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「人的被害」

茶屋ひろし2014.10.22

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職場で朝日新聞へのバッシングが止まらない雑誌たちを並べていると、人格を持った何かに見えてきます。意見というより、うねりのような、台風や地震などの自然災害に似た出来事に遭遇している気分です。そういえば、ハリケーンに名前を付ける国もあるな、とか。


バッシングって、それ自体が目的の消費活動で、何かを破壊して通り過ぎていくので、対策としては、持っていかれないように表紙をにらみつけるくらいしかできません。

 

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それにしても、百田尚樹や井沢元彦らが朝日叩きに精を出していて気持ち悪い。
先日出た百田氏の新刊のおかげで、店頭に、大きく写されたスキンヘッドのポスターを貼りだす羽目になりました(日本語がおかしい・・)。それと細木数子のパネルで、なんとも毒々しい光景になりました。人為的な災害・・、遭わずに済む方法はないものか、というか、なんでこんな人たちの本を買う人たちがいるのだろう、と売り上げスリップを整理しながら思います。


かといって、彼らの本をすべて店頭から除外することもできません。先日出会った「お洒落セレクト書店」で働いている人は、「出版社から送られてくる注文ファックスはほとんど捨てている」と言っていました。週刊ポストを置いていない本屋だもんね、と私は見に行ったときのことを思い出しました。
書店には各出版社から毎日、大量に新刊案内のファックスが送られてきます。
その書店では「その本がお洒落か、そうでないか」で選んでいるのでしょうか。


以前は、自分で選んだものだけを置くというスタイルをうらやましく思いましたが、段々そう思わなくなってきました。
あからさまなヘイト本のファックスは、私も手がすべったかのように捨てていますが、なんでもかんでも捨てるわけにもいかないような気がしてきました。
拾っているわけでもありませんが、抑制するという感覚を持ちながら、「WILL」も並べています。
それでも去年は毎月30冊完売していたウィルですが、それに少し抵抗しようと仕入れを20冊にしたところ(商売としておかしい・・)、5冊ほど売れ残るようになってきました。
その代わりでもないですが、この二、三ヶ月は、「週刊金曜日」と「DAYS JAPAN」の初回20冊が売り切れるようになっています。
ウィルの読者がそちらへ移行したということではなくて、購買層の割合が変化したということだと思いますが、このせめぎあいのほうが、手ごたえを感じます。「新潮45」も特集がウィル寄りになってから売れなくなったし、今月の「世界」(40冊)は売り切れそうです。


「ひさしぶりに世界買うわ~、何年ぶりかやで、ホンマ」とわざわざアピールして買ってくれたおじさんもいたそうです。特集は「ヘイトスピーチを許さない社会へ」です。
店を入ってすぐのウィルたちの正面に、河出書房新社の「この国を考える」フェアを、関連させて他の本とともに展開しています。
有吉佐和子のフェアには、「いつまでやるねん」と文句を言った社長(父)ですが、もう半年は過ぎた、そのヘイトスピーチコーナーはとりあえず黙認しています。


「サヨクは店の奥へ持っていけ、手前にはもっと簡単な本を。ウヨクは置いていい」と会議で発言する社長です。
赤旗がらみで、毎年100本売るいわさきちひろのカレンダーも、今年から入り口ではなく、奥へ持っていけと指示がありました。
巻いているビニールに「核兵器のない世界へ」と印字されているのが問題だと言います。「ミリタリー好きのお客さんが見たらげんなりするやろ」と、言っていることがめちゃくちゃです。
店頭から共産党系の色を消したくてしょうがないのです。そうしないと売り上げが伸びないと思っているのです。


それに対して私は、そんなふうに気にする人はいないんじゃない? と言いますが、納得のいかない様子です。奥に持っていったら、例年に比べてカレンダーが売れなくなったので、入り口付近に戻しました。
そういうふうに、お金の話に還元したら、もう言わなくなりました。


戦後、バラック小屋で子ども時代を過ごした経験を、少しずつ話してくれるようになった父です。共産党員だった祖父は体を壊して働けず、祖母が内職をして、中学を卒業した叔父さんたちが働いて家計を支えました。
社長の中には、お金がなくて苦労したことと、共産主義の思想が、矛盾したかたちで、しかもどちらも強い印象で、同居しているのだろうと想像します。


そのどちらも薄い私が、書籍をセレクトしていくことが、社長にとっては不安なことなのかもしれません。


毎月のように新刊が出る自己啓発書の和田秀樹や千田琢哉の名前を見ると、「ぜったい、この人ら、書いてない」とその出版社を疑います。また、黄文雄とか呉善花なども、個人名というより、編集部企画のタイトルのように見えてきます。


自転車操業から生み出される、責任の所在を問えないような書籍はできるだけ遠ざけたい。
先日は、「ジャパニズム」(青林堂、ガロ以後、ひどい・・)という雑誌について、店頭で問い合わせを受けましたがどうしましょう、とスタッフに聞かれて、それはかんべんしてください、と断りました。
儲けが出ないのはそういう選択のせいだと思わないようにしています。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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