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モテ実践録(30)セネカ『人生の短さについて』自分をないがしろにする習慣から脱却したい

黒川 アンネ2022.11.17

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前回の原稿を掲載いただいた10月1週目、私はついにコロナに感染してしまった。近所のお家でご飯をごちそうになって、次の日、ご家族が発熱したと連絡をもらって私も急いで検査をすると、翌日、携帯に陽性との連絡が来た。少し前から在宅勤務になっていたのでそのまま家から出ずに解熱剤を飲んで仕事を続けることにして、パソコンの前とベッドとを往復し、食欲が出ないのでスポーツドリンクをすする。熱は2〜3日で一度下がったが、今度は咳が止まらなくなった。私は「コロナって、熱が出てもすぐに下がるんでしょ」と思い込んでいたのが、いざ自分がかかってみると、一度熱が下がっても喉が痛み、今度はまた熱が出て鼻水が止まらなくなるというように、日々変わる症状に戸惑い続けた。夜は咳と痰が止まらず全く眠ることができず、陽性判定から1週間の自宅待機が終わる頃には左耳は全く聞こえなくなり、そして声が全く出なくなってしまった。

自宅待機期間が終われば病院に行ってよいとのことだったので、すぐに耳鼻科に駆け込んだが、耳と鼻と声帯付近がすべて炎症を起こし、マイクロスコープで声帯付近を見ると真っ白になっている。それから1週間以上抗生物質などを飲んでようやく体調が回復したと思いきや、すぐにまた発熱して今度は扁桃炎との診断で薬を再開した。さらに、時を前後して会社の都合で仕事を辞める必要が出たため、10月末で退職することになった。さらにさらに海外の友人が突然家の前に現れたり、今学期いっぱいで単位が取れなければ退学になってしまう通信の大学の課題に追われたりして、混乱のうちに(そして声が出ないままに)10月が終了し、無職生活に突入したのである。

おまけに、そうよ私は蠍座の女、であるので、10月末に35歳になった。一つ年上の友人から「私たちって中年かな」と聞かれたけれど、私の場合は研究していた作家へのあまりの思い入れから自分も34歳で死ぬと強く思い込んでいたため、35歳を迎えたことに激しく驚き、ハッと気がつけばこんな年になっていて、仕事もなく、華々しいキャリアもなく、目標もなく、人に好意を抱いても全くうまく行かず、おまけに体調が回復せず声が出ないままに誕生日を迎えて、正直、時の流れに対してストップをかけたい気持ちが湧いた。この先、どうなるんだろう。わかっているのは、未来は未確定ということだけだった。

さて、有給消化からの無職生活に突入し、やるべきことはたくさんあるのだが、時間がたくさんあるという予断、そして、まだ体調がなかなか回復しないために、最初のうちはずっと蒲団の中で過ごしていた。そのうちゴミ捨てだけで息切れをするほどの体力の落ち方にがくぜんとし、散歩をするように心がけた。秋晴れの日が続き、毎朝洗濯を干してから外に出る。公園にも紅葉の葉っぱが舞い、それを見ていると、大好きなリルケの「秋の日」という詩の、「家を持たぬ者はこの先も家を建てることなく、ひとりの者の孤独は長引く」という一節を思い出して心が締めつけられた。私はやっぱり孤独なのだ。そんなあるとき、自宅付近のグーグルマップを見ていると、自宅から徒歩30分ほどのところにOKスーパーがあることに気がついた。

OKというのは、ジェーン・スーさんのラジオの企画「スーパー総選挙」でも1位に輝いたスーパーなのだが、行ってみると確かに品数が多くて新鮮で安く、ホカホカの大きなピザなど1枚500円ほどで買える。その魅力に取りつかれ、特に用事がなくても定期的にOKへと散歩に行くようになったため(お金がないので大量には買わない)、体力も徐々に回復してきた。

そして、暇になって、そして予期せず35歳を迎えてしまった私が気がついたのは、いかに自分をないがしろにしてきたかということである。いつも時間に追われて、せかせかして、飲み込むように食事をし、お茶を淹れる余裕もなく、部屋は汚いままで植物は枯れ果て、言葉は軽く表面的で、着ている服もそして自分の身体もどこか薄汚れていることに気がついた。

その顕著な例に、夏頃に下着でかぶれた結果、お尻に数カ所残ってしまった真っ黒い傷跡のことがあった。「お尻、どうにかしよう」と思い立ち、お尻専用のスクラブの入った石鹸で洗い、十分に保湿して、さらには皮膚科で薬をもらった。これまでは爪さえ伸びっぱなしになるほどで、お尻にまで気を配れなかったのだ。傷跡は少しずつ薄くなってきた……らいいなと思っている(まだ黒々とある)。

さらに連日のOK通いのおかげで体力が回復するにつれて、本を読もうという気持ちにもなった。最初に手にとったのは、高校を卒業するときに担任の先生がクラス全員に配ってくれたセネカ『人生の短さについて』である。「先生が本をくれたときは18歳だったのに、もう気がつけば35歳になっちゃったよ」という思いから手にとった。高校を卒業して何年か経った頃に、同窓会のようなものがあって、そこでこの本をきちんと読んでいたのは私と、ちょっと変わり者のNしかいなかったように記憶している。彼は20代前半で亡くなってしまったので(おまけに亡くなる日に私にメールをしてきていた)、なんだかずっと開くことのできない本だった。

今回、読み返して、表題の文章が実はある人に向けられて書かれたものだと気がついた。彼は、公務員として激務にあたり、ただ、正当な評価を得られずに今は職務から離れている身分のようだ。セネカは彼に対し、

「苦労が多く絶間のなかった幾つもの試練をとおして、君の徳性はすでに十分に証明されている。君の徳性が有閑の生活のなかで、どんなに振舞うかを試してみるがよい」(岩波文庫、p.51)

と語る。これを私は、今の自分に向けられた言葉のように感じた。
今回辞めることになった仕事もその前の仕事も、短期間で辞めることになったが、私は一生懸命にやってきたのだ。落ち込んだりもしたが、私は35歳になる現在まで生き残り、今は暇な時間に向き合っている。

もちろん将来のことも考えなければいけないけれども、まずは自分がしたくなることをじっくり観察し、感じてみたいと思った。今のところ私は有閑の中で、散歩途中に美しい景色を眺め、次々と浮上する忘れた過去の記憶に苦しみながら向き合い、そしてお尻をケアしては自分をないがしろにする習慣から脱却しようとしている。

コロナに失業に失恋に勉強に、さらにある人に噛まれた首が今めちゃくちゃ痛いのだが(35歳で人に首を噛まれて悶えるなんて、誰が想像したでしょう)、何がなんだかわからないぐらい次々といろんなことが起こっている現在の変化の時期の意味が、いつかわかる日が来たらいいなと思う。

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