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モテ実践録(10) 新型コロナ時代からのシングル女性その1~外出制限、鬱鬱からの脱却方法

2020.04.02

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いまさら私がモテの連載で言う必要はないけれど、今世界は「新型コロナウイルス禍」の最中にある。いまや私の勤めている小さな会社でさえ在宅勤務や時差出勤を口に出しはじめたので、東京はロックダウン寸前であるかもしれない。日本では、震災発生時、単身世帯の女性が避難所に行くと、「見返り」として性交渉を求められる場合もあるというドキュメンタリーもあったので、買い占め(そんなことできる財力もない)と言われようが、少し多めにカップ麺を買っておくぐらいのことはしておく。

外出自粛と、こんなにまで言われるようになる前、私は新宿でお友達と待ち合わせした。彼女は私よりも少し年上で、同じくシングルである。普段はライブに絵画鑑賞にと忙しくしている様子なのだが、ライブも中止となり、美術館は閉館。海外での仕事も延期となり、一人きりで心が沈んでいると話していた。私も全く一緒で、2月初旬にフランスから帰国して2週間ほど具合が悪かったので、その間に「次の予定」を立てることができないままに自粛ムードに突入してしまった。日々、家に帰り、本を読んだり、映画を見たりする。本当であればこの連載や他の仕事をすまさなければいけないのだけれども、気持ちが鬱鬱としてしまい、集中できない。あまりに集中できないので会社を休んでMRIを撮りに行ったぐらいなのだが、細部に至るまで血管がクッキリ写っており、脳には支障はなかった。単に、一人きりで家に閉じこもっているうちに、気持ちがふさぎ込んでしまったのだ。

そんな私たち、新型コロナ禍によって引きこもらざるを得なくなり、鬱鬱としてしまっているという同じ悩みを持つ独身女性二人は新宿で集まり、満員のタイ料理店でムシャムシャと美味しいものをたらふく食べた。そうしているうちに、どうして「一人きりで生きていけそう」と言うとモテないのかを真剣に話し合ったのである。

私たちの場合、とりあえず一人で生活する分には困らない程度には収入があるし、一人きりで飛行機に乗った旅行には行くし、ご飯も一人で行くし、自分の好きなライブにも行く。そうこうしているうちに、「俺がいなくても大丈夫そう」「一人で生きていけそうだから」とフラれる目に何度もあってきた。

けれども、モテないとしても、そうした、自分の意思で行きたい場所に行き、触れたい文化に触れたいという心は変わらない。住む国だって本当は自分で決めたい。自分一人で自立して生きていきたいという気持ちは変えようがないのである。

それでも、やっぱり、モテたい!!! 諸外国のように、新型コロナウイルス感染を回避するために3人以上の集会が禁止なら、家に誰かがいてほしい! 今のような時期だと、もっと切実に誰かがそばにいてほしい! 家の中で会話をしたい! 友達でもいいけれど、トキメキもほしい! 

そんな人はどこにいるのかねえ、などと話して、一度結婚を経験したバツイチを狙うといいとか何とか話しているうちにデザートの皿も空となった。

彼女と話をしている間、思い出したことがあった。

去年、親の具合が悪かったので、少しの間だけ実家にいた。田中角栄のおかげで新幹線は通っているものの、駅前から閑散としている田舎町だ。これ以上家族の具合が悪くなったら、当然お前が仕事を辞めて実家に帰るんだよね、と祖母が言う。親は、仕事を辞める必要はないと言いながら、「●●ちゃんも◯◯ちゃんも実家に帰ってきて、子どもがいて、家がある」と話して止まらない様子だった(私は、とりあえず仕事だけは辞めてはいけない、地元に帰ってはいけない、と改めて決意を新たにした)。

お見舞いなどで、普段は離れて住む家族のメンバーが集まると、どうしても家事をするのは私の役割となった。一人暮らしも十数年目に突入し、すべてを外食ですませるまでには暇があるので、私はもちろん普段から自炊をしていて会社にお弁当を持っていくことも多い。食事を準備するのに、私の慣れた手つきを見て、祖母は「いつお嫁に行ったっていい」と言った。その後、家族の何人かがそういうことを言った。実家では、自分の生活のために蓄えた能力は、お嫁に行くための、誰かのための能力だと見なされていた。しかし、現実には同じような理由で私たちは煙たがられている。それはとても不思議なことであると思う。

ところで、家にいる間、映画「テッド2」を観た。これはテディベア人形に命が吹き込まれる……(も、その人形と大麻吸いまくりの人間が主人公)という大ヒット作「テッド」の続編であるのだが、その大部分が法廷劇になっていて、意識を持ったテディベア人形であるテッドには人権があるのかどうか、ということが、法的に長年「所有物」とされていた黒人奴隷と比較されることで議論されていく、という真面目な話も、ほんの一部含まれている。

私が印象を受けたのは、本筋とは別のところで、前作で彼女と結ばれた人間の主人公が本作では離婚後半年を迎えており、テッドがふとしたきっかけで目にした主人公のパソコンにはポルノ画像・映像が大量に保存されているというシーン。主人公(薬物でハイになっている)は「誰かに止めてほしかった」と号泣し、テッドと二人でハードディスクごとパソコンを破壊する。テッドは、お前は早くガールフレンドを探すべきだと主人公に言う。

しかし、ガールフレンドというのはパソコンのポルノ画像の単なる代わりなのだろうか。性欲を満たすためだったら、ポルノ画像で十分だったはず。これに関しても、実は映画内で答えが用意されていて、主人公はなかなか相手を見つけ出すことはしないが、物語の終盤、同じ目的を持った、一緒に努力した女性と、次第に心を通わせていく。全体としてはくだらない内容の映画ながらも、私は唸ってしまった。

しかし、外出が制限される中、どうやって同じ目標を持った、一緒に努力できる相手と出会えるのか。何か、即効性のある、鬱鬱からの脱却を切に求めている。『アンネの日記』には冒頭、キティと名付けられた日記に向けて、アンネが秘密を打ち明けるという決意表明がある。アンネが今に生きていたら、そしてユダヤ人迫害などなかったら、アンネは家に閉じこもり、通販でセックストイを買ったと日記に書くかもしれない。一人きりで生きていかないために一人に慣れすぎてはいけないと人は言うけれど、やっぱりちゃんと一人で完結していたいとも思うのである。

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(沼ZINE主宰)

沼ZINE主宰。https://numazine.themedia.jp

大学4年生の夏、内定が出ず定員割れの交換留学に申し込む。翌年、全く話せない状態でドイツへ向かい、毎日サービスデーのバーを回る「居酒屋ドイツ語」と呼ばれる勉強法で語学を習得。帰国後、大学院を経て都内の出版社に勤務しながらドイツ語翻訳を行う。2018年、友人とウェブマガジン「沼ZINE」を開始。趣味は映画・演劇・美術鑑賞、へっぽこ旅。

翻訳したドイツ語コミック「マッドジャーマンズ 」が第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品、第4回日本翻訳大賞二次選考対象作品に。

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