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マドンナはそろそろ「クソババア」への移行をしてもいいと思うのよ

高山真2015.02.10

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 日本のバケモノ・松田聖子が自分のコンサートで一時期取りつかれたようにマネをしていたアーティストといえば、世界規模のバケモノ・マドンナです。そのマドンナ、今日、2月9日(アメリカ時間だと8日ね)に、グラミー賞でパフォーマンスを行いました。

 あたくしがマドンナのパフォーマンスをしっかり見るのは、3年前のスーパーボウルのハーフタイムショー以来。あのときのマドンナはそりゃもう凄まじかったわ。

 以前どこかで書いた記憶があるのですが、マドンナは、アメリカのショービス界の歴代ナンバーワンのオンチです。加えて言うなら、歴代でも指折りのクソ曲コンポーサーのひとり。が、その程度のことはマドンナを語るうえでなんのデメリットにもなりません。

 マドンナは、あたくしにとっては「アーティスト」でも「シンガー」でもなく、「アイコン」です。アングラ畑であれファッション畑であれメッセージ畑(強いオンナ、自分から快楽を手に入れていくことをためらわないオンナといった主張ね)であれ、世の中の最も尖ったところで実をつけた「何か」が、その人が採用して世に出すことで、世間一般に受け入れられ、文字通り「ポップ」へと姿を変える、その装置としての存在ね。スーパーボウルでのパフォーマンスは、「レディ・ガガ? 誰よそれ。アタシはマドンナよ!」という強烈な意地を感じたわ。素敵。

 大衆に受け入れられるものは、必然的に「ほんの少しダサくなってしまう」もので、そのさじ加減も含めて、あたくしはマドンナが大好きなのです。1990年ごろ、大学生だったあたくしと友人たちは、クラブのフロアで『VOGUE』がかかれば「ヴォーギングの元祖は金井克子よね」と語り合い、千葉のマリンスタジアムで行われたワールドツアーのアンコールで『KEEP IT TOGETHER』がかかれば、そのコスチュームに「ギャー! ルミ子がいる! 小柳ルミ子の『お久しぶりね』だわ!」と大騒ぎをし…と、マドンナに混じるほのかなダサさを猛烈に愛していました。

 で、今日のグラミー賞でのパフォーマンスですが……。せりあがった円形のステージの上で新曲『Living For Love』を歌い踊るマドンナ、一段下になった周りで踊る男たち、そして全体を覆うスペインの雰囲気……。ジョルジュ・ドンの『ボレロ』でした。モーリス・ベジャールの振り付けによる、モダンバレエの最高傑作のひとつよ(ジョルジュ・ドン以外だと、あたくしはシルヴィ・ギエムが踊った『ボレロ』が大好き)。それを簡単に連想させてしまうような作りになっていて、ビックリしてしまったわ。ネタ元として使うにはあまりにも難しいから。どうしても「踊り」を比較されてしまうからね。

 で、あたくしが見た限り、マドンナったらけっこう壮絶に討ち死にしちゃってました。友人は「新しくない。それがすべて」と言っていましたが、まあ、多くのガタイ自慢のオトコたちに囲まれて踊るスタイルはマドンナが25年前に始めて以来、アメリカの音楽界の「お約束」になってしまったし、最後、宙づりになって空へと昇って行くのは数年前にレディー・ガガが(日本では25年前に小林幸子が)やってしまっているものだしね。あたくしは、それに加えて、マドンナの動きがどうにも気になって……。

 なんと言うのかしら、リズムに合わせてタテ乗りで動かす体の、ひざや上体が、「厳密な振り付けでこの角度で決まってる」感がまったくなかったの。「加齢に負けてゆるんでしまった」としか見えないのは致命的。観客にクラップを要求するときの猫背っぷりは悲しくなったわ。あたくし見ながらつぶやいちゃったもの、「皇潤が必要よ……」って。

 マドンナは『VOGUE』からの25年、ずっとアイコンでい続けた、世界のショービズ史上まれな人間よ。でも、「ポップ製造機」としてのアイコンは、鮮度と性能が命なの。それを誰よりも知っているマドンナは、ずっと人智を超えるワークアウトと食事制限と美容外科のパワーを取り込んでいた。好意的に考えて、そこまで努力していたマドンナが、いきなりここまでの衰えを見せるのはどうしても不自然なの。そう考えるなら、じゃあ責任はコリオグラファーにあるわね。「一生、神輿に乗ってやる」と誰よりも強い意志を持っている人間を、側近が裏切っちゃダメよ。3センチとか5センチ程度の「周囲とのズレ」や「動き、ポーズの甘さ」を指摘したら、マドンナは「ブチ切れる」ではなく「きっちり修正する」ほうを選ぶタイプのオンナよ……。

 今後マドンナはどのような「見せ方」をするのかしら。コリオグラファーを替えて、もう一度、「周りのダンサーと寸分違わぬ動きを見せる」というショー形式に戻るのか、それとも、新しい形態に移行するのか……。個人的には、「もうマドンナが踊れない」ということであれば、「ポップス界のベティ・デイヴィス(Bette Davis)」と呼びたいような底意地悪いババアになってほしいんだけどね。「もはや人前で芸を見せる機会はグンと減ったのに、呼ばれて出ていった場所では漏れなく毒を吐く」みたいな。亡くなる直前まで「悪女」「背すじを伸ばして言いたいことを言うオンナ」としての矜持を貫いた、ハリウッドの大女優、ベティ・デイヴィス。音楽界でそれができるのは、やっぱりマドンナしかいないと思うから。誰もがその言葉に耳を傾けざるを得ないクソババア(褒め言葉よ、念のため)。それはそれで、立派にひとつの「アイコン」たりえるもの。

※マドンナのグラミー賞は、いまのところ「アップされるそばから削除される」状態。なので、申し訳ないけれどご自身で探して、確かめてみてくださいませ。

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