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「不惑の年」

茶屋ひろし2015.12.07

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今年40歳になりました。このコラムを書かせていただくようになったのは29とかだったような気がします。ようやく自分の誕生日をいちいち人に言わない大人になりました。

というか、見た目が変わりました。数年前からうすうす気づいていましたが、ジャスト40で確定されてしまった感があります。
若い痩せた男の子を見るたびに、細さが違う! と特に尻と太ももをガン見してしまいます。
私もかつては痩せていました。今でもそう言われますが、実は腹回りから太ももまでの肉付きが変化しています。20代から30前半の痩せ方というものがあったんだわ・・と感じ入ります。太ったというよりなんか、厚くなった気がします。

職場の前のチケット屋には、これまた細いというか薄い体の店長がいますが、彼は見た目が私より10は上です。おかしいな・・とその20代のような太ももやぺたんこのお尻を見ます。私の持論で行くと、50代ならもう少しその辺りは、だぼっ、としていなくてはなりません。
顔は相応に老けているので、この人はなんだろう・・バンドミュージシャンの枠に入れておけばいいのかしら、と引き出しに仕舞いました。

その流れか、顔も厚くなったような気がします。こと、店長になった今年から、スタッフの人たちに色々と口うるさく言うようになったことも影響しているような気がします。端的に言って管理職のおじさんになっただけの話ですが、切ない。その厚さに輪をかけているのは、一緒に行動することの多い3つ下の社員の男の子が、顔が良くて細くてお洒落なことにあります。

彼は行く先々で、「イケメンですね」「嘘。学生さんかと思った!」と男女問わず言われています。ここひと月くらいはそれが続いたので、その横にいて、何もそういったことを言われない私は憮然としてしまいました。
おかしいな、私だって可愛いやキレイと言われた時期があったはず・・。
あれは顔の造作のことではなくて、若いゆえの愛嬌だったか、それとも相手のお愛想だったか。
東京に中島みゆきのコンサートを見に行ったついでに、久しぶりに寄った二丁目のゲイバーで、常連さんにその話をしたら、「いや、もともと、そんなでもなかったよ」と突っ込まれて、笑いました。

現実を受け入れるって痛みを伴います。
今回のライブで歌われたわけでもないし意味合いも違いますが、「若くなくなったあたしたちは いったい どんな顔して 行きかえばいいの」という昔の歌がこだましました(『あたし時々おもうの』(1976年?))。
関係ないですが、名曲『誕生』や『糸』の入ったアルバム『EAST ASIA』が出た1992年に中島みゆきは40歳だったそうです。
細いとか厚いとか言っている私とえらい違いです。

コンサートで印象的だったのは、『阿檀の木の下で』(1996)という三線の音色から始まる歌の時でした。間奏ではスピーカーから戦闘機の爆音が流れました。
「波のかなたから流れて来るのは、私の知らない寿歌ばかり」「遠い昔にこの島は戦軍に負けて貢がれた」「だれもだれも知らない日に決まった」という怒りを含んだ美しい曲です。
ちょうど前日に、インターネットで、フランスで起こった同時多発テロに対して、ツアーのライブ中に直接スピーチするマドンナの姿も見ていました。
それぞれの表明だわ・・とみゆきのコンサート(「一会(いちえ)」)が終わったあとに思いました。
それは、暴力への怒りと非暴力への連帯の表明でした。

10月に初めて劇団態変の舞台を観ました。「ぬえ」という公演でした(第63回公演)。観たというより体験した、と言ったほうがいいかもしれません。
劇団態変についてはこちらを参照してください
演者が数人登場して、ノイズミュージックと生演奏のバンド(指笛も)とそれぞれの体の動きで、その世界を表現していました。
それは怒りそのものに感じました。
最後、それぞれの演者の上に色とりどりの蚊帳みたいなもの(表現が・・、すみません)が降りてきて、彼らが包まれていくシーンは美しくて、それで怒りと美しさがセットになってしまいました。
ずいぶん前に見たイトーターリさんのパフォーマンスも後日思い出しました。
沖縄の米軍基地の理不尽さを、怒りを込めて体現されていました。
こうして繰り返し起こされていく表現は、ないものとされることへの怒りと、「健康で文化的な最低限度の生活」を奪われることへの抗議だと受け止めています。そしてそれが伝われば多くの人たちを救うから、その表現は美しさを併せ持つのだと思います。

先週発売された長渕剛を特集したムックに同じようなメッセージを感じて、職場の書店で始めた、「民主主義を考える」というコーナーに平積みしてみました(文藝別冊 長渕剛 民衆の怒りと祈りの歌 河出書房新社)。
両論併記なんて「ろくなもんじゃねえ」です、ピーピーピー。

他人には相変わらず惑いますが、そういう本筋だけは見失いたくないな、と思っての40歳不惑です。見た目についてはもうあきらめました。若さをうらやんで生きていきます。なんのこっちゃ。

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茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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