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40代から人生は終幕に向かうのか? 有間しのぶ『その女、ジルバ』が示す希望とは

高山真2016.04.04

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 確か2冊目の本『愛は毒か 毒が愛か』という本に書いたのですが、ドラァグクイーンのブルボンヌが率いる「アッパーキャンプ」という女装集団が掲げていた「3B政策」は、あの当時のあたくしに多大な笑いと力を与えてくれていました。3つのB、それは「ブス・貧乏・場末」の頭文字。世の中で「デメリット」とか「欠点」とか「美しくない」とされているものを、自分なりの視点やセンス、愛情のありようで解釈し直して、笑い飛ばして、自分のパワーに変える。そういったやり方に、あたくし自身も大いに触発されてきたわけです。

 あたくしの場合は、早いうちからジャンヌ・モローに憧れていたのもあって、「3B」ではなく、「ババア」を加えた「4B」の方針をとっていました。もちろん、この「ババア」は褒め言葉ですわよ。

ババアになることのラクさ、楽しさ、パワフルさを自分なりに追求すること…。その具体的なやり方は、いままでに結構な頻度で書いてきましたし、もちろんいまでもそれは続いていますが、そのオリジナルな充実感は、あたくしの中のかなりの領域を確実にポジティブな色に染めていてくれるのです。

 新しく出した本『恋愛がらみ。』の出版に合わせ、3月に読者のみなさんとさまざまなお話に花を咲かせるサロンを開いたあたくし。テーマとしては「やり手ババア感あふれるマダム」だったのですが、2月にラブピースクラブで開いたトークイベントでお目にかかった方々、本当に久しぶりにお目にかかる方々、そして、初めてお目にかかる方々…すべての方に「サバイブするババア」としてのあたくしを見ていただけたことも大きな喜びなのです。

そんなあたくしの、ここ数年のお気に入り漫画のひとつが、『その女、ジルバ』(有間しのぶ:作/小学館)です。現在3巻まで出ているこの作品、小学館のサイトではこのように紹介されています。

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伝説のママ・ジルバの店 BAR  OLD JACK & ROSE―――終戦直後から夜の世界で生きてきたホステスたちの高齢BAR。ホステスの平均年齢は70歳以上。人生の酸いも甘いも知り尽くした女たちが最高のおもてなしで、常連客たちを迎える。そこへ飛び込んだ一人の新人・笛吹 新(うすい・あらた)、40歳。大手スーパーの倉庫で働く彼女は、恋人なし、貯金なし、老後の安心なしの崖っぷち人生。リストラで希望の職場も追われ、夢も、仕事も、結婚も、あきらめかけた彼女が、笑い、歌い、踊り、いつの日か忘れていた何かを取り戻していく。昼と夜、二足のワラジで働くことになった、見習いホステス・”アララ”。彼女のシングルライフに、どんな変化が訪れるのか!?

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 あたくしが最初にふれた有間しのぶ作品は『モンキー・パトロール』という作品。『フィール・ヤング』という月刊誌に連載されていました。安野モヨコの『ハッピー・マニア』目当てに手に取った「フィーヤン」で、『ハッピー・マニア』と同じくらいにハマってしまったのが「モンパト」だったのね。タイプのまったく違う3人の女友達の人生を描いた4コマ漫画…というとあっさりしすぎな解説だけど、ギャグ、ペーソス、ハッとするような人間観察などなど、さまざまな要素が絶妙にからみあった作品だったわ。

 今回の『その女、ジルバ』でも、有間の複眼的な目線は健在、というか、ますます磨きがかかっている感じです。人生の折り返し地点をすぎて、お先まっ暗だと絶望している主人公・新が、バイタリティも懐の深い愛情も売るほど持っているママ&大先輩ホステスたちに見守られ、導かれ、
「生き方なんて、どこでどう変えたっていいんだ」
「20年前、欲しくて必死だったいろんなもの。今 それら全て持ってるとは言えない。でもあの頃、思いもよらなかったものがそばにある。あたし達が20年後にまたそう思えますように」(ともに第2巻)
という、アララなりの新しい希望を見出す。40代のあたくしにとって、それは本当にうなずける言葉で、なんと言うか、自分なりに進んできた道にお墨付きをいただいたような気になったの。

 有間の「複眼的な視線」は、そのバーを開店した“伝説の女”であるジルバの人生や、ママや大先輩ホステスたちの若き日の人生にも注がれている。血縁ではない女たちのつながりが、若き日のジルバとママ&ホステスたちをサバイブさせ、現代を生きる40代のアララに、そのバトンが手渡されていく。また、ブラジル移民だったジルバ、実家が311以降を生き抜く福島にあるアララ、それぞれの“土地”をからめて、サバイブのバトンは大きく広がっていく予感を見せているわ。

 女が、水商売をすること。女を売ること。このポイントに拒絶反応を示す方も当然いるでしょうから、無理強いはしない。でも、あたくしは、「女たちは、血縁以外でも、何十年の長きにわたってでも、バトンを手渡していける」という大きなテーマに真正面から取り組む有間しのぶの作品に大きな勇気をもらったことは確か。あたくしもあたくしなりに、ババア渡世(ゲイだけど)を貫いていかねば、と気持ちを新たにしておりますわ!

●追記
前回、萩尾望都が出演した『浦沢直樹の漫勉』についてのエッセイでは、出典を調べないままいい加減な原稿を書いてしまい、申し訳ありませんでした。今後はより注意深く、書き手として当然の準備をして、原稿を書いていこうと思っております。

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