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ラブピの生理キャラバンレポート。10代の子と話した生理の話と日本のジェンダーギャップの現実

北原みのり2022.08.26

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 夏、いかがお過ごしですか? 連日の猛暑を生き抜いたみなさん、お元気ですかー。

 先日、スタッフ3人と、都内某所にある児童養護施設で、「生理キャラバン」をしてきました。施設の中に小さなお店風の場所をつくり、子どもたちが自由に出入りできるようにしてもらい、生理の悩みを聴いたり、生理用品の紹介をしたり、デリケートゾーンの洗い方を伝えたり、生理に関する本を紹介したりするものです。

 月経カップ、布ナプ、吸水ショーツ・・・日本で売られていなかった生理用品を、ラブピースクラブは最初に日本に紹介してきた会社だと思います(自慢しても、いいですよね!)。なぜ生理用品にこだわるかといえば、どんな生理用品を使うかで、生理中の生活が変わる! ことを実感しているから。生理の貧困とは生理用品が買えないというだけでなく、生理に関する情報がないことでもあります。だからこそ子どもたちに、生理に関する情報や、生理用品に触れてもらう機会になればという思いで「生理キャラバンさせてください」と少し前から様々な箇所に提案していたのですが、その中で引き受けて下さったのが今回、お邪魔することになった都内の児童養護施設でした。

 児童養護施設は様々な事情で保護者と離れて暮らす子どもたちの生活空間です。施設にもよるかもしれませんが、性に関することや身体に関する知識については、専門の先生を定期的に招いて個別の面談を行っていたりなどしていて、「親から教わるしかない」子どもたちよりも知識はあると思う、ということを事前に伝えられていました。そういう中で私たちに何ができるかしら・・・と考えながら、まずは楽しめる場所、生理のことを気楽に話せる場所、を目指しました。

 そして・・・結論からいえば、いやー、楽しかったー!!!!のです!!!

   私たちとしては初めての試み、施設の人にとっても初めての試み、そしてもちろん子どもたちにとっても初の試み。どうなるの? と緊張していたのですが、さすがそこが「生理」のすごいところなのだと思いました。同じ体験をしている者どうし、「そうそうそうそう!」な話で10代と世代を超えて一気に分かりあえてしまう・・・という、まぁ自由で豊かで優しい空間になったのでした。

 集まってきてくれた子のなかにはまだ来てない子もいて、そういう子たちの不安も含めていろんな声を聞きました。

「ものすごい血が出る、血だらけになる、凄い、もう夜用の一番大きいのしか使わない」
「2週間前にきたばかりなのにすぐ来て、そうかとおもったらもう2ヶ月きてないよ」
「すっごく痛い。薬飲んでも効かないことがある、どうして!」
「まだ来てないけど、お腹痛くなるのが怖い」
「生理中って、おしりにブツブツできるんだけど、どうしたらいい?」

 あー、わかるよー、10代の生理のなりはじめって、ほんと不定期だし、不安定だし、生理の量はバラバラだし、めちゃくちゃだったよー! な話をみんなでしながら、生理の量ってたいていこのくらいだよーとか話したり、生理ナプキン何回くらい替えてるの? と聴くと1日一回しか替えてなかったりするので、もう少し替えられたらいいねー、なんて話したなど、生理に関する知識を共有しながらすっかり話し込む時間になりました。ああ、こんな風に生理の話をするごとに、「してこなかった」「なぜかできなかった」過去が不思議に感じるほど、生理の話は尽きないのです。

 キャラバンには「生理用品の歴史」を書いたパネルを置いていたのですが、1960年代に初めて使い捨てナプキンができた、という箇所を読んでいた子が、「私のお母さんは1970うんちゃら年(←そう言ってた)に生まれてるんだけど、お母さんが生まれる少し前にナプキンができたってことか!!」と本当に驚いていたり、田中ひかるさんの「生理用品の社会史」を立ち読みしていた子が、アンネナプキンの由来を読みながら、「アンネって生理のこと、すごくポジティブだったんだね」と自分より小さい子に教えてあげるように話していたりとか。生理、というテーマ一つで、私たちがふだん語れない、語ってない、色んな話が安心して口に出せることの大切さを実感します。

 子どもたちも最初はおそるおそる様子見にきたよ、という感じだったと思うのですが、「なんだ、ぜんぜん堅苦しくないね! 堅苦しい大人がくると思ってたよ」と誰かが口にすると途端に打ち解けたように自分の話をはじめるてくれるのでした。生理の話、学校の話、担任の話がつまんない話、学校での起きた不愉快な話、最近話題になっているYouTubeの話などで盛りあがり最後はみんなで円になって夏の怖い話大会になる・・・という、ガールズトークな時間にもなり、私が一番楽しんでしまったかもしれないです。

 そうそう、これ、学校関係者の方にぜひ検討していただきたいと思ったこと。
 授業開始前/後に毎回行う「キリツ!!」「レイッ」というヤツ、あれ、やめた方がいいですね。
 ある子が、生理中のキリツ・レイ!がすごくヤダ、と話してくれたのですが、確かにそうだと、その場にいたみんなが頷きました。経血って椅子から立った瞬間にドバッと出ることが多いんですよね。だから、キリツ、という時に血がドバッと漏れて、その後椅子に座ると、ベチャッとするのが凄く嫌なのだと。ああ、そういえば私もそうだったなーと思いだしました。もういい加減、そういう軍隊的な儀礼、止めた方がいいですよね。生理中の子や具合の悪い子には、すごく負担になっているのだし。

 そしてこれはホントに驚いたことなのですが。
 生理用品の話をしながら、私たちのお店はラフォーレ原宿にもあるんだよ、いつか来てねー! なことをスタッフが話していたところ、小学6年生の子が「社長ってどんな人?」と聞いてきたのです。そばにいたので「はい、社長です」と私が手をあげると本当に驚かれました。「え、社長って、オジサンだけだと思ってた」と言うので、今度は私が真顔で驚いてしまったんだと思うんですよね。すると子どもどうしで「えー、女のシャチョーっているのかな」「誰がいるのかな」と考えはじめてくれて、結局、「すごい頑張って考えても、シャチョーで思い出せるのって、緑の服の人くらいじゃない?」「あ、そうそう緑の服の人くらいだ!!」と言うんですよ・・・。それって百合子・・・。百合子は社長じゃない・・・と思いながら、「ポジションのある女」=百合子、くらいしか思い出せないというのが今の小学生と中学生の女の子のリアルだとしたら、それはなんてなんてやばいジャパンなのかと改めて衝撃ですよ。「社長は、誰でもなれるよ!!」と意味不明に力強く拳を握る・・・そんなことしかできませんでしたが・・・。

 私が10歳のときに市川房枝が亡くなり、その時に大きな報道がされたことをきっかけに、すげーこういう女性が日本にいんたんだ、というのが私のフェミな意識の始まりだったと思いますが、そんな40年前からいったいどのくらい日本の女性の状況変わってますか? まだまだフェミニスト、やることいっぱいあるんじゃないのよ、と子どもたちと名残惜しい気分で別れた晩夏の1日でした。

 というわけで、生理を巡る語りを色んな場所でたくさんしていこう! という生理キャラバン、全国に出張します! ラブピのスタッフに来てね! という学校関係者、図書館、児童養護施設のご関係者の皆様、ぜひお声がけください。私たちが行かずとも、最新の生理用品や、生理の知識について書かれたパネルなど貸し出しもしてます(これは今年の夏、名古屋市内、静岡市内の女性センターなどで行っていただきました)。生理の話、世代を超えてどんどんしていきましょう。

 生理キャラバンのお問い合わせは info@ajuma-love.com からお願いします

 

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北原みのり

北原みのり

ラブピースクラブ代表
1996年、日本で初めてフェミニストが経営する女性向けのプレジャートイショップ「ラブピースクラブ」を始める。2021年シスターフッド出版社アジュマブックス設立。
著書に「はちみつバイブレーション」(河出書房新社1998年)・「男はときどきいればいい」(祥伝社1999年)・「フェミの嫌われ方」(新水社)・「メロスのようには走らない」(KKベストセラーズ)・「アンアンのセックスできれいになれた?」(朝日新聞出版)・「毒婦」(朝日新聞出版)・佐藤優氏との対談「性と国家」(河出書房新社)・香山リカ氏との対談「フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか」(イーストプレス社)など。

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