナプキンの方ではないのか。
 フランスの高校では奇妙なことが他にも起こっている。昨年11月にパリを襲ったテロの後、「非常事態宣言」が出ていることはご存知と思うが、これのおかげで高校生は校内でタバコが吸えるようになったと聞く。フランスではもともと未成年にもタバコは禁止されておらず、16歳以上になると学校でも喫煙してよいことになっているのだが、2007年に「公共の室内でタバコを吸ってはならない」と法律で決められたことから、職場やカフェと同じく学校でも、吸うなら外で、となったのだ。そこで休み時間になると高校の前が煙を立てる若者でいっぱいになっていた。ところが、テロ対策で休み時間もなるべく外に出ない方がよいということで室内喫煙が許されたらしい。いずれにしても未成年に喫煙が禁止されている日本から見たらビックリの光景だろう。

 フランスでは中学最終学年でタバコを吸ったことがある生徒は16%、高校1年目で倍増、高校最終学年になると3人に1人は毎日吸う喫煙者だそうだ。学校が終わる4時過ぎになると、カフェのテラスが高校生でにぎわうが、そういう時、彼らは決まってタバコを手にしている。
 といっても3分の1であれば、喫煙者は高校ではマイノリティーだが、アルコールとなると高校1年生で9割は口にしたことがあるそうだ。だいたい第4学級(日本の中学2年に相当)で、ブーム(友だちを集めて自宅でするダンスパーティー)の時などに始めるらしい。うちの娘などは「お酒はまずい」と言っていてかわいいものだが、高校生の約半数は「酔っぱらったことがある」そうだ。

 高校生は2年目で、進学を視野に入れてコース分けされる。しばらく前から、医学部は女子の割合の方が多く、エンジニア学校(日本であれば理工学部にあたる)でも女子の割合が増えては来た(約1/4)が、全体として高校で理系に進む女子は39%。逆に文学・人文科学系は8割が女子で占められる(社会科学系は別にある)。フランスの女子高校生は、将来、仕事をすることは当然と考えていて、夫に養ってもらう将来というのは冗談にしか口にしないが、職種ということになると、まだ歴然と「女性向き」に傾きがちだ。俗にも「理系の女はかわいくない」と言われている。

 フランスの高校は私立も含めてほとんどが共学で、制服があるのはごく一部の女子校だけだ。けれど私服で学校に行く女子高校生たちは、特別、個性的な服装をするわけではない。お決まりのジーンズにスニーカー。今だと尻パッド入りジーンズにスタン・スミス。中学生はジーンズ一辺倒なのが高校になると少しスカートをはいて行くこともあるというくらい。人気ブランドはZARA。これに上の大きく開いたトートバッグを肩にかけて出かけて行く。髪型も判で押したようにストレートのロングヘア。フランス人の髪はストレートがデフォルトではないので、ヘアアイロンで伸ばしている子も多い。日本の子がカールしたがるのとは対照的だ。高校生になるとカラリングをする子も多い。

 女子高校生は、化粧をしているのがマジョリティだ。これも大体、第4学級から始める子がみられて、高校では化粧しない子の方が少なくなる。日本の女の子の薄化粧とは異なり、けっこう厚い化粧をする。日本の「かわいい」文化と違って、大人の女っぽい方が男子からも評価が高いそうで、どの年齢でも実年齢より2歳以上、上に見られるようにする傾向がある。私の娘によれば、化粧で「女」を強調するか、体つきが女っぽい子が男子に人気がある。
 けれど、高校1年生(16歳)では、まだ彼氏のいる子はそう多くない。女の子の最大の関心事はボーイフレンドを作って週末の夜にデートすることだが、夢で終わっている子も多い。問題は親しくなるためには友だちになるのが手っ取り早いのだが、友だちになってしまうと恋人に移行できなくなることだそうだ。これは「フレンドゾーン」と呼ばれて、高校生のみならず、フランスの若い男女にとって大問題であるらしい。男女が普通に友だちになれることが、かえって障碍になっているようだ。

 日本より早熟なようなフランスの高校生だが、若い女の子が商品になるようなことはないので、JKビジネスのようなものは発達していない。女子高校生の主要なバイトはベビーシッティングだ。
 女の子に人気のスターは、ジャスティン・ビーバーとワン・ダイレクション。これは日本も同じだろうか。

 かわいいのは、バレンタインデーの話。日本のようにチョコレートをプレゼントするというような習慣はない。ただ、すでに相思相愛のカップルだと、「エッフェル塔をバックに写真を撮る」のだそうだ。これはパリの高校生の特権かもしれない。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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