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Vol.3 革命家ビヨンセのフォーメーション

阿部悠2017.04.10

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「女ども! 配置につけ!」
"Formation"は、去年の2月8日にNFLスーパーボウルにビヨンセが出演するタイミングに合わせてリリースされた渾身の反差別チューンだ。
人種差別の嵐が吹き荒れる今のアメリカを憂うビヨンセは、白人の観客が大半を占める会場で、ブラック・パンサー風の衣装、フォーメーションX(マルコムXをイメージした隊列)という、人種差別反対へのメッセージを全開にした鳥肌もののパフォーマンスをやらかしたのだ。日本ではピンとこないが、スーパーボウルのハーフタイムショーの視聴率は45%以上。1億を軽く超えるアメリカ国民が見ているのだ。そこでハードに反差別を訴えるとは、マジでイカツ過ぎる。
ビヨンセは現代の踊れるボブディランなのだ。

この曲では、
"Okay, ladies now let's get in formation, cause I slay"
「女ども配置につけ! わたしはイケてる!」と何度も何度も繰り返される。
配置につかないとヤツら(差別主義者)にヤられてしまうと。
特にこの
"I slay"
「わたしはイケてる」
という言葉が連発され、ファンの合言葉になっている。
唱えることで女性が元気になる言葉なのだ。
ビヨンセのガールズアンセム(女性への応援歌)はやたらと強気な歌詞ばかりなのだが、ビヨンセのような自立した強い女性だけでなく、どんな女性にとっても「頑張ろう!」「やればできる!」と思えるようなメッセージになっているのが素晴らしい。
なぜ、成功者の目線でガンガン強気なメッセージを発信しているビヨンセに、なんでもない主婦の私がめちゃくちゃ共感するのだろうか。

10代の頃から一貫しているダメ男斬り
ブラックミュージックやラップには「ビッチチューン」がたくさんあるし、女性蔑視のイメージを持っている人が多いと思うのだが、実は昔から、「女性賛歌」や「母親賛歌」は定番中の定番で、女の自立や、女の怒りを表現した歌がけっこう多い。マッチョな世界だからこそ感じる怒りがあるのだろう。
女性のラッパーはほぼ全員が無自覚なフェミニストだ。
それに、TLCなどのアイドルであっても、ルッキズムやセクシズムに対するメッセージを歌ったり、男の子のようなダボダボの服を着たり、フェミ的な価値観が当たり前にある。
若い頃は不真面目だったしフェミニズムという言葉すら知らなかったが、
「いくら化粧をしてエクステしてても内面は醜いままだ」
と歌うTLCは知っていたので、自然な形でフェミニズムには慣れ親しんでいた。
ビヨンセが在籍していた、ディスティニーズチャイルドは、'99年に発表したセカンドアルバムあたりから、ダメ男の悪口が増え、"Bills Bills Bills"では、金にだらしない男を捨て、"Bug a boo"ではストーカー気質の男を捨てていた。昨年リリースした"Lemonade"では、アルバムを通して夫であるJay-zの悪口を言いまくりで、「まさかJay-zも捨てちゃうの? 」って勢いだ。
アメリカの芸能人はパパラッチがめちゃくちゃ嫌いで、自らのスキャンダルを作品にしたり、自らSNSで暴露することで、パパラッチがネタを売ることをできなくしてやろうという風潮がある。
「日々ストーカーのように自分を追い回してるだけのあいつらが儲かるのは許せない。じゃあわたしが週刊誌よりも面白い話をしてやろう」
ってことだ。ビヨンセもパパラッチが大嫌いなので、そういう流れで夫の悪口を言いまくっているのもある。
10代の頃から今までの間、ずっとダメ男を斬りまくっているのビヨンセ。
「おまえはわたしの携帯代払えるようになる? 光熱費を払えるようになる? ムリそうだし別れるわ」
「おまえは電話しすぎ。メッセージで埋まっててキモいし別れるわ」
「わたしも落ちぶれたもんだわ。おまえの携帯の履歴なんか見て」
「おまえがいなくなって悲しんでると? まさか! おまえがいなくなって快調快調!」
などなどの、誰もが経験していそうなエピソードを赤裸々に歌っていて、完全無欠に見えるビヨンセも決して「ご立派な人間」ではないし、「ビヨンセもいつもうまくいってる訳ではないんだな」と、身近な存在に感じられる。
だから、
「おまえはそこらの女と結婚したんじゃないぞ!」
「ダイヤでも靴でもなんでも自分の金で買ってるわたしはどうよ? あんたもそう?」
「わたしは黒いビルゲイツになる!」
というような、まったく身近ではない言葉にも「わたしの歌だ!」と思えるのではないか。

女が世界を回している

ビヨンセはしょっちゅう
「すべての女!聞いて!」
と、宣言してから歌う。そして、ビヨンセのガールズアンセムはとても簡単な英語で作られていることが多い。本当に世界中の人々にメッセージを伝えようとしている。わたしにもだ。
ビヨンセは歌手であり、ダンサーであり、女優であり、クリエーターであり、革命家なのだ。
「世界は女が回してるんじゃ! 男には絶対ムリムリ!」
という歌を世界中の女性が「わたしの歌」だと思えるようになるとしたら、本当に革命だ。
ビヨンセは、すべての女性の中に根拠なくある「男にはかなわない」という足かせを、ガンガン外していきたいのだ。

フォーメーションという革命
今までは差別とたたかう人の連携、共闘を訴えるキーワードは「ユニティー(団結)」が一般的だった。それをビヨンセは「フォーメーション」という概念に変えた。
「ユニティー」だと嫌いなヤツとも手を繋がなければならないようなイメージを抱く。
例えば、ネット上では反差別を訴える人たちが、「なにがミソジニーで、なにがセクシズムなのか」といった議論をしているのをよく見かける。それはそれでとても大切なことなのだが、それぞれにどうしても許せないことがあったりして、共闘はなかなか難しいと感じることがよくある。
そういう状況を打破し、誰とでも共闘を可能にするのが「フォーメーション」という概念なのではないか。「ユニティー」よりも距離感があり、各々が配置についてすべきことをやればいいだけだし、それならイケるんでは?と、思えるのだ。
テレビや吊り広告、ネットでは「女叩きカルチャー」が急速に盛り上がっている。それぞれが配置について弾込めて準備しないと、ヤツらにヤられてしまう。
女ども! 配置につけー!!

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阿部悠(あべ・ゆう)

兵庫県出身。ローティーンの頃からクラブに入り浸り過ぎて中卒。関西を拠点にクラブDJとして活躍。3.11後の原発事故にショックを受けて反原発活動をはじめ、社会運動に目覚める。最近は「女叩き」カルチャーに怒りを燃やして、ネット上に溢れるミソジニスト達と本名顔出しで日々格闘。ビヨンセを崇拝している。 

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