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夫婦別姓訴訟 最高裁大法廷判決直前!

打越さく良2015.12.14

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いよいよ16日判決!
 〆切厳守(だけは)心がけている私としたことが、先月に続き今月もこんな事態で申し訳ございません。しかし、先月と今月は異例の事態ということでご容赦ください。なんといっても夫婦別姓訴訟弁護団の事務局長(長と名乗るのはキャラにあわず恥ずかしいのだが、ま、調整役というか世話人というか…)先月は夫婦別姓訴訟の最高裁大法廷弁論の直前、あれこれ取材対応に追われ、弁論の暗誦(する必要もなかったが)にいそしむ、興奮状態のさなかに執筆した。そして、今月も、最高裁大法廷の判決(16日)を目前に控え、弁論の暗誦はないものの、取材対応の忙しさでハイテンション、そして、何より、いよいよ…いよいよっ!、という高揚感を抑えられない。

「世論調査では賛否拮抗」?
 連日、各紙に別姓訴訟関連の報道がなされる。各種報道もほとんどが私たちの願いをダメ押しとばかりに後押ししてくれているかのようだ。ん?強引ではないか?というツッコミも予想される。確かに、12月7日のNHKニュースのように「夫婦別姓 世論調査で賛否大きく分かれる」との記事。見出しからずるっと脱力しなくもない。
 だ・か・ら!人権と平等の問題は、世論調査とか多数決とかで決めてはいけないことだって。女性差別撤廃委員会からも、日本政府が女性の再婚禁止期間等とともに、夫婦の氏の選択に関する差別的な法規定を撤廃しない説明をする際に、世論調査を用いていることに懸念を表明されている。女性差別撤廃条約の規定に沿うように選択的夫婦別氏制度等を内容とする民法改正を行うことは、締約国としての義務なのだから。
しかし、相も変わらず、報道は「世論調査」を持ち出す。んぐぐ…。まあ、一応確認しよう。たとえば、内閣府平成24年12月の「家族の法制に関する調査」は、平成18年調査に比べ選択的夫婦別氏制度について賛成の割合が減り、反対の割合が増え、反対のほうが賛成を上回ったことで話題になった。すなわち、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」との回答が36.4%(平成18年調査35.0%)、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」との回答が35.5%(平成18年調査36.6%)。一瞬「なるほど、確かに賛否拮抗だ、あ、別姓反対が上回ったんだ」と読める。
しかし、年代別に注目してほしい。

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平成24年調査では、回答者3041人中、60代699人、70代以上746人。すなわち、60歳以上で全体の約47%を占める。20代(242人)+30代(269人)の合計(511人)より、70代以上の方が回答数が多い。60代+70代以上の合計は、20代+30代の合計の2.8倍以上。上の表でわかるように50代より下は、いずれも選択的夫婦別氏に賛成の割合が高い。反対の割合が高いのは60代以上。その反対の割合が高い年代の回答が色濃く反映されている。晩婚化が進んだといっても、平均初婚年齢は男性30.8歳、女性29.1歳(平成23年)。そう考えると、20代、30代の層こそ注目されるべきであろう。この層では、選択的夫婦別氏に賛成する割合が着実に増加している。すなわち、賛成の割合は、20代平成13年42.3%→平成18年44.4%→平成24年47.1%、30代平成13年37.2%→平成18年42.8%→平成24年44.4%、なのである。
今なお婚姻した夫婦の実に96.1%以上が夫婦の氏を夫の氏にすることを考えると、婚姻改姓の問題に当事者として直面するのは、女性だ。そこで、女性の割合に注目してみれば、さらに賛成の割合が高く、反対の割合が低いことがわかる。すなわち、平成24年調査で、20代女性の賛成は53.3%に対し、反対は16.1%に留まる。30代女性も賛成が48.1%で、反対は同じく16.1%。
そして、内閣府の調査では、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることにつてはかまわない」という第3の選択肢がある。これは全体の24.0%。この回答は婚姻しても自らの意思で別姓を名乗りたいという選択に一定の理解を示すものといえるのではないだろうか。この回答も含めれば、全体でも婚姻後それぞれが自分の氏でいたい選択を容認する割合は6割に近いといえる。

朝日新聞が今年11月7日、8日に実施(電話)した世論調査では、選択的夫婦別姓に「賛成」は52%で、「反対」の34%を上回った。年代別でみると、もはや60代以下の全ての層が「賛成」が「反対」を上回っている。おお、と勇気づけられたところで、相変わらずの「夫婦別姓 世論調査で賛否大きく分かれる」との見出しに脱力した先ほどのNHK の記事も仔細にみれば、60代以上が回答者の55%(!)を占めたという。記事中で二宮周平教授がコメントするように、「20代から50代は、別々の名字を名乗ってもいいと思っている人が多く、『賛否きっ抗、反対派が多い』という調査結果の見方は誤りだ」。二宮教授は、「高齢の世代は、自分たちのこれまでの生活を否定する意見が持てないので、理解できないのではないか」ともいう。しかし、この点は私はむしろこう言いたい。「自分が愛する人と結婚するにあたり自分の氏を捨てなければならないとしたら?自分の氏を諦めたくないなら、その人と法律上の婚姻は諦めなければならないとしたら?…ということを「自分のこと」として考えることがおよそない70代以上の男性の意見をこの問題で重視すべきだろうか」と。

「家族の一体感(きずな)」? 
 中日新聞が先月下旬に選択的夫婦別氏についてネット上で募ったアンケート(回答者数7,940人)では、男性の53.2%、女性の57.1%が賛成で、反対(男性30.4%、女性10.4%)を大きく上回った。反対の意見の中には、「それなりの覚悟で他人から夫婦になるのだから、結婚したら同じ姓になりたい」(三重県、女性(24))が印象に残る。ん?自分が同じ姓になりたいなら、そうすればいいだけのこと(「どんな覚悟?」というツッコミは措くとして)。求められている制度は夫婦別氏強制ではない。夫婦別氏も夫婦同氏もカップルが選択できる制度のことだ。それこそ、憲法24条等が掲げる両性の本質的平等と個人の尊厳にかなう。
 ところで、選択的夫婦別氏に反対する理由として、「家族の絆」が弱まるということが言われる(たとえば、自民党日本会議 のwebページからも示唆されよう)。しかし、内閣府の平成24年12月の上記調査でも、夫婦・親子の名字(姓)が違うと、夫婦を中心とする家族の一体感(きずな)に何か影響が出てくると思うかという質問に、「家族の名字(姓)が違うと、家族の一体感(きずな)が弱まると思う」と答えた割合は36.1%に留まるのに対し、「家族の名字(姓)が違っても、家族の一体感(きずな)には影響がないと思う」と答えた割合59.8%である。
 大体、もはや成分法で夫婦同姓を強制する国は世界で日本だけなのだ(糸数慶子議員の質問趣意書に対して内閣総理大臣は「我が国のほかには承知していない」と答弁している)。他の国ではことさら家族が崩壊しているとでもいうのだろうか。実証的な裏付けなど何もない思いこみというほかない。一部(よりもっと多数かも…)の国会議員よりも世論のほうがまだ冷静に、姓が同一かと家族間のきずな、愛情は関係ないことを理解している。
なお、離婚しても旧姓に戻らず、婚氏を続称することができる(民法767条2項)。これは、婚姻改姓後、改姓後の氏で社会生活を営んできた以上、その氏をその後も使用していきたいという個人の思いを尊重することにしたということができる。私の依頼者にも、夫を恐れ、「同じ空気も吸いたくない」ほどの拒否反応を示しながら、離婚に際し、それまでその氏で築いてきたアイデンティティを今さら捨てられないとして、婚氏続称とする人は少なくない。
家族の愛情やきずなは、氏が一緒であれば築けるものでも、つなぎとめられるものでもないのだ。

 ところで、育鵬社の平成27年検定済み・平成28年度より使用開始の『新編 中学社会 新しいみんなの公民』(67頁)には、「夫婦別姓の賛否についての世論調査」として、上記内閣府の平成24年調査が平成13年調査に比較して高らかに掲げられている(選択的夫婦別姓に反対する人は、「選択的」という言葉を外している。お、ここでも外されている、と気づかずにはいられない)。もちろん、年代別比較などしていない。「この夫婦同姓制度も家族の一体感を保つはたらきをしていると考えられています」との一文まで添えられている。「考えられている」?世論調査でもそう考えない人のほうが多い。世論に依拠するなら、「とは考えられていない」というほうが正確だろう。要は、「(執筆者である自分が)と考えている」というオピニオンであるのに、曖昧にしているのではなかろうか。
 そしてまた、同教科書は、「国家公務員の通称使用は2001年から認められ、外務省からパスポートに旧姓を『別姓』として併記することを特例として認めています。民間でも普及しています」とも記載する。国家公務員の「通称使用」が認められるに至った背景にも、国立大学の女性教授が国に対して旧姓使用と戸籍名の使用を強制されることについて損害賠償請求をした大阪高裁平成5年11月19日判決(判時1486号21頁)など、諦めないで頑張り続けた女性たちの努力があったが、そんな苦難は記載されていない。そして、パスポートでの併記は、さらに「必要性」が審査される上、あくまで例外的な措置、「併記」に過ぎず、ICチップに記録もされないという、残念な制度にすぎない(外務省パスポートよくある質問Q16  )。
 同教科書はいう、「法律により、夫婦は夫または妻のどちらかの姓をともに名乗ることになっています」、と。その結果、昨年の段階でも96%を超える圧倒的多数が夫の氏を称するという性差別の結果がもたらされていることの記載はない。そして、その「法律」、民法は、憲法に適合していなければならないということも、等閑視されている。

12月16日午後3時、民法750条が、違憲であり、女性差別撤廃条約に違反すると最高裁判所大法廷が判断してくれるものと、強く強く願っている。
傍聴をご希望の方は、午後2時までに最高裁南門にいらしてください。
報告集会は午後5時15分(会場午後5時)から、参議院講堂です!
詳しくは別姓訴訟を支える会http://www.asahi-net.or.jp/~dv3m-ymsk/ まで。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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