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「顔が18禁」俳優が、エロ神へと進化を遂げてしまいました……

高山真2014.08.05

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 今は「ものを書く」ということをメインでやっているあたくしですが、雑誌の編集部に在籍していたときは、いろいろインタビューの仕事もありました。1冊目の本『こんなオトコの子の落としかた、(以下略)』に書いた「ジャンヌ・モローにインタビューできた」というのも、その時期のこと。芸能人が「テレビで見る対象」という以上に、「仕事の相手」だった時期があったわけね。


 仕事になっちゃうと、芸能人が目の前1メートルにいて、インタビュアーであるあたくしの目を見て話していても、たいした興奮は覚えないものです。まあ、ジャンヌ・モローだけは、あたくしのオールタイムベストというか生涯のアイドルだったものだから、さすがに緊張を必死で押し殺したけれど。


 そんなモードで仕事をしていたあたくしですが、それでも、過去に4人だけ、「これは危険だわ」と、顔が火照りそうになるのを必死になって押し殺したオトコ芸能人がいます。まずは、映画『ウォーターボーイズ』に主演する前の妻夫木聡。「少年と大人の男のちょうど狭間にいる、フツーのオトコの子が出す色気」というカテゴリーの頂点に君臨していたわ。そして、ドラマ『ロングバケーション』に出る直前の竹野内豊。「ここまで顔が整っていて、しかもセクシーなオトコ、見たことないわ。普通、セクシーってのは多少の崩れがあるからこそ生まれるものなのに……」と、しみじみ考えていたものよ。イケメンを前にこういうことを考えてること自体、必死になっている何よりの証拠なんだけど。で、3人目が映画『GONIN』に出ていた頃の佐藤浩市。「色気が人の形をしている!」と、腰が抜けそうになりました。


 で、4人目なのですが……。彼と会ったのは10年以上前のこと。あたくしがずっとお願いしている美容師が、あたくしの頭をセットしながら、「まだ金のない役者の子の髪の毛を、ボランティアに近い金額で切ってるんですよ。大きくなってほしいんですけどね」と、その子の名前を挙げたの。その後、その子の資料を取り寄せたら、確かに顔もいい。「担当美容師の顔を立てるのもアリかしら」というきっかけではあったけれど、当時彼がオンナの子たちに人気のミュージカルに出始めた頃でもあったから、イケメン俳優の企画で雑誌に登場してもらったわけ。取材当日、あたくし、腰を抜かしかけました。「何、このエロさは……」と。当時、彼は22歳とか23歳くらいだったはず。その年齢ですでに「顔が18禁」「声が18禁」と呼びたい完成度だったのよ。取材に同行してくれたライターが「あの子は底なしかも……」とため息まじりで漏らしていたのも、いまだにはっきり覚えているわ


 で、その俳優が、現在、卑怯なほどのレベルの「エロ神様」となって、『昼顔』というドラマに出ています。ええ、その俳優の名前は斎藤工と言います。


 20歳そこそこの段階で「顔が18禁」「声が18禁」というのは、どういうことか。それは「自分のカッコよさが、性的なニュアンスで消費される」ということを、とことん達観している、ということです。そこそこの数の芸能人と会ってきたあたくしですが、若いノンケ男子芸能人は、そのほとんどが、「自分がカッコいい」ということにはとことん自覚的であっても、「自分のカッコよさは、この世界(ショービズの世界)でどういう意味を持つのか」ということにまでは思いを巡らせて(あるいは、肌で感じ取ろうとして)いません。これはあたくしの仕事人生で断言できることです。


 20歳ちょっとの段階でそこまで達観していた斎藤工が、10年経って、「達観」したうえで「攻め」にかかっているのが『昼顔』というドラマね。


『昼顔』での斎藤工の役どころは、夫とのセックスレスにじんわりダメージを受けているパート主婦(上戸彩)と恋に落ちる高校教師役(既婚。つまりW不倫)。これがもうね、「人間の感情の機微にうとい理系」「髪型がモサい」「下着代わりの白いTシャツが地味なポロシャツの襟元から見えるほど壊滅的なファッション」「そのうえでメガネをかけている」と、要するに「色気」とか「セクシー」の記号を、水1滴も漏らさぬ勢いで封印した人間像なわけ。そこまで周到に封印しているにも関わらず、壊れた蛇口のように「エロ」が大放出されているの。ダダ漏れどころの騒ぎじゃない。大放出。あたくし、テレビ見ながら小さく叫んだからね、「恐ろしい子……!」って。北島マヤを前にした姫川亜弓みたいな白目になっていたと思うわ。


 これが最初から「セクシー」「色気」の記号をてんこ盛りにしたキャラ設定だったら、このドラマは破綻していたと思うのよ。だってあまりにも非日常だから。「セクシー記号全部乗せ」のエロ神様が金沢八景(物語の舞台)なんかにいたら大変よ。郊外の主婦には恐ろしすぎるか妖しすぎるかで誰も手を出せない物件になるか、アナタハン事件の逆バージョンのようなことが起こって金沢八景が封鎖されるわ!


 そうした周到さは、エロス方面だけでなく、ドラマ全体できちんと機能している。ながらくセックスレスの紗和(上戸彩)が、ブラとショーツがまったくバラバラであることを気にもしていないことが、干してある洗濯物でほのめかされる。息子夫婦の家庭を気遣ったり心配していることが十二分にわかるだけに、「あなたのここがイヤなんです」とこちらから面と向かって抗議できない行動を、しかし波状攻撃の勢いでたたみかけてくる義母の性格がねっちりと描写される(このドラマでダントツにいい演技をしているのは、間違いなく義母役の高畑淳子です)。唯一引っかかるのは、紗和を不倫の道に引きずり込む専業主婦・利佳子(吉瀬美智子)のダンナが、出版社勤め(要するに会社員)なのに生活レベルが高すぎる、ってことくらいかしら。あの生活をキープするなら、収入は2倍必要ね。まあでも、そのくらいしか引っかかるところがない、ってのは、むしろすごいことではあるんだけど。


 あ、あと、もうひとつ。「利佳子の不倫相手の貧乏画家(北村一輝)が、研ぎ澄まされたマッチョ」というのもリアルではなかったけれど(あのカラダは、ジムに「週3以上・2年以上」通わないと作れないカラダだから)、まあそこは「夢の世界」ということで。ただ、3回放送した時点ですでに胸板も腹筋も大サービスしている北村一輝とは対照的に、斎藤工、まだシャツのボタン1つだって外していません。それでも鉄砲水のように放出されるエロさと言ったら!


 かのナンシー関は、『ビーチボーイズ』でTシャツを脱ぎまくる反町隆史を「男のエロも商品になった」と評しました。そこから17年たち、「男のエロ」はこういう形で進化し、こういう形で消費されるようになったのね、としみじみします。今度、あたくしの担当美容師・Mくんに報告しなくちゃね。「あの子、とんでもない形で大きくなったわよ」って。うふふ。

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