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第6回  セクハラの横行…「女性枠」撤廃では足りない

打越さく良2014.08.08

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要注目ニュースが続々
 ジェンダーの観点から要注目のニュースは今回も多々。
 東京都議会自民党が新幹事長に初めての女性幹事長を選んだこと(8月1日就任)。1955年の会派結成以来、初めてのことだとか。ええっ。これも、塩村都議へのセクハラヤジが問題化したことへの対処。問題化しなければ、今後も延々と男・男・男…幹事長が続いたことは間違いない。全国フェミニスト議員連盟では、8月10日〆切で自治体議会における性差別体験アンケートを実施する。性差別の実態を顕在化させることは大切だ。アンケート結果を待ちたい。
 そして、ろくでなし子さんの逮捕。わいせつとは、表現の自由とは…といった議論より前に、え、勾留?罪証隠滅のおそれ全くなしなのに、バカバカしい。日本では、身柄拘束してガンガン取調べして「自白」をとるという野蛮なことが行われていることは、国際的にも周知の事実(2011年、自白をとるために長期の身柄拘束をする「人質司法」が問題になった国連の拷問禁止委員会で、山田人権大使が「シャラップ」と言い放って更なる恥を重ねたことは記憶に新しい)。署名サイトchange.orgでは、ろくでなし子さんの即時釈放を求める署名活動が行われ、瞬く間に21,139人もの署名が集まった。このサイトでも、北原さんや澁谷さんが思うところを書いてくれた(泣けた!)。都議会セクハラヤジ問題に続き、ネット上のポジティブな力に、これまた涙した。無事、勾留に対する準抗告が認められ、ろくでなし子さんは7月18日釈放されたが、不起訴処分を勝ち得るまで、闘いは続く。引き続き応援をよろしくお願いします。
セクハラは検察でも
 と、重要情報目白押しであるが、今回取り上げたいのは、静岡地検の糸山隆検事正がセクハラやパワハラの疑いがあるとして、8月1日付で事実上更迭されるとのニュース(2014年7月17日付け朝日新聞等の朝刊)。酒席で、女性職員の体を触るなどの行為があったという。検事正は、調査で、「酔っていて覚えていない」と述べているとか。ぷっ。都合の悪いことは酔っぱらって記憶にない…。「そんなのありえないだろっ」と全国津々浦々で今もなお被疑者被告人が検事から責めたてられているはずだ。しっかし、「公益の代表者」たる検察官(検察庁法4条参照)がまさかそんなセクハラなんて…。とはちっとも思えないのが哀しい。「都議がセクハラヤジするなんてまさかっ」とちっとも思えないのと同じだ。
 愛読しているFacebook上の「前田恒彦元特捜主任検事のつぶやき」 でも断言されている。「検察では表に出ないだけでセクハラやパワハラが横行してきた。」と。前田元主任検事は続ける。「服装に口出しして変えさせたり、異性関係を詮索したり、酌をさせたり、卑猥な言葉を吐いたり、酔って抱きついたり、手や身体をベタベタ触ったり、果はホッペにチューしたり。」ありえないっと思える読者は幸運なのかもしれない。そんな職場だろうと、仕事を続けなくては。自分のキャリアのために、生活のために、多少のことは目をつぶって、頑張らねば。セクハラヤジの後、都議会では笑いが起こったという。単なる冗談、笑いが起こる空間で、女性が抗議したら?ハラッサーよりも、抗議した女性に「やれやれ、本気にして白けるやつ」という目を向けられること間違いなし。だから、たいがい女性は、雰囲気を壊さないように、やり過ごす。日本維新の会の上西小百合議員は、都議会でのヤジが問題になってから、衆議院総務委員会で自民党議員(後日大西英男議員と判明)から「自分が産まないとダメだぞ」とヤジを受けたことを明らかにした。笑い、手を叩いている議員もいたという。上西議員はヤジを受けて、苦笑し、「がんばります」と答えた。ネットでは、「その場で問題にしろ」等と塩村都議や上西議員にも厳しい声もある。しかし、即座に抗議などされないことを百も承知で、ハラッサーはセクハラする。建前上対等であるはずの議員同士であっても然り。年齢差、性差、多数派か少数派か…。そもそも「怒る」「抗議する」ということ自体、被害者にも、「女性らしからぬ」ものとインプットされている。検察でも同じ。議員同士のように対等ではなく、上司と部下という上下関係ならなおさらだ。様々なセクハラを受けても、「お酒の席のこと」と笑って済ませる。或いは、嫌気がさして、辞める。
女性枠の撤廃では足りなかった
 今を去ること14年前。司法修習期53期の私たちは、研修所の1クラスあたり女性は0名~1名、例外として2名しか検察官になれないことを知っていた。53期で検察官になった74名のうち、女性は10名。修習生全体の中で女性の占める割合(約4人に1人)からは説明できない少なさであった。いくらなんでもおかしい。公益の代表者である検察官が公然と性差別に基づく基準で選定されていいのか。私たちは「検察官任官における『女性枠』を考える53期修習生の会」を立ち上げ、法務省に女性枠の廃止を陳情したりした。私たちの熱意を受けて、日弁連も女性枠の撤廃等を求める要望書を出してくれた。
 その後検察官の女性任官が増えたと聴くたびに、運動の成果だと喜んだものだ。しかし、甘かった。女性枠の撤廃では足りない。前田元特捜主任検事は、「幹部職員や特捜部員の男女比などが示しているとおり、女性職員は同じ能力の男性職員と比べて人事上も明らかに冷遇されている」という。それではセクハラを受けても、即座に抗議することなど難しい。私たちは、積極的な「女性枠」、すなわちクオータを設けよというべきだった。クオータというと、能力の乏しい女性を優遇するかのような誤解があるかもしれない。セクハラ等女性差別に寛容な労働環境では、男性こそ下駄を履いていて、女性の進出が阻まれている。見えない「男性クオータ」を是正するための仕組み=女性を増員するクオータが望まれるのだ。
 でも、議員だって検事だって夜遅くまで仕事が必要だから、女性には向かない…?どうして夜遅くまでやらなければいけないのだ。今までエンドレスで夜仕事をしてきたことがおかしい。男女問わずワークライフバランスは大切だろうに。大体、夜遅くまでガンガン続けた取調べなんて、そもそも任意性あるはずない。ふん。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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