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この歳になって家出をすることになろうとは、思ってもみなかった。人生初の家出!(笑)。中高生の頃も、無断外泊はもとより、髪を染める・化粧をする等とも縁のない、「超まじめっ子」だった。大学皆勤という人生最大の汚点(?!)もある。いまでも、中高生が家出をしたら、学校では「指導対象」となることが多い。それは、自宅に帰ることが大原則という世間のルール。しかし、自宅が安全な場所ではなかったらどうだろう。親から虐待を受けていたり、(義)父・兄弟等から性的虐待を受けていたり・・・自宅が安全な場所でないケースもあろう。私自身も身の危険を感じての家出だった。
統合失調症の母の精神状態が、最近悪化してい(るような気がしてい)た。「ような気がしていた」というのは、母のかかりつけの精神科医に最近の母の様子を説明し「症状が悪化しているような気がするんですが・・・」と訴えても、「悪くなっていませんよ」の一言で片付けられているから。専門家からみれば「悪化していない」らしい。が、同居していつもそばにいるものとしては、些細なことでもすぐに怒りをあらわにして、悪口雑言の限りを尽くしたり、何十分も悪態をつき続けるのが日常茶飯事である最近の母の様子は、どう考えても悪化しているようにしか見えていなかった。
母が子どもの頃、継母にいじめられてつらい思いをしたことや、DV男だった夫(私の父)の暴力に耐えて子育てをしてきた苦労など、いまから数十年前の話を、まるで昨日のことのように語り、「おまえにそのつらさがわかるか!」と迫ってくる。「そんなのわからない」と答えても、「つらかったのはわかる」と答えても、母は怒りで返してくるからたまったものではない。ちょっとでも反論しようものなら、「威張るなっ!! 誰に育ててもらったと思ってるんだ!!」と叫ぶ(それしか反論できないのがまた、悲しい)。
今年度4月に異動して全日制勤務になってから、母と顔をつきあわせる時間が増えたのに比例して、母との口論の回数も増えていった。同じ空間にいると喧嘩になりやすいと判断し、別の部屋にいるよう努力してみたものの、我が家は古い古い日本家屋、しかも平屋。ふすまと障子でしか部屋を区切り物はなく、トイレに行こうと思えば必ず母のいる部屋を通らなければならないし、母もまた同様。プライバシーを守られる個室は存在しない。
先日、口論の末、言葉に詰まった母が手を出してきた。ここでこっちも手を出すと収拾がつかなくなると思い、手を出すことは何とか踏みとどまった。が、次の日、母が今度は複数回殴ってきた。これはもう、はっきり言ってDV(・・・いや、もう随分前からDVだったと思うが、はっきり意識したのは殴られてからだ)。しかし、こっちが殴り返したり突き倒したりしたら、体の大きさから判断して、母が負傷するのは目に見えている。もしも母が怪我をして、暴行事件や傷害事件にでもなれば、こちらも職業柄、穏やかにはすまされない。これはもう母との距離を取るしかないと判断しての家出だった。
母と同居していたのは、経済的な理由から。精神的に不安定な母に、働いてお金を稼ぐことはかなりのストレスとなる。そのため、母は働いていない。父とは20年以上前に離婚しているので、父の遺族年金もない。私が大学を卒業した翌月の4月から母と弟を扶養家族にして(現在弟は別世帯)、私の収入で生活をしている。私が一人暮らしをするなら、自分の月々の収入の中から母の生活費を差し引いた残りのお金で生活することになる。母からのストレスを感じながら経済的にはゆとりのある生活をするか、母からのストレスから逃れて極貧の生活をするか、選択肢は二つだ(母と別世帯になって、母に生活保護を受けさせる・・・という選択肢がないわけではなかろうが、それはさすがに選べない)。公務員の賃金の削減が続き、年金も将来は当てにできそうにない、それならいまのうちに貯金できるだけ貯金した方がいいだろうと、母からのストレスを引き受けつつ同居生活を続けていたのだが、ついに行き詰まった。統合失調症の母親との生活を描いた本『わが家の母はビョーキです』(中村ユキ サンマーク出版)を地でいく修羅場がおとずれたのだった。
家を出るとき、とりあえず数日分の着替えは持って出た。あとはキャッシュカードがあるし、しばらくのあいだビジネス・ホテルにでも泊まって様子をみようと、ホテル暮らしが始まってもうすぐ一週間。もう、自宅に戻らない方がお互いのためだろうと思っているところ。以前、DV被害者支援にかかわったことがあるが、着の身着のまま、しかも子ども連れで自宅から飛び出すのには勇気がいると思う。身の回りの生活必需品、子どもの学校等、家を出ることをためらう要因は山ほどある。気ままな独り身の私でさえ、家出するのに躊躇した。一歩踏み出せたのは、家がなくてもしばらくはホテルにでも泊まってゆっくり考えればいいや、生活必需品は新しく買えばいいやという経済的なゆとりがあったため。しかし、ホテル暮らしもそう長くは続けていられない(貯金が減るばかり)。週末は部屋探しでもしにでかけようかな。

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深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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