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52歳の松田聖子に、アタシはあえて、もう一段上の「奇跡」を望むわ!

高山真2014.06.02

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5月31日、NHKの『SONGS』は、松田聖子のキャリア35周年を記念して、聖子が持ち歌をメドレー形式で30分間ノンストップで歌う、という企画でした。

 


松田聖子のコンサートに行かなくなって、もう何年が経つでしょう。行かなくなったきっかけは、「聖子の声」。全盛期の曲を、キーを2つ3つ下げて歌う聖子に、哀しみを覚えてしまったのよ。

 


自分の本にも書いているように、アタシは、聖子以上に聖子の本質を知っていたであろう作詞家・松本隆が詞を提供していた1981年~1988年が、松田聖子の全盛期であると頑なに主張するオンナです。その時期は、曲のクオリティだけでなく、聖子の声そのものも凄まじかった。あれだけのキャンディボイスが、あれだけの圧で出てくるのは、奇跡的としか言いようがなかったわ。可愛いのに、異常なまでに芯が強いの。そういう「声」を持っていたのは、日本芸能史上、松田聖子しかいなかった、と断言してもいいと思うわ。

 

 

 

 

 

 

イザベル・アジャーニが『可愛いだけじゃダメかしら』という映画で主演を務めたのは1993年ですが、それより「干支がひと回り昔」の段階で、「ええ、それだけじゃダメです」と、松田聖子と松本隆は言い切っていたわけね。

 

 

 

 

 

 

可愛いのに計算高い。ナチュラルに気が強い。でも、潔い。そういう歌詞を書かせたら、松本隆は天下一品だった。「●●させて」とか「●●して」という意思表示ではなく、「●●してあげる」と「●●してもいいのよ」という意思表示がベースになったガールポップは、間違いなく「松田聖子」という「ジャンル」から始まっているのよ。「女子からのお願い」ではなく「施し」と「許可」がベースになったラブソングなの。

 

 

 

 


「ほかの子に気を許したら 思い切りつねってあげる」(秘密の花園)
「明日会えるときには今日より やさしくしてあげる」(Let’s Boyhunt)
「ギュッと背中を抱きしめてあげる」(Sleeping Beauty)
「すぐに明るく許してあげるわ」(ハートのイアリング)
「裸足で踊って困らせてあげる」(今夜はソフィスティケート)


「キスしてもいいのよ 黙ってるとこわれそうなの」(渚のバルコニー)
「風を切るディンギーでさらってもいいのよ」(白いパラソル)
「力ずくでつかまえていいのよ たぶん無理ね あきらめなさい」(密林少女)
「私を沙漠にさらってもいい 金と銀の鞍のラクダに乗せて」(Marrakech)

 

 

 

 

アタシを含めたゲイは、若いころに高飛車を気取ろうと思ったとき、「●●してさしあげるわ」「●●させてあげてもよくってよ」といったフレーズを多用する人が多いものです。当然、これはギャグの響きを帯びてしまうものだけれど、こんな「性根」を真っ向勝負で押し通し、成立させてしまっていたのが、あの時代の聖子だったわけ。

 

 

 

 

そんな「してあげる」「してもいいのよ」という「性根」を教わりながら大きくなったアタシも、さすがに17歳のときに腰を抜かしかけました。今から27年前に、押しも押されもせぬ日本一のアイドルが(アルバム収録曲とはいえ)こういう歌を歌っていたのよ。懐古主義者になるつもりはないんだけど、そうね、いい時代だったわ…。(1曲目の『妖しいニュアンス』)

 

 

 

 

 

 

89年から、聖子が自分で歌詞を書くようになって、そうした「ナチュラルに気の強い女」はすっかり影をひそめてしまった。ヘタをすれば松本隆が書く女性イメージ以上に、気も我も強い松田聖子だけれど、本人の自意識は「可愛いだけの女」「自己啓発セミナーの常套句みたいな自己実現ワードに陶酔する女」だったのね……と失望してしまったの。

 

 

 

 

それでもコンサートは行っていたものの、冒頭で書いたように、全盛期の曲をキーを下げて歌うようになったのをきっかけに足が遠のいた。そして数年後、先週の『SONGS』……。見たわ、思い切って。

 

 

 

 

そして、確信したことがあります。「加齢は、キーの高低以上に、リズム感にあらわれる」ものなのね。キーが下がったのは、許容しなきゃいけない。世界中のすべての歌手が、それと戦っているのだから。ただ、聖子……。リズムだけはしっかりキープしてよ……。

 

 

 

 

妙にタメを作ってる、というのかしら。伴奏より、ほんの少し遅れて聖子の喉からメロディーが紡がれる。それがアップテンポの曲から疾走感を奪い、バラード曲に田舎くささを加えてしまっていたわ。

 

 

歌唱力の衰えを「タメ」でカバーするのは、多くの演歌歌手が取り入れている手法ね。演歌の人ではないけれど、和田アキ子は、もう「そうすることでしか歌えなくなった」歌手だったりもする。演歌はいいのよ、田舎くさいのがウリになるから。和田アキ子もいいの。あの人にリズム感を求めているファンは、いまさらいないだろうし。ただ、聖子はそれをやらないでほしかった……。奇跡的な美肌をキープするのと同じ執念で、リズム感をキープしてほしかったわ……。

 

 

ええ、アタシは聖子の大ファンよ。だからこそ、求めてしまうの。「このオンナだったら、奇跡を体現してくれるのではないか」と……。52歳といえば、美空ひばりが亡くなった年。「その年であれだけのことができていること自体が奇跡」ということも、もちろんできるんだけどね……。

※編集部注 6月6日(金) AM1:55~ (6月5日(木)深夜)、NHK『SONGS』松田聖子の回 再放送予定中 http://www.nhk.or.jp/songs/

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