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本文には関係ありませんが、一日にアイスランドで世界初のレズビアンをカミングアウトしている首相が誕生したそうです。アイスランドといえばビョークが生まれた国、という程度の認識しかない私ですが、世界は進んでいるんだわ、となんだか力んでしまいました。
さて、今回は勝手に始めたシリーズ「加害者としての私」の第三弾です。今回のテーマは「喫煙」です。

十七歳の時に中学の同級生から煙草をもらって以来、ずっと私は喫煙者です。家の前の公園で、同級生のマサト(本名)とブランコに並んで座りながら、高校卒業後の進路について話していたときに、「吸うか?」とマサトが自分の煙草を差し出しました。工業高校を卒業したら就職するというマサトの話を聞いていた、進学校に通っていて大学受験の勉強をしていた私は、自分がここで吸うような流れにいる気分になってしまい、それに逆らいませんでした。

それまでは父や兄の煙草の臭いを毛嫌いしていました。絶対吸うものかと思っていたくせに、煙草を吸い込んだら、ずんと頭が重くなり目の前が少し暗くなって、それを気持ちがいいと感じてしまいました。罪悪感と快感が同時に押し寄せたような気分になって、その後の日々は、それを何度も試したくなって、煙草を買うようになりました。
さすがに吸い続けてしばらくすると、そのクラクラした感覚はなくなってしまいましたが、あとは依存で吸い続けて今に至ります。

今働いているビデオショップでは上の方から店員の喫煙が許されています。レジカウンターの中で煙草を吸ってもかまわないのです。けれど急速に禁煙の奨励と分煙化が進んでいる世の中の動きの中で、年々、気持ち的にカウンターの中で吸いにくくなっています。
というか、仕事中にレジで煙草を吸っている書店員やツタヤの店員は考えられないし、スーパーにしろコンビニにしろ服屋にしろ、店員が休憩室や喫煙場所ではなく店内で煙草を吸っているということ自体が非常識だとは思います。

狭い店です。私が煙草を吸い始めると、顔をしかめて、あるいは咳払いをして店を出て行くお客さんに、申し訳ない気持ちになります。そういえば2ちゃんねるでも、タバコ臭くて嫌だ、と書かれていました。それはもっともで、店内で煙草を吸っている私がオカシイ、ともうこの頃は吸うたびに罪を犯しているような気持ちです。それでもなぜ吸っているのか、もはや意味がわかりません。

先週、とてもヤニ臭いお客さんがやってきました。全身にヤニが染み付いています。喫煙者の私でも、これはひどい、と思うレベルの悪臭です。友達には、一緒だよ、と突っ込まれましたが、さすがに禁煙が頭をよぎりました。彼から買い取ったビデオのケースは拭いても拭いても黄色のままで、途中でケースを捨ててしまいました。

この人はコレで電車に乗ってくるのだろうか、車内ではどう思われているのだろうか、たまには服を洗濯したらいいのに、ファブリーズをそっと一本そのリュックの中に入れてみようかしら、といろいろ考えてしまいました。けれど、買い取りの際に書いてもらったサインはとても綺麗な字で、いっしゅん嫌悪感が消えました。

その場で喫煙してなくてもすでに臭いということもあるんですよね。できるだけ吸う場所を配慮してちゃんと洗濯した服を着て、と、どんどん遠慮がちになっていく自分がいます。ヤニ臭いのは一緒だよ、と突っ込んだ嫌煙家の友達は、「ようやく喫煙者が遠慮するあたりまえの世の中になってきたんだよね」と感慨ぶかげです。

ふいに私は、なぜかホモフォビック(同性愛嫌悪)なゲイの友人を思い出しました。以前いっしょに外で食事をしたときに、途中から急に彼の口調がトーンダウンしたことがありました。

それまで楽しく喋っていて、ダウンしても彼は笑顔だったので、そのときはあまり気にしていませんでしたが、店を出た後に、彼は「僕たちがゲイだってことに気付いた店員が、僕たちのそばから離れていったでしょう」と言いました。

意味がわからなかったので詳しく聞くと、その男性店員は私たちがゲイであることを嫌がって離れていった、という内容でした。ちょうどその店員の立ち位置が中央に置かれたレジの前で、私たちのテーブルのそばでした。

驚いた私は、「他のテーブルの注文を取りに行っただけじゃないの?」と言いましたが、彼は「いや、そうではない」と頑として聞きいれません。私には被害妄想にしか思えなくて、仮に店員が嫌がったとしても、だから私たちが声の調子を落として遠慮する必要があるとも思えません。それにそもそも大声で喋っていたわけでもありません。

周囲の人たちではなく、彼自身が、自分の同性愛を嫌悪していて、たまたま運の悪いことに歩くカミングアウトの私と食事をしたことで、そのナイーブな部分が増幅してしまったのかもしれない、と、それ以上は何も言えず、逆に私が彼に対して遠慮してしまいました。彼は、自分がゲイであることで他人に嫌な思いをさせてしまってはいけない、と締めくくりま
した。

喫煙が場によっては加害行為になるという話の流れで連想してしまいましたが、並べる話ではないかもしれません。
近頃は禁煙バーも出てきました。ときどき行くゲイバーがそうで、そこでは店内では禁煙ですがテラスで煙草が吸えるようになっています。けれど冬場のテラスは寒いので、この季節は足が遠のいてしまいます。けれど先日酔っ払った私は、気がつくとカウンターに肘をついて、スパーっと煙を吐き出していました。慌ててマスターや店員の子が、「違う違う!」と私の手から煙草を取り上げました。

翌日思い出して、なにか無意識のうちに世の中流れに反抗してしまったのかしら、と思いました。そういえば、十代の頃の喫煙は不良の代名詞だったような気がします。もちろん十代ではないしいろいろと間違っていますが、ちょっと爽快でした。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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