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ひとりでカナダ大学生やりなおし~アラフォーの挑戦 Vol.12 報告を怠るとだいたい失敗するという話

橘さざんか2023.09.18

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7月末に帰国して9月福岡に移動するまでの1か月はとにかく毎日やることが盛りだくさんで、朝覚醒したとたんに「今日はアレとコレとアレをやらなきゃ~」と考えて動悸がするような毎日であった。そもそもの準備不足、いろいろやろうと詰め込みすぎ、お盆休みによる滞り、差し迫る期限などあり余裕のなくなっている状態で、焦るあまり上司への情報共有をすっとばし盛大な怒らせを発生させてしまった(複数件)。そこから、初期研修医時代から遡って今まで上司からお目玉をくらった事件を振り返ってみたのだが、全て「上司に報告せず先回りして動いてしまった。」ことに原因があったことに気が付いた。私だけの特色なのか、部下が怒られるときというのはそういうものなのかはわからない。今思い出すと稚拙で顔から火が出るくらい恥ずかしいのだが、研修医時代の失敗は時効ということでここに晒すことにする。

まず一つめは初期研修医として始めにまわった内科での出来事である。(初期研修は2年間の間数カ月ごとに内科、外科、産婦人科や眼科などのマイナー科をローテーションする。)夜中に胸痛あり心筋梗塞疑いで来院した患者さんを上級医と対応した後、その方は心筋梗塞は否定的という診断でお帰りになったのだが、そのとき測定した患者さんの心電図を、「はいこれお持ち帰りください。お大事に」と言って持たせて帰宅させてしまったのだ。そのことに気づいた上級医は今まで見たことがないくらい怒り「橘先生、もう帰って」と言い、私は勤務の途中で家に帰らされた。自分としては親切くらいの気持ちで患者さんに渡していたし、なぜ渡していけないのかどうかまでわからないが『気を付けよう』と思った。のちに学習したことだが、心筋梗塞は心電図が有用な初期検査となり、脈拍を電気的に図式化した心電図の規則的な波形の一部分が通常より「上か」「下か」で診断を進める。命にかかわる疾患なので超重要な情報である。また、「上か」「下か」はその方の過去の心電図と比べて評価しなければならず、まだ心電図が電子カルテに反映されなかった2010年代に、胸痛がある瞬間に測定した心電図は超重要文書だったのだ。ちなみに数カ月後その上級医は「あの件は研修医にはまだわからなくても仕方なかったと思う。ごめん。」と言って謝ってくれた。

二つ目も内科をまわっていた時のこと、死期が近い状態で長く経過していた患者さんのモニターの心電図がフラットになった。息を引き取られたということである。患者さんの死に遭遇したのは私にとって初めてのことだった。早朝でたまたまナースステーションに他に医者がおらず、看護士長に「先生・・・・」と言われた。それだけで私は「来た!ついに死亡診断を私がやるときが来たのだ」と勘違いし、興奮し、すぐに死亡宣告の真似事のようなことをして、その後来た上級医に得意げに「死亡診断しちゃいました」と報告した。上級医は烈火のごとく怒り、「しちゃいましたじゃねえよ!!どれだけ大事な儀式かわかってんのか!!!!」と叫んだため、そこで初めて自分が軽率なことをしたと知った。死亡診断というのは、息を引き取った瞬間に必ずしもするものではない。ご家族に連絡し、すぐに来院できるのであればそれまで待つこともある。亡くなったという事実はかわらなくても、死者に敬意を持って家族の前で丁寧に行うということが残された人たちにとっても大切なことなのだ。その後上級医がきちんと死亡診断を家族の前で行い、また霊柩車を見送るときのお辞儀が誰よりも長かったことが印象的であった。
まぁ、このような先走り事案でお叱りを受けることは後期研修医になった後もときどきあった。

先日尊敬する先輩研究者の研究計画に入れてもらえることになったのだが、その先輩はプロポーザル(=研究計画書。研究費を申請するときや倫理審査会に通すときに必要となる。倫理審査会と言うのは各大学等研究施設に設置されている審査機関であり、研究が倫理的に正当かどうか評価する。審査を通過したもののみ研究実施に進むことができる。)を提出するとき最終版をいちいち関わる研究者全員に送っていた。期限も迫っているし、だいたいのところはこれまで共有できているし、研究者の皆さんはみな忙しいしと理由をつけ、私としては省略してしまいそうになるプロセスなのだが、その人は「こうやって小さい信頼を積み重ねていくんですよね~」と言っていて、なるほどなこれが私には足りなかったのだなと納得した。小さい報告を重ねていくというのはトラブルを防ぐという目的だけではなく、信頼関係を築いていくのに必須なのだと本当に今更気づいた。小さい報告、すごく大事。「先方は忙しいだろうから」「お手を煩わせては悪いから」と考えてしまいがちだけれど、そもそも本当のところは返ってくる反応が怖くて言い訳して報告を回避してきたのではないかと自分の深層心理まで考えた。

今回は反省文になってしまいましたが、いくつになっても学ぶべきことがあるなぁと思う毎日です。国内留学している福岡では、ミソジニーに触れ私が激怒するコラムをお届けすることになるかと思っていたのですが、今のところ会う方々みなソフトでやや拍子抜けしています。来月はいくつか国際学会に行くのでそれをネタにできるのではないかと思っています!

写真©Tachibana Sazanka

私は一番いいときに帰ってしまいましたが、カナダではみなさん夏を楽しむべく毎日イベントが盛りだくさんのようです。
公園での野外劇場での演目はピノキオだったそう。

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