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ビヨンセは攻めて、レディー・ガガは守った? スーパーボウルで見えた、二人のディーバの別れ道

高山真2016.02.10

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 ビヨンセといえば、「なんかもうサウンドが進みすぎちゃって、『これはカッコいい音楽と言っていいのだろうか』ってレベルになってしまった」感と、「なんかもう踊りがヘンテコすぎて、『これはカッコいいダンスと言っていいのだろうか』ってレベルになってしまった」感のミックス加減において、余人の追随を許さないディーバです。この連載でも以前取り上げましたが、『deja vu』のPVの見事な「アホの坂田師匠」ダンスは、名店のおでんや角煮に匹敵する旨味の染み込みっぷり。何年たっても美味しいって驚異的です。

ただ、さすがビヨンセ、そんなレベルで止まったままではありません。「旨味」を飛び越えて「新たな味覚」と呼びたい域に突入しています。あたくしがビヨンセに最初に目が点になったのは、2011年だったかしら、『Run The World(Girls)』のPVがリリースされたときでした。「世界を動かしてんのは誰? ガールズよ!」というストレートかつパワフルなメッセージをしっかりと受け取りつつも、あたくしごときの胃では、このダンスをどうにも消化できなかったことを覚えています。だって面白すぎるんだもの…。

『Run The World(Girls)』


 そして2014年には『7/11』のPVをリリース。ブリーフ穿いて、「もはやコリオグラファーがすら雇っていないのでは」という妙ちきりんなダンスを踊り狂うビヨンセに、『Run The World』で感じた「面白すぎ」をはるかに超えて、パンクの魂を感じ取ってしまったほどです。「ダサすぎてクセになる」という分野に、アメリカのショービズ界でも1,2を争うディーバが参戦する。なんと奥深い…。

『7/11』


 で、この2016年。アメリカのお祭りイベント、スーパーボウルのハーフタイムショーに出演したビヨンセは、アメリカの日付で2月6日にリリースした新曲『Formation』を披露したのですが、いや、凄かった。スーパーボウルでのパフォーマンスは、youtubeではアップされては削除、の繰り返しですので、申し訳ないのですがご自身で検索していただくとして、ここではPVを。

『Formation』


 めちゃくちゃクールな音に乗せて、アフリカンアメリカンとしてのプライド、アフリカンアメリカンの女性としてのプライドと、自分たちを取り巻く状況に関する怒りとプロテスト(プロになるためのテストではなく、protestのことね)が、これでもかの勢いで詰め込まれています。

 ハリケーン「カトリーナ」で壊滅的な被害をこうむったニューオーリンズの様子を彷彿とさせるカットからスタートするこのPV。日本では住民による略奪の様子ばかりがニュースとなって流れてきましたが、アメリカ本国では「アフリカンアメリカンやヒスパニック系が多く住む場所では、救援さえも後回しになるのか」と大きな物議を読んだ街でもあります。また、PVの後半では、機動隊員たちの前でダンスを踊る少年と、その姿に両手を挙げて「無抵抗」の意思を示す機動隊員たち、そして壁に書かれた「俺たちを撃つな」の文字がくっりりとしたコントラストを描く…。言うまでもなく、ファーガソンで、銃器を持っていなかったアフリカンアメリカンの少年が警察官に銃殺され、警察官が不起訴処分となった事件が根っこにあるものでしょう。

 こういった明確なプライドチューン、プロテストチューン(こういう単語があるかどうかは知りませんが)をリリースし、自分の国の半分の人間がガッツリ見ている番組で披露する。これができる胆力を持つビヨンセ、やはりリスペクトせざるを得ません。そして、こういった意思表明を肯定的に受け止める層がガッツリいるアメリカにも大きなリスペクトを。

「問題」のありかは、国によって違います。アメリカにはアメリカの病巣があることくらい、あたくしだって知っておりますが、「いいものは、いい」と認めることくらいはいたしますわよ。少なくともアメリカには、「ポリティックな意見の表明」を認め合う自由がある。それにかんして、一般人同士ですら無言の圧力をかけあうような、じっとりした閉塞感がない。そこはきちんと認めないと。

ダンスがいくらダサくても、ビヨンセはマドンナに続く女王です。だからガガ、お願いよ、もう1回ハジけてちょうだい。ビヨンセの登場に先んじること数時間、同じくスーパーボウルのオープニングで、グッチのスーツ着てアメリカ国歌を歌ったガガ。ええ、上手かったですよ。ホントに上手かったんですけど、「上手い!」ということをメインで評価されるのは、10年先でも遅くないじゃない。ガガの、人生の終幕に来たかのような落ち着きっぷり、逆にザワザワしちゃったわよ…。

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