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捨ててゆく私 Vol.51「子どもの街」

茶屋ひろし2007.11.21

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寒くなってきましたね。二丁目にも木枯らし一号が通り過ぎました。
暑い季節に比べると、どこか閑散としてしまったような二丁目の昼下がり、警官が二人、通り過ぎていくのがビデオ屋から見えました。ここのところ警察の見回りが増えたような気がします。徒歩や自転車で、そして週末はパトカーもノロノロ運転をしています。
前からこんなだったっけ、と思いました。
事件が起きているわけでもないだろうに、と静かな午後の街で思います。

そういえば、昼まで飲んでいた若い人たちが表で騒ぎ始めるとすぐ警官が駆けつけてくるのは、この半年ほどでよく見る光景になっていました。一日中営業しているようなお店は、やっている人たちはゲイですが、客筋は歌舞伎町や六本木から流れてくるノンケのホストやキャバ嬢がほとんどです(と思います)。

先週はウチの店の看板が酔ったついでに蹴られて、パトカーが飛んできました。呂律の廻らない口調で、何でもありません、と繰り返す酔っ払いたち。看板を蹴った当人はとっくにどこかへ行ってしまったようです。「通報されましたか」と警官が二人(必ず二人で行動)店に入ってきました。
しないわよ、これくらいで。
とは言わず、私は首を横に振りました。

昼間に若い人たちが道路ではしゃいでいるのも、警官がすぐにやってくるのも、どちらもヘンな感じがします。
相方のオーラちゃんが、先日の深夜にお店に来て話していったという、二丁目三十年のベテランママの感慨を聞かせてくれました。私も時々昼間にお見かけする、この界隈の有名人です。
「この街もすっかり子どもの街になっちゃったわね~」
ママはそう話を切り出したそうです。

>昔はゲイの人たちがみんな隠れてやってくる場所だった。だから表で目立つようなことは誰もしなかった。今みたいになんでも(ノンケを)受け入れていくことがいいとは思えない。こうして表で騒ぐ人たちが増えると警察も動く。そのうち街自体が区画整理されて、風俗や飲み屋の商売をしていきにくくなってしまう。すでにその方向に動いているのではないか。それを食い止めているのは、二丁目の地主でビルを何本か持っているゲイの人が何人か残っているからだ。店のお客でも、得体の知れない(ゲイかノンケかわからない)ただのお金持ち、みたいな人が少なくなった。

オーラちゃんから聞いた、ママの話の内容を並べてみるとこんな感じでした。
私が京都の木屋町の飲み屋で働いていた頃にも、年配の元遊び人たちが「木屋町が子どもの街になってしまった」とよく嘆いていました。

かといって、お店を構えているママの世代の人たちも何人かいるので、二丁目が子どもの街になってしまったのかどうかは、私にはよくわかりません。ノンケの若い人たちが気軽に遊びに来れる街になっていることも、同性愛が社会に対してオープンになっていっている現象のひとつだとしたら、そんなに悪いことでもないような気もします。
ただ、些細なことで警察を入れてしまうのはどうかと思うし(警察は基本的に苦手です)、得体の知れないお金持ちにはすこし憧れます。

今月号のゲイ雑誌で、今までのゲイ雑誌の歴史を振り返るという特集が組まれていました。その中で、90年代に活躍した元編集者の人へのインタビューが掲載されていました。日本の90年代はゲイリブの時代です。二丁目に飲みに来ても誰も本名を明かさなかったような昭和のゲイコミュニティーのイメージを払拭しようと、彼はその雑誌で「ハッピーゲイライフ」というものを打ち出すことに成功しました。それは、若いゲイの人たちに向けて、コミュニティーの中で自分たちの生活を肯定していこう、という呼びかけだったようです。そのインタビューで面白かったのは、そうしてライフスタイルを提唱したあとに、それはぜんぶ僕がつくったものなんだよ、とそこの編集を辞めるときに紙面で暴露したのだ、と語っていたところでした。

90年代の私は関西の片隅でゲイリブの動きなど全く知らずに生きていたので、今、二丁目にいて、彼のつくった「ゲイライフ」というものが残っているような続いているようなもう別のものに変わっているような、色々な気がしますが、それよりも私は、コミュニティーの特性は誰かが意図してつくったものだ、ということに驚きました。嘘の家庭を作りあげた女性が主人公の、角田光代さんの「空中庭園」という小説を思い出しました。

そう考えると、ベテランママの言う「古き良き二丁目」も当時誰かがつくったもので、ゲイリブを経て、「子どもの街」になってしまった今の二丁目も、誰かが必要としてつくっているものなのかもしれません(他人事みたいですね・・)。
ノンケの水商売の人たちがやってくる街になってきたということは、なにかしらゲイの人にとってもその状況が必要なのかもしれません。今は誰が(何が)この街をつくっているのでしょうか。警察でないことは確かだと思いますが、ゲイセクシュアリティーだけでもないような気がします。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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