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「店の改変」

茶屋ひろし2015.05.12

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近所にあったブックファーストが、ビル改装のため、閉店してから一年が経ちました。そこのお客さんが流れてくるから、と入荷する雑誌を増やしてコミックや新刊の品揃えをタフに・・との社命に、なんとかひっかかりながらやってきましたが、今月には大阪駅のファッションビルにツタヤが入るということです。
ツタヤはツタヤでも代官山店です。なんのことかおわかりでしょうか。
一度見に行った私によると、ファッションと旅行と料理の本や雑誌がどかどかと詰まれて、床や棚は木目で、色んなところに形の違う椅子やソファが置かれて、食器も売っていて、二階では大きなスピーカーからジャズが流れて、CDやDVDも売っていて、同じデザインのフロアで気づかなかったけど、いつのまにかアップルや旅行会社やカフェの店内にいて驚く、というシニア層を意識した大人の隠れ家的な、でも使っている材料はなんか若い、セレクトショップでした。
最近ではこうした、本を、売り物というより、他の商売のための客寄せに使っている店が増えています。滞在型と言うそうです。
業界のニュースによると、ツタヤチェーンはこのスタイルを全国に随時展開中ということで、それが梅田にもやってきたということです。
そのプロモーションビデオを見たらロボット(アシモ?)が案内しています。
ライバルですね・・と出版社の営業の人に心配されますが、それって同じくらいの規模や利益のある者同士の話じゃないですか、と自嘲してしまって、代官山にはエロ文庫も山口組も不破哲三も置いてなかったからかぶらないと思う・・それにウチはまだ本屋だし、と胸の中でぶつくさ不安をなだめています。
そのツタヤの店舗が入るのは大阪駅の伊勢丹跡です。伊勢丹は「isetan」となって残るようですがよくわかりません。経営不振で一度閉店して、半年くらいかけて改装していました。
ある日の夕刊では、商品を少なく陳列し通路も大きく取った東京のスタイルが裏目に出た、と分析されていて、新しい店舗ではバッグなどをたくさん積む「盛る」演出をしていくようだ、とありました。
シンプルな演出がおしゃれと受け止めてもらえず、「なんや、ここスカスカやないの。買うもんないな。高いばかりで」となっていたんだわ、と容易に想像がつきました。
大阪やわ、と他人事のように笑ったとたん、自分に跳ね返ってきました。
職場のコミック店(70坪)の売り上げ低迷を受けて、在庫を大幅に減らしている最中でした。「コミック補完計画」をテーマに、天井近くまである書棚に隙間なくコミックを敷き詰め、「ここ、あるな」というイメージが売りでしたが、売り上げは年々下がり、したがってそのまま状態が劣化していく本が増えていました。
コミックは一般書籍に比べて、その素材から劣化しやすいのです。ジャンルとしても、書籍ではなく雑誌に分類されるものが大半です。
一年くらいで、背表紙は蛍光灯に焼けて、本の天辺は茶色く変色してしまいます。去年LEDに変えましたが、焼けるのに変わりないようです。
高いところにあると、取りにくいし落ちてきたら危ない、という理由もありました。それは一般書籍のフロアでも同じで、そのために置いてある丸い踏み台に乗るのも、ヒールやスカートのときや、あるいは高齢の人にとっては持つところもなくて危険です。
車椅子で移動できるだけの幅を取っているところ以外は、なんでこんなつくりにしちゃったの、と首をかしげることが多く、いっそ最上段の書籍をなくしてしまおう、という運びになりました。
本当は棚全体を低いものに変えて見通しを良くしたいのですが、それをすると莫大な費用がかかります。とりあえずできることから、そして思い切って、500万近くのコミック在庫を返品しました。
すっきりした店内に、伊勢丹敗北の分析と伸びない今月の売り上げ・・、まちがえたか、とうろたえました。
年末にとったお客様のアンケートでは、来店理由の多くを「品揃え」が占めていました。年明けに改変を打ち出したとき、現場の担当者から、そのイメージが損なわれるのではないか、と指摘されました
私は、そう受け取られないように「お客さんの欲しいものがある」棚は維持したい、と抽象的に押し切り、それよりも中古店のようなイメージを変えることを強調しました。
それが裏目に出たかもしれません。
平積みしている同じタイトルを一冊ずつ手にとって、傷や折れがないか細かくチェックするお客様もいれば、その中古品みたいになった焼けた本を躊躇なくまとめて買う人もいます。
焼けた本の中には、もう版元から入手できないものも含まれていて、それはブックオフに任せようよ、とか言いましたが、けっこうな量の、ブックオフにないものが含まれていたのかもしれません。そこがもしかするとこの店の魅力の元だったとしたら、私はそれをなくしてしまったと思います。
テーマだけ残っていて中身を伴っていない、と改変を打ち出しましたが、現場を知らず中身を伴っていなかったのは私の案だったような気がします。
まるでやり方が橋下みたい・・、と似ている気がしてため息が出ます。
でも、あちらは政治でこちらは商売、それにウチは百貨店じゃないし、弱気なのはきっと売り上げのせいです(って、ずらしても駄目だわ・・)。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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