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モテ実践録(31)他人がゆでてくれたパスタ

黒川 アンネ2022.12.14

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まず告知です!
12月17日(土)午後7時から、名古屋・金山にあるTOUTEN BOOKSTOREさんでイベントをしていただけることになりました。

詳細はこちら!

対談相手をお引き受けくださったのは、佐々木ののかさん!!! 様々な家族の形態について取材した『愛と家族を探して』も『自分を愛するということ(あるいは幸福について)』(いずれも亜紀書房)も、私は佐々木さんみたいに可愛くないものの、人に愛されることを求めて傷つき、自分をケアする方向に向かう姿を「自分じゃん!!!」と思いながら拝読してきた。当日は、家族や友達や子どものことなど佐々木さんにぜひお聞きしたいと思っている。録画配信もあるので、金山に行けない方もぜひお申し込みください。私は最近買った、胸元に深いスリットが入っている黒のスパンコールドレスできらびやかに会場入りするつもりです(佐々木さんはオンライン参加です)。

失業して1カ月以上が経過し、やっと1回目の失業手当12万円が入った。新卒からずっと切れ目なしに企業をわたりあるいてきたため、失業保険の仕組みをよく認識していなかったが(本当は働いている間に制度を学ぶ機会があったらよかったと思う)、私の場合は会社都合退職だったため自己都合退職よりははるかに短い1週間ほどの待機期間のあとに、それまでの収入を加味した金額の、1日あたりの支給金が決まった。そして4週間ごとの支給がされる間に最低2回の就職活動をノルマとして課され、支給前にはハローワークで面談し就職活動の状況について報告せねばならない。それにしても4週間で12万円、私は家賃7万円の部屋に住んでいるので、固定費を払うだけで飛んでいくような金額だ。それでも「お金がないから」と家にばかりいると容易に気が狂ってしまうので、親からお金をもらい、貯金を崩すことで、空に舞うビニール袋のように毎日遊び歩いている(揚げ句、アメリカに行く航空券も購入した)。

前回の更新でも10月からの荒波の日々(失業、コロナ感染、失恋)についてはちょっと書いたけれど、その後も激浪の日々が続いているのでメモのようにその一部を書き残しておきたい。

10月に新型コロナウィルスに感染し、後遺症が長引いて家から出られずにいた頃、長年親しくしてきた友人が看病をしてくれ、私は以前からの(友人としての)好意もあって一気に気持ちが持っていかれてしまった。しかし、その好意は、その人の人生に無理に介入するほど強いものではなかったので、というか、そうやって自分に言い聞かせることでその気持ちにふたを閉めた。ふたを閉めたはずだったのだが、行き場所を失った感情のエネルギーは、まるで地中のマグマが地面を揺らすように私を揺さぶり、私は自分の思いを朝までかかって1万数千字の文章にして本人や友人に送るという迷惑行為をしたり、揚げ句、誰でもいいと思って適当にその辺にいた人と寝たりした。相手の名前すら忘れたし全然気持ちよくもなかったが、家に帰ると、頭がおかしくなりそうなほど沸騰しそうな感情のエネルギーが少し収まったことを感じた。どんなに否定されても、これは自分に必要なことだったんだと思った。

それから新しい男性の友人と頻繁に飲みに行くようになったが、夜に待ち合わせたある日、その日は朝から雨が強く、私は用事があって午前中から外にいたので身体が冷え切っていて、今思い返すと体調が悪かったんだと思う。飲みすぎたこともあって、一緒に電車に乗っているときに、すでに私は記憶がなかったのだが、あとで聞いた話だと、私は急に「気分が悪い」と言って停車駅で外に出てホームドアに向かって吐いたらしい。電車のホームで何度か吐き(JRの方々、申し訳ありませんでした)、その場で言い争いになったような記憶がうっすらあるが、そんなこんなで貴重な飲み友達をも失うことになった(また飲もうね).

そんな折、たまたま別の知人の家に呼ばれると、知人はニョッキをゆでて、別に買ってきたミートボールと合わせて、市販のソースにからめて出してくれた。テーブルにニョッキと、それから缶ビールだけの食事だったが、私は、自分が必要としていたのは、この〈他人がゆでてくれたパスタ〉じゃないかという気がしてきた。温かくて、きちんと味がするもの。私は料理がさほど得意ではないのもあって、自分でパスタをゆでても空虚な味がする。会話をしながらゆっくりニョッキをフォークで口に運んで、缶ビールを一口飲んで、こんな時間がずっと欲しかった気がする。そしてそれは永遠に続かなくてもいいのだ。たとえ一時でも、こんな時間があれば、そんな時間が存在すると私はこの先も信じられる。

さて、私がまだ失恋直後で暴走していたときに、突然、女友達が家に遊びに来て、「やっぱり候補を増やさなきゃだめだよ」と言って私の携帯にマッチングアプリをダウンロードし、写真を撮っては可愛く加工して(背景の本棚がゆがんでいる)、プロフィールの文章まで書いてくれた。「お願いだから1人会ってみて、会ったら消してもいいから」(こんな良い友達いる????)。

ということで1人会い、2人会い、今週末には3人目に会うのだが、彼氏を作りたいのかは全然わからないものの人間観察としてとても楽しんでいる。アプリについてはまた次回の更新で書きたいと思うけれども、気がついたのは、いかに自分が普段同じような傾向の人たちとしかつるんでいないのかということでもある。友人と話すときは、映画や本や、昨今の政治事情など何時間話しても話題はつきないのに、アプリでマッチングした相手とチャットしたり会ったりすると、「マッチングアプリ 話題」と検索してしまうほどに共通の話題がないし、男性の傾向として、全く私に質問を投げかけてこない。友人に話すと「男性の『スルー力』はすごい」と全力で同意していた。

たとえば私は「レディ・ガガのライブに行った」「インドに2回行った」と話したが、そこから全く会話に結びつかない。少しは話題を掘りさげてほしい。この世には、仕事と家の往復で、家でもぼうっとしている人がたくさんいるんだと思い知った(いや、私も寝てばっかりいるんですけど)。趣味があるとして、NetflixやAmazon Primeを見ているぐらいだ。

思い返すと、私の父親も全く趣味がなく、一緒に食事しても私が聞いたことに答えるだけで私に何か聞いてくることはしない人間なのだ。家父長制でチョウよ花よと持ち上げられているうちに、男性(特にまだ独身の男性)の会話能力は退化してしまったんじゃないかと思う。

しかしそうした観察を含めて私は楽しんでいるということで、今回もやっぱり彼氏はできないんじゃないかと思う今日この頃なのだ。

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