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森友問題その他…フェイクであってほしい政策の数々

打越さく良2017.04.11

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答弁拒否、虚偽答弁、記録廃棄、忖度etc.…民主主義の危機
 先月から今日までの間、私は森友問題で頭がいっぱい、老眼には厳しいTwitterも始終確認するようになった。森友問題、キャラがたった登場人物がわらわら出てきてオモシロい見世物…として消費してはいけない。学校法人森友学園が評価額9億5600万円の国有地を1億3400万円で買い受け、それも国から汚染度除去費用として1億3176万円の支払を受け、結局たった200万円で買い取ったといわれるが、財務省の担当者は国会での追及に答弁拒否を連発(「[森友学園]口をつぐむ財務省 過去の国有地取引の答弁では…」朝日新聞デジタル2017年3月22日)、あるいは、学園側と財務省近畿財務局との交渉記録を廃棄したという(「森友学園 交渉記録の保存期間 財務省「1年未満」、専門家は「5年」」 毎日新聞2017年3月20日)。不存在というのは不自然であり、違法行為ないし虚偽答弁との指摘も多い(たとえば、醍醐聰のブログ「森友交渉記録廃棄は「脱法」その法的根拠は幾重もある」)。虚偽答弁まではさすがにないない…?当初廃棄したと説明した日報のデータが実は保存されていて、防衛省・自衛隊の隠蔽体質や稲田朋美防衛大臣のもとシビリアンコントロールが効いているとはいえない事態が明らかになった(「南スーダン日報 次第に追い込まれる稲田防衛相」毎日新聞2017年2月10日)。そんなご時世、事実ありのまま答弁されているのだろう…などと信じられるはずがない。
 籠池氏は、記者会見で安倍昭恵氏の秘書が財務省に森友学園の小学校用地のため国有地取得について問い合わせをしたことが、財務省官僚が「忖度」することにつながったのではないかと述べた(「[森友学園]籠池氏の手紙が「忖度」につながったのか。野党は「満額回答」政府「ゼロ回答」」BuzzFeedNEWS 2017年3月28日)。
 籠池氏の外国人記者クラブ会見に関し「忖度」を英語に翻訳しにくいことが話題になった。上位者がおそらく望んでいると思われることを下位者が先回りして予測し、何らかの対応をとる。忖度の常態化は、岡田憲治専修大学教授によれば、政治学の言葉でいえば「自発的服従による支配の制度化」である。民主政治において忖度が常態化すれば、政治や行政のアカウンタビリティ(応答性)が喪われてしまう。民主政治のもと、人々に多大な影響を与える諸決定が、どのような過程etc.でなされたのかを検証するには、言語が絶対に不可欠である。言語が存在しない忖度政治は、言葉の記録という民主政治の生命線を損なう(岡田憲治「「忖度は民主主義」という妄言について」ハフィントンポスト2017年3月30日)。忖度、交渉記録の破棄、日報の隠蔽。それらは全て、民主政治の根幹が揺らいでいるというサインである。

収奪国家化のサイン?
 なお、「忖度」が流行語大賞になる勢いだが(個人的には後述する「祈ります。」のインパクトのほうが大で口癖になってしまったが)、森友問題は「忖度」が問題なのだ、と決めつけるのも、早計だろう。「役人が忖度なんて、そんなバカな。役人は上からの指示を忠実にこなすのが使命」とある霞が関官僚OBは言っているという。それはそうだろう。出身省庁(経産省)でもない省にわざわざ森友のことで問い合わせした昭恵氏付きの秘書は、個人の判断であるはずがない。なお、森友へのファックスに関する共産党の小池晃参議院議員の質問に、菅官房長官が「夫人付き(の職員)個人が作成し、個人で所有していた」等と答弁したことに対し、ネット上でも秘書個人への責任転嫁、かわいそうという同情と衝撃が広がった。

 森友問題はこの国が深刻な状態にあることを多数の面から象徴する。ひとつは、中野晃一上智大学教授が示唆するように、「国民経済を喰い物にする個人独裁を政治学で「収奪国家」(predatory state)と言いますが、安倍政権の4年余りのうちにそのレベルまできていたことが、今、明らかになっているわけです。」ということ。安倍政権を支持する人たちに、この予言は響かないだろうか。「国家が発展するときにはその政治・経済制度が「包括的」であり、没落する時は「収奪的」になるという。格差社会は日本が没落する前兆だ。」「なぜ国家は失敗する?」という本にある言葉だとか。少数の人々が多数の人々から富を奪い、権力とチャンスを握ってしまう収奪的な政治経済に比べて、包括的な政治経済では、人々の潜在力を解き放ってイノベーションや投資、開発に向かう(「株式日記と経済展望」2012年4月15日)。
 この国が収奪国家化しているということも、森友問題は示したといえるが、なお政権支持率がさほど下がらないことに、ますます危機感が募る。

教育勅語を唱和させる教育方針の称揚
 森友問題で何より怖いのは、その「愛国主義」教育だ。
 問題発覚以前から、ネット上ふと塚本幼稚園の画像を見かけ息を飲んだことがあったが、発覚後に運動会その他の動画を見て震撼とした。子どもたちが「教育勅語」を唱和する。臣民として、天皇の統治する国に戦争があったら、公のために奉仕しろ、永遠に続く皇室のために戦争に行けというものだ(高橋源一郎の現代語訳を読むのが手っ取り早い。)。
 現代語訳では不正確?いや不正確といえば、靖國神社遊就館をはじめ神社に飾られているという教育勅語「国民道徳協会訳」こそ、問題である(以下は「教育勅語「国民道徳協会訳」の怪」の解説による)。まず、原文と一対一に対応していない。「臣民」(天皇の臣下たる民)は主権者である「国民」とは違うが、すべて「国民」と置き換えて誤魔化している「朕カ忠良ノ臣民」(私の忠良な臣民)を「善良な国民」と「訳」するのは明らかにおかしい。教育勅語においては、国民は単に「善良」であるべきだけではなく、天皇に対して「忠義」であるべきとされているのであるが、そのことがこの「訳」からは抜け落ちてしまっているのである。「皇祖皇宗」(私=明治天皇の祖先)と「爾祖先」(あなた=臣民の祖先)に同じ「私達の祖先」という「訳」を当てるという意図的な誤訳もしている。「我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所」を「祖先の教訓として、私達子孫の守らなければならないところ」と、やはり天皇と臣民との誤訳が重ねられている。極めつけに恐ろしい「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」を全く訳さず削除してしまっている。いったん有事となれば、いわば「永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。」(高橋源一郎の現代語訳)というところを。
 「教育勅語にもいいところがあった」なんてのんびりした誤解を広げるため意図的に誤訳しているとしか思えない。
 教育勅語を幼稚園児に暗唱させるような学校法人森友学園を、昭恵氏は評価し、同法人が開校を予定していた「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長を引き受け、公式サイトに、「瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。」等と賞賛する挨拶文を載せていた(現在は削除)。2015年9月の学園が運営する塚本幼稚園での講演で、昭恵氏は、「こちらの教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている。(卒園後)公立小学校の教育を受けると、せっかく芯ができたものが揺らいでしまう」と、公立学校の教育内容を批判し、むしろ森友学園下の教育、すなわち、教育勅語を唱和させ、運動会の宣誓では園児たちに「安保体制国会通過良かったです」、「安倍総理ガンバレ安倍総理ガンバレ」、「日本を悪者として扱っている、中国、韓国が心改め、歴史教科書で嘘を教えないよう、お願いいたします」というフレーズを言わせる、そんな教育こそ、「芯をつくる」素晴らしいもの、ということだ(宣誓の映像参照。昭恵氏の挨拶文や講演の内容については、「森友学園、安倍昭恵氏の挨拶文を公式サイトから削除 何が書かれていたのか?」ハフィントンポスト2017年2月24日吉川慧)。うろたえる。

「核の部分」を誤魔化して「教育勅語を取り戻す」?
 教育のあり方を戦時中の教育のように変えてしまう。森友問題が大きくクローズアップされたことを懸念し、そんな志向があらわにならないよう政権は巧妙に隠そう…とするかと思いきや、逆である。
 3月8日、稲田防衛大臣は、「教育勅語の精神である道義国家を目指すべき」「親孝行だとか友達を大切にするとか、そういう核の部分は今も大切に維持している」と答弁した。しかし、道議国家という言葉は前述の誤訳ばかりの国民道徳協会訳に書かれてはいるものの、本来の教育勅語には記載がない(前述の「教育勅語「国民道徳協会訳」の怪」参照)。「核の部分」は、「親孝行だとか」ではなく(そんなことは古今東西様々な文献にあり教育勅語をあえて持ち出す必要もない)、国民道徳協会訳がオミットし稲田大臣もスルーした「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」にある。なお、紙数が足りないので、稲田防衛大臣の森友学園前理事長の籠池氏との関係についての虚偽答弁の問題については触れられないが、「稲田防衛大臣に教えたい「“親孝行”だけでは済まない教育勅語の本当の危険性」週刊女性2017年4月4日号等には、答弁の問題点のみならず教育勅語に関する見解の問題点にも言及がある。
 安倍政権は稲田大臣の見解に頭を抱える…のではなく、なんと3月31日、教育勅語につき、「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」と閣議決定してしまった。日本国憲法の国民主権や基本的人権の尊重とは相いれないから、国会は1948年に教育勅語の排除・執行の確認を決議した。第1次安倍政権時の2006年にも、伊吹文明文科相(当時)は「戦中の教育に対する反省などから、天皇陛下のお言葉を基本に戦後の教育を作ることは、そぐわないということになり、教育基本法が作られ、衆参両院の議決によって教育勅語は実質的に廃止されたと理解している」と答弁したというのに、憲法や教育基本法に反しない形などありえない。島薗進上智大教授が指摘するように、「個々人の命が軽んじられた歴史を学ぶためなら必要かもしれないが、教育現場で一方的に教え込む権威主義的な使い方をされかねない。日本の未来に関わる判断であり、時の政府の都合で閣議決定すべきでない。」時代は前進するどころか、どれほど後退していくのだろうか(「教材に教育勅語、否定せず」朝日新聞2017年4月1日 水沢健一記者)。

 政府は島薗教授がいう歴史を学ぶためという限定など残念ながらしていない。もうみんなで居直ろうということか。松野文科大臣は、4月4日、教育勅語を道徳の教材に用いることを否定しなかった。義家弘介文科副大臣は、教育勅語の朗読は「問題のない行為」と答弁した(「教育勅語の朗読は「問題のない行為」義家弘介・文科副大臣が答弁」ハフィントンポスト2017年4月7日 中野渉)。

 作家の中島京子さんと同じく、「気がつくと日本国中が森友学園みたいな学校だらけになっているのではないかと想像して、私は怖い」(「時代の風 森友問題の本質」毎日新聞4月2日)。

その他虚構としか思えないニュースが続々
 ありえない閣議決定や大臣の答弁が続々登場する今日このごろ、新聞が虚構新聞のようだ。戦前の軍事教練の流れをくむ銃剣道が2021年春に中学で実施される新学習指導要領の本文に、保健体育で必修の武道の選択肢として明記されるとか(「指導要領に「銃剣道」「武道の一つ」「戦前か」「ヒゲの隊長」後押し」毎日新聞4月9日)、パン屋のときは「国や郷土を愛する態度」を学ぶという観点で不適切だ、と文科省からケチがついた道徳教科書が、和菓子屋に修整したら検定をクリアしたとか。この点、大炎上となった後、パン屋にしろと検定意見なんてしとらん、とこんなことまで閣議決定が登場。しかし、ビフォーは×でアフターは○という結果はあったことまでは、政府も否定していない。抽象的な「国土や郷土を愛する態度」の尺度などなく、こんなことでケチをつけられたら、検定を何とかクリアしたい教科書会社としては、それこそ文科省の顔色をうかがい、その意向を忖度する(「「パン屋」→「和菓子屋」、文科省への忖度 池上彰さん」朝日新聞2017年3月31日)。そして、無事パン屋を消し和菓子屋にしたら検定を通ったという結果を他の会社も学ぶ。そして、文科省が気に入りそうな内容にしていこうと、「和」風のものをちりばめることになるだろう。内容のコントロールは、直接でなく間接でも容易なのだ。

 本当に現実が虚構新聞のようだ。虚構だったらどれだけいいか。ん?虚構新聞が「日本の『謙虚』、海外アピールに200億計上」という2015年2月17日の虚構記事が現実化したとお詫び文を掲載した(「虚構新聞、フェイク記事の現実化でお詫び 経産省200億円政策を痛烈風刺」4月7日)。現実ではありえないニュースが現実になっていく、リアル悪夢。もうたくさんだ…。
 おお。朝日新聞毎日新聞東京新聞日経新聞読売新聞その他各紙が教育勅語に関する政府の見解を憂いている。当然のことだが、ついこのリアル悪夢のご時世なので、喜びを感じる。まだ、押し止められるはず。頑張ろう。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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