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モテ実践録(14)三浦春馬なき世界で

2020.07.27

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ここ数日、あるいは数カ月、全く元気がわかない。
さらに今週は、出演ドラマを見たことが一切ないのに三浦春馬氏を思って、これまた、ほぼ聞いたことのなかった米津玄師の「Lemon」をリピート再生して涙をほろほろ落とす日々(母の口癖は「お母さん、アンタには三浦春馬くんみたいな人と結婚してほしいなあ」だった。無理である)。
あんな才能のあるイケメンでも世を去ってしまう(インドでも若手人気俳優が亡くなった)……なんという時代なのだ。友人は、三浦春馬のような将来を嘱望されている人でさえ自ら命を絶ったので、それほど嘱望されていない私たちは生きていてよいのかと疑問が湧くと話していた。
うんうん、その考えを否定したい気持ちもわかるけれど、その思考回路はすっっっっごくよくわかる。

そこで私もネガティブな気持ちから距離を取るために、極力ニュースを目に入れないようにして、日々、さくらももこ原作アニメの「コジコジ」を見て過ごしていたが(電気グルーヴによるエンディングソングが素晴らしい)、それでもふとした瞬間にYahoo! ニュースが目に入ってしまい、芸能関係者の言葉として、本人はしばらく前から悩んでいる様子だったので、希望していた年単位の留学に行かせればよかったのに、と書いてあった。

ところで少し前に私はお昼過ぎのすし屋へランチに行き、そこでかかっていたテレビで「徹子の部屋」をぼうっと見ていた。画面には光浦靖子さんが映っていて、実はカナダに留学予定だったのがコロナで中止になってしまったと話していたのだ。
ほかに、私の友人も同じような状況になっていて、留学のために仕事を辞めたけれど、オンラインで授業に参加しているらしくまだ日本にいる。つまり、従来のような留学も(私の10年前のドイツ留学は「遊学」であり、もっぱら飲み会やパーティーで語学を覚えたのだけれど、それはなおのこと)今では難しいものになってしまった。

上記の「芸能関係者」によるコメントを読んで、私も、自分の抱えていたこのモヤモヤ? が何なのかに思い至った。つまり、私は、「いざとなったら留学しよう」と思い続け、実はひそかにこの春にもドイツの大学の冬学期入学に出願しようと考えていたのが、こんな状況になってしまったので退路を断たれたように感じていたのだ。
おまけに、この連載のテーマの「モテ」、つまり、自分のことを理解してくれる人と家庭を築く(あるいは関係性を深める)、という目標は、知らない人とリアルな場でひょっこり出会うことがほぼ不可能である今(そしてアプリですら面倒と感じる自分にとっては)、もはや空前のともしびである。

仕事も、詳しくは書けないけれど、ジェンダー由来の問題で日々いら立っている(この期間に『フェミニスト・ファイト・クラブ――-「職場の女性差別」サバイバルマニュアル』(海と月社、2018年)を読んだ。職場の問題に対し女性同士で共闘せよ、と具体的な方法が提案されているが、私の今の状況だと、「従順な女性」と「そうじゃない女性(私)」が分断され、絶えず比べられているような状態なので、女性同士が協同して構造的な不均衡に争うということは全く不可能なのだ)。

目標(モテ、あるいは留学(その先の現地でのモテ))は消え去り、日々、職場ではクタクタになって、帰宅後は「コジコジ」を見てご飯を食べて携帯を見て寝る、という、食事睡眠排泄の繰り返しのような生活になり「私、何のために生きているんだろう」という疑問が現在進行形で重低音のように続いている。今まで「モテ」という目標のために、どれだけ自分にモチベーションが付与されてきたのか、ちょっとビックリしては、ここまでノンキにやってこられたのは自身のモテ信仰によるものだと感謝した。

実は、緊急事態宣言が終わり、まったく何もなかったわけではなかったのだが、自分の中でものすごくモテに対するモチベーションが下がっていて、それよりも日々の生活をどうするかのほうに意識が向かい、何の進展もなかった。よく会ったり連絡を取ったりしていた人がいたので、友人には「他の人に取られる前にきちんと付き合ったほうが良い」と言われたものの、そのままにしている。さらにそうこうしているうちに、古い知り合いから会いたいと連絡が来たのだが、返事すらしていない。

コロナ禍をやり過ごすには、今の私の能力や気質からは、一人でいるというのは大きな利点だと自分で感じているからなのかもしれない。面倒を見なければいけない子どもも、機嫌をうかがわなきゃいけなかったり、気をつかったりしなければならない相手(言いかえれば、私が振り回してしまい迷惑をこうむるであろう相手)もいない。

どうしてこんなに何事に対してもやる気がないのだろう。せめて何か心のキラメキを取り戻そう……と、この連載1回目にあったように私はシャネルに飛び込み、3000円のマニュキュアを買った。確かにキレイだ。キラッキラしている。自分のぷにぷにした手が若さの象徴のように思えて、うれしくなる。しかし、モヤモヤは晴れない……。
と、混乱状態なので、カラーメイクをして、YouTubeに動画をアップし、あるいは人前で歌うなど、何でもやってみた。それでも、まだ答えは模索中である。

もうずっと前から常に、私は、「どうして自分は他の人のようにはできないんだろう」と思い悩んでおり、その大きな一つの要因が結婚や出産(しかし同時に、他の人とは違う自分について可能性を感じていたりもするから厄介だ)だったが、つい最近、興味深いドイツ語の記事を見つけた(ここから少しだけためになる(?)情報が始まります。お待たせしました)。

日本では、モデル家庭は父・母・子2人であったと思うけれど、ドイツではそれが長年、父・母・子3人であったらしい(1960年代のドイツの出生率は2・5人、70年代以降低迷したが2016年には1・59にまで上昇した)。しかし、それは虚像でしかなく、2011年の調査によればドイツ国内の41%が単身世帯であるという。北部のハンブルクでは、この数字は54%にもおよぶ。しかし、これは私のような「未婚」と呼べる若年層だけでなく、単身者の34%は64歳以上である(Stern, 2019年11月14日)。つまり、ドイツでは単身者がモデル世帯となりつつあるのだ。

この数字を日本でも見てみよう。

2015年の国勢調査によると「単独世帯」は約1842万世帯、2015年時点で全体の世帯数に占める割合は34・5%だ。日本全体の世帯数は2032年に減少すると言われているが、単独世帯は2032年まで増加し、2040年には全体の39・3%になると見られている。ドイツと同じく、単身者の32・6%が65歳以上だ(総務省白書、平成30年度版による推計)。

ちなみに生涯独身率は2019年時点で男性が23・37%、女性が14・06%。生涯独身率だけを見れば(正直なところ)「ううう……私は14%に含まれるのか」と思ってしまうが、これも40人学級20人が女性だと雑に前提として試算すれば、20×0・14で2・8人。クラスに3人。うん、私はその中に入っている。計算上、他に2人いる(実際には、高校のクラスメートで未婚の女性はもっといる、はず)。

さらに単身者の人口に占める割合(1842万世帯÷全人口1億2430万人=約22・9%)によれば、クラスの女性だけでも20×0・229=4・58人! 増えた! 20人中4~5人が一人暮らしである(となる)計算になる。そう思うと、怖くない。「みんな結婚していて……」とは言い切れない。

普段、低収入なので買ったことがない「日経WOMAN」(7月号)を何となく購入すると、特集は「コロナ後はますます必要! 35歳からは『ひとり力』を極める」だった。見渡せば、ひとりの生き方については多くの指南書があると気づいた。まずは同じ7月号の中から「モノが多くても毎日整う部屋をつくる」を実践したいと思っている。

この、ひとりへの覚悟のほかに、もっと具体的に現在の私が抱えているこの気持ち――つまり、途方もない自分に対する「見失った感」について、同じ気持ちを抱いている人がいたらなあ……と希求していたところ、以前、コロナ禍下の「生産力信仰」について痛快なコラム(拙訳→https://numazine.themedia.jp/posts/8080207)を執筆していたドイツのジャーナリストのユリア・コルビックが、「コロナによって広がる不安――私がまだ日常に準備ができていない理由」(This is Jane Wayne、6月23日)というものを寄稿していた。

彼女は一人で暮らし、淡々と仕事をこなしていたというが、ドイツで社会活動(彼女いわく「生産性モード」)が再開される頃に突然にパニックに陥った。「ストレスを感じ、こう思った。助けて! 私はまだそれを望んでいないのに」その後も彼女は恐る恐る外出し、友人と距離を保ったまま屋外で会話を楽しみ、少しずつ、日本語で言う「新たな生活様式」を試みている。

さらに彼女はこう書く。「――きっと、この時代でもっとリラックスできるようになれるだろうと、私は確信している。でも、今のところ、私は学びのプロセスの中にある。ほぼ毎日、私は自分に問いかける。何をすると私は満足? どこが限界? いつ自分で『ストップ』をかけるべきかな? ……私は、思っていたよりもずっとゆっくり、でも着実に自分のまゆから外に出ている」

そう、私も今、幼稚園児のように、新たな生き方のルールを模索し、学び、そしてユリアのように自分の感情の変化に戸惑い、自分にいちいち問いかけながらも日々を過ごしている。
それは、ストレスを伴う作業であろう。
当然だ。
戸惑うのも無理がない。
でも、果てしなく続く荒野のような現在の視角から、ずんずんと進んでその先に何が見えてくるのかは楽しみでもある。

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(沼ZINE主宰)

沼ZINE主宰。https://numazine.themedia.jp

大学4年生の夏、内定が出ず定員割れの交換留学に申し込む。翌年、全く話せない状態でドイツへ向かい、毎日サービスデーのバーを回る「居酒屋ドイツ語」と呼ばれる勉強法で語学を習得。帰国後、大学院を経て都内の出版社に勤務しながらドイツ語翻訳を行う。2018年、友人とウェブマガジン「沼ZINE」を開始。趣味は映画・演劇・美術鑑賞、へっぽこ旅。

翻訳したドイツ語コミック「マッドジャーマンズ 」が第22回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品、第4回日本翻訳大賞二次選考対象作品に。

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