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No Women No Music Vol.4 メリッサ・エスリッジを聞け!

ほんま えつ2003.08.26

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東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が終わって、早1ヶ月経ってしまった。ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、私は今年この映画祭の日本作品のボランティアスタッフなどというもんをやってしまった! 観に来てくださった方々、多謝。そして、バックアップして下さったラブピースクラブの方々、いまさらですが本当にありがとうございました。LPCの支えがなければ、果たしてどうなっていたことか…。

何でまた唐突に映画祭の話題などとお思いでしょう? これをお読み下さっているなかに、映画祭での海外ガールズ短編集‘ミックス・スープ’というプログラムをご覧になった方も多々いらっしゃると思うのですが、そこで上映されたイスラエル作品『ウォッチング・ユー』ってのを覚えてますか?

っていってる私も、映画祭ではじめて見て、思いの他退屈しちゃって内容ほぼ完璧に忘れてるんですが…。ダラダラとスクリーンを見つめつつ、あぁやっと終わりだなんて思ったとき、どこかで聞き覚えのあるイントロが流れてきたのだ。そう、メリッサ・エスリッジの「ウォッチング・ユー」なのである。

この映画のステファニー・アヴラモヴィッチ監督は、この歌にインスパイアされて本作品を作ったんではないだろうか…とほぼ確信してしまえるくらい抜群のタイミングでエンディングにタイトルと同名の、メリッサの名曲を持ってきた。

メリッサ・エスリッジはアメリカでは絶大な人気のロックシンガー/ソングライターである。88年にデビューして以来、骨太で熱いアメリカンロックで人気も評価も高まり続け、92年にレズビアンであるということをカミング・アウト。これが圧倒的に支持されて、いまやアメリカンロック界ではビッグ・ネームの1人だ。

     「ウォッチング・ユー」はそんなメリッサのファーストアルバムに収録されているのだが、私はこのアルバムと89年リリースのセカンドアルバムを、リアルタイムでむちゃくちゃ聴きまくっていた。

メリッサを語る際に、よく引き合いにされるブルース・スプリングスティーンや、ジョン・クーガー・メレンキャンプ(みんな当時は大人気ね)といった、熱情的で誠実で正統派なアメリカンロック(私は大好きだった)、その男臭さ溢れるエモーションを、そのままメリッサのような姉さんに置き換えてみると、男臭さいといわれるような汗っぽい感じが、力強くて逞しいフェミの匂いへと変換されるのねってことに、いま気がついた。

メリッサのハスキーな歌声は、魂の触覚に響く。ひりひりと響く。90年にはたった1度の日本公演(@渋谷クアトロ)、ソールドアウトの会場で係員を拝み倒し当日券で入れてもらった。ずんずんと前方へ分け進み、ステージに手を差し伸べられそうなほど近くで体験した、メリッサの激しく熱く、そしてむちゃくちゃハートウォーミングだったコンサートは、いま想い出しても鳥肌がたつ。このライブを観に行ったことは、私の音楽ライフ史上でもかなりな自慢なのである。

   もちろんメリッサがレズビアンだったなんてことは、この頃全く知らなかった。彼女がカムアウトした頃は、クリントン大統領の下で、レズビアン&ゲイの人々にとってはちょっと追い風。そして何よりもk.d.ラングが、ひと足先にカムアウトして、土壌を作った背景もある。当時、メリッサもk.d.に“カミングアウトは素晴らしいわよ”とすすめられ背中押されたというような内容のインタビューを読んだ覚えがある。

にしても、メリッサ好きの私も、あんな男社会的なアメリカンロックの世界で…と、びっくりしました。でもすっごくうれしかった。心の底から、メリッサのカミングアウトに拍手した。その前後には、インディゴ・ガールズというこれまた骨太なアメリカン・フォークロックの実力派デュオがレズビアンのカミング・アウト、と続く。

カムアウト組女ミュージシャン達は、みんないまもってスゴイ人気である。CDの発売元もみなメジャーどころ。もちろん彼女たちの人気はなによりもまず、ミュージシャンとしての実力がほんとうに素晴らしいからなんだけど。そんな彼女たちにエンパワーメントされたたくさんのファンが、ミュージシャンたちを更に励まし支えている。アーティストとファンの間の与え合うエネルギーの相乗効果。もちろんここには、ライブの動員数とか、CDセールスといった消費経済効果があってこそ。この幸せな図式は、さすがアメリカといわざるを得ない。すばらしい。

メリッサの最新アルバムは『スキン』。これも名盤!この『スキン』作成前に、長年一緒に暮らしたパートナー(ふたりの間には子供もいた(体外受精))に振られてしまったメリッサ。‘Love Please’で始まるこのアルバムは、彼女のアーティストとしての、人としての誠実さがひしひしと伝わってくる。前へ進むには、自分自身を赤裸々にさらけ出さなければならないアーティストの業。ひたすら我が身をみつめる真摯さは、実は爽やかでポジティブなものなのだと気づかされました。

残念なことに、日本ではまだまだ知る人ぞ知るというほどの人気しかない。日本のレズビアンの多くがk.d.ラングは聞いていても、メリッサは知らないという人が多い(とおもう)。シェリル・クロウやボン・ジョビ、ブライアン・アダムスあたりが好きな方は、ぜひ聞いてみて下さい。土臭いアメリカンロックが苦手でも「テルマ&ルイーズ」のように車をぶっ放して飛びたい…っと思っている貴女も、ぜひいちど聞いてみて欲しい。公式ホームページも充実っす。

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ほんま えつ

ほんま えつ(ほんま・えつ)

音楽、映画、本をこよなく愛して生きる趣味人女。
小学5年生のとき同級生の友達宅で聴かせてもらった「クィーン」に感動。
以後、洋楽を貪り始める。初めて買ったLPレコードは「アバ」のベスト盤。
いまではこれぞと思った音楽はジャンルを超えてなんでもござれの雑食派。
本連載、約10年ぶりのカムバックです。

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