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TALK ABOUT THE WORLD フランス編 奇妙なロックダウン

中島さおり2021.04.08

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新型コロナの第3波の勢いにブレーキがかけられず、とうとう4月3日土曜日の夕刻から、フランスは第3次全国ロックダウンに入った。先立つ3月20日にパリを含む16県、翌週にはさらに3県の地域をロックダウンしたが、感染者数の増加はおさえ込めなかった。
そもそも今回のロックダウン、今までのような「外出は1時間以内、1キロ以内」というような厳しい制限がなく、朝6時から夜7時の間であれば、10キロ圏内なら何時間でも外出できる。外出時間や目的を記載しためんどくさい証明書も特別なことがない限りは携帯しないでいい。飲食店以外にも「生活必需でない」店は閉鎖されるけれども、店ばかり閉めてもどれほど効果があるのだろうか。
春の訪れとともに、ピクニックができるようになり、テイクアウトの飲食物を持って、公園や河岸に集う人の姿が目立つ。かくいう私も、2月の休みにはパリでラーメンをテイクアウトしてパレ・ロワイヤル公園で食べた。まわりにはたくさん人がいて、これならカフェもテラスくらい開けても同じじゃなかろうかと思った。ずっと発令されていた夜間外出禁止令だって、守っていない人は多い。こっそり夜の会食(自宅)をしたりしている。
また当初16県に限ったため、予想されたことだが、ロックダウンの前日には大量の人が「自由地帯」に流れた。こういうのも感染を広げないのだろうか。
そんなふうに思っていたから、地域ロックダウンで効果が薄く全国に広げざるを得なかったのは納得できる。が、全国的に行われるのもまた、この奇妙な(緩い)ロックダウンである。

コロナ危機で最初の外出禁止令が出て丸1年、はじめは毎晩、医療関係者に拍手を送ったりして、それなりに協力的だったフランス人たちも、そろそろ飽き飽きしている。
第2次外出禁止令が出て以来、カフェやレストランはずっと閉まったままだ。今年に入ってその外出禁止令が解除されても、飲食店は再開できなかった。劇場や美術館などはそもそも1年前から閉まったままだ。こうした関係に従事する人たちの困窮はいかばかりかと思う。カフェの室内テラスはクマのぬいぐるみの天下となり、各地の劇場は、関係者が占拠して抗議の砦と化した。

私自身は、パリを離れ、南仏で高校教師をしているので、3月中のロックダウンは免れたし、昨年秋の第2次ロックダウン中も通勤していた。第1次ロックダウンで学校を閉めた弊害が大きかったため、秋以来、学校を閉めないというのがフランスの大方針になり、周辺諸国が次々学校を閉鎖するなか、絶対に閉めないと頑張ったのだ。たしかに、昨年3月から6月まで、授業が行われなかった影響は大きく、リモートなり自習なりで学習を続けられた生徒と、それができなかった生徒とのレベルの格差には愕然とする。自習ができるかどうかは、高校生なら個人の自立度に拠ると言えるかもしれないが、低年齢になればなるほど、親が勉強をみられるかどうかに左右され、格差を助長する。これは対面授業を続けなければならないというのが教師たちの一致した意見だ。
親たちも、子どもに家にいられては仕事ができないので、なるべく学校には開いていてほしい。そのため、第2次外出禁止令の時は幼稚園から小中学校は全面的に開校、高校では1クラスを2グループに分けて、週交代で出てくるようにして応じた。私の勤務校では外出禁止令が解除になっても、この交代制を続けていたので、学習の進度が遅れて困るけれど、それでも全部なくなるよりはいいと思っていた。昨年に続き、今年もバカロレア(最終学年で受験する高校卒業資格=大学入学資格試験)の試験はなくなり、平常点で資格を与えることになった。
昨年、最後の3カ月、授業がなくなりバカロレア試験も中止になって上級学校に進学した学年は、大学も、始まった途端に第2次ロックダウンで閉まってしまい、気の毒なことになった。リモートではなかなか学習がしづらいうえに、人にも会えず小さな学生アパートに閉じ込められた学生の中には自殺を図る者も出た。そのためか、ようやく再開した隔週での対面授業を取りやめにすることもできず、大学も申し訳程度に続いている(第3次全国ロックダウン以来、週1回のみ対面授業)。

ロックダウンの弊害があちこちで出てきた今、あまり厳しい制限は、反発を招くのでできないのではないか。

しかし新型コロナの患者層は初期に比べると低年齢化し、小中学校で大きく感染が広がってしまった。第3次全国ロックダウン直前の金曜日時点で、すでに全国で1万1000以上の学級が閉鎖していた。ちなみにその1週間前には3256学級だったのだから、緊急に全学校を閉鎖しなければならなかった理由がわかるだろう。幼稚園や小学校の低学年は、マスクもしないで走り回っているし、1人でも感染者が出たら学級を閉鎖することにしたため、学校や保護者の混乱も招いた。全国的な学校閉鎖は最後の手段と最後まで渋った政府も、とうとう観念して全国的ロックダウンとともに、3〜4週間、学校を閉めることにしたのである。4月6日からの1週間はリモート授業にして、次の週からは2週間の復活祭休暇、幼稚園、小学校はその後再開するが、中高は休暇後ももう1週間リモート授業だ。

今週、一斉にリモート授業が始まってみると、なんのことはない、学校で推奨されているCNED(国民教育省の通信教育機関)のリモート・プラットフォームは接続過多でうまく機能しなかった。昨年は初めてのことでしかたのない面もあっただろうが、この1年、インフラが特に強化もされてこなかったことが判明して、教員はまたぞろ、宿題を送っては自習させるだけの旧式の「通信教育」に戻らされている模様だ。私自身、昨日はCNEDにアクセスができなかった。うまくいかないときのために Zoomが使えるように保険をかけておいたからなんとかなったけれども、学校ではZoomを使うなと言われているので、内緒の話である。

フランスも迷走しているのだ。感染の勢いが弱まること、その間にワクチン接種が広がることを期待しての第3次全国ロックダウンだが、どうなるのだろうか。生徒と教員に優先的にワクチン接種するという話もメディアでは聞くが、実際に教員に案内がきたという話はまだ耳にしない。70歳以上の高齢者はすでにワクチンを受け始めていて具体的な話も聞くが、一方で、なかなか医者のアポイントが取れないという人もいる。予定通りであれば、60歳以上は4月半ば、50歳以上は5月半ば、そして6月半ばからは18歳以上の人口すべてに開かれるというのだが。

ロックダウンとワクチン、これがうまくいかなかったら、「ずるずると学校を閉めなかった。ワクチンに遅れが出た」と、現政府は責められ、マクロン大統領の未来にも暗雲が立ちこめることだろう。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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