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彼女たちが生き抜いてきたこと自体が立派なのです

具ゆり2017.08.17

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 夏もあと少し。苦手な暑さですが、もう一息のガマンです。
 私はこのところ、公的機関の女性相談との関わりが増えて、民間の有料カウンセリング(フェミカンルーム)とは違う形で出会う女性たちとつながりを深めています。

 公的機関の相談は無料です。民間の有料カウンセリングと違うのは、まずそこ! 電話相談も面接相談もある場合は、相談者にとってはメリットの多い制度です。
 ただ、一口に女性相談といっても、自治体によってはその体制や相談員の資質に温度差があるし、問題もありますね。自治体の取り組み姿勢と相談員への教育・指導もさまざまで、その成果も大きく異なります。「女性の悩みごと相談」としてなんでもござれで開設しているところもありですが、それでもDV専門相談や子育て・虐待対応と、公的機関の相談と支援は役所の仕事として対応する役割と責任があり、一応はその形が整えられてきているといえます。

 女性の問題は個人の問題としてかたづけられるものではありません。
 それぞれの個別の問題は、確かにその人個人のものに違いありません。でも、フェミカンは、その背景に蔓延している問題を踏まえる立ち位置は譲りません。背景にあるジェンダーや暴力の支配構造が、どのように個々人を、相談者個人を縛ってきたか、縛られてきたか。プライベートな家庭や人間関係にいかように影響をおよぼしているか。その視点に立たなければ、相談の中で読み解いていかなければ、社会の中の女性への人権侵害としては扱われず、問題が矮小化されてしまいます。

 民間との大きな違いは、役所はいきなり飛び込んでくる相談に、今すぐ、臨機応変に対応せねばならないところです。どんな相談であれ、来たものには適宜迅速な対応が迫られます。役所ですから、その情報量、福祉やDV・子ども虐待との支援、法律相談をはじめとした支援体制、庁内連携などは言うまでもありません。もちろん警察、児童相談所も含めて、行政サービスとして取り組むべき仕事です。そこは連携の素早さなどを目の当たりにすると、さすが、と思えます。ただ、自分の部署から手が離れたらそれまで・・・という感じは残ります。残念ですが、そういうものなんでしょうか・・。

 すでにフェミニストカウンセラーが関わっている自治体はあるし、長年の相談の成果や実績をあげている自治体の信頼性も実証されています。私自身も、お呼びがかかること自体名誉なことですから、フェミカンで培ってきた経験、相談姿勢、ジェンダーの視点を、より広い現場で活かせるチャンスと考えています。

 今は、相談員がフェミカン的視点での問題の見立てができること、その見立てにそった相談ができるよう、レベルアップが課題です。問題解決に至る道筋を深めたり、見極めるスキルは多くの実績から身につきます。相談を継続させて、相談者とのつながりをもつこと、個々の自己研鑽をすることのほか、スキルアップ研修に力を入れている段階です。

 現場では、カウンセラーや相談員が、見えている問題だけにとらわれるのではなく、相談に潜んでいる背景をどう見立てるのか、が常に問われます。その見立てや対応いかんで、相談者が自分の問題を問い直したり、とらえ方や認知の変化がもたらされるのです。さらに、女性としての生き方を再考したり、解決に向けて自分で決めたり、行動するなど、ダイレクトに相談の進捗が違ってくるのです。
 経験不足や知識不足は誰でも挽回できます。私自身、20年もよくやってきたなという思いと同時に、一人で難なくここまで来たわけではありません。中途半端で終わった相談ほど心残りがあるし、ドタキャンされた気がかりなケースもヤマほどあります。一方で10年以上継続している相談者もいれば、終了しても折々の便りを届けてくれる方など、さまざまな出会いに恵まれました。
 今もつながっているクライエントさんたちとも、いつか見送る日がくるでしょう。

 さて、現場の相談員たちは、経験不足や知識不足だからといって、目の前の相談に「ごめんなさい」ではすみません。自分のもてる力量で誠意ある対応をするしかありません。
 私の役割は、相談員に並走することと相談員のエンパワメントです。それが、彼女たちが相談者をエンパワーすることにつながると思うからです。
 相談員はどのケースに対しても精いっぱい、全力で取り組んでいます。誰だってわざと手を抜くわけがありません。でも、迷います。悩みます。不安です。
 「これでよかったのかな・・・もっとできたことがあるのでは・・・次の相談ですべきことは何だろ・・」。相談者のことや自分の相談対応のことが頭から離れずに、ふだんから、つい考え込んでしまうこともよくあることです。
 こちらも相談のSVとして真剣です。

 <相談に正解なんてないよ。「うまくやらなきゃ」とか、「相談者(彼女)の代わりに解決しなくちゃ」とか、「何と言ってあげればいいか」とかは考えなくてもいいこと。彼女には自分の人生を生きる力がある。自分の人生をどう生きるかは彼女が決めること。その権利が彼女にはあると、あなたが本当にそう思っているか、彼女を信じられるか。そこを土台にしようね。今の彼女には目の前の問題で頭がいっぱいだから、自分のことがよく見えないかもしれない。そんな彼女の本当の問題は何なのか、そこの何を気づいてほしいかはあなたの見立て次第。しかも、それをどう気づいてもらえるように相談を進めていくか、が難しいところ。そこは腕を磨いていこうね・・・>

 相談員も手探りですが、一人で抱え込まないでいいんだ、という肩の力が抜けると、がぜんモチベーションは高くなっていきます。
 そう、怖がらないで、彼女の生きる人生に寄り添っていけば、彼女自身で自立していく時が来るのです。そのプロセスにお付き合いする役割だと思えば、一緒に人生をふりかえりながら、今困っている問題の本質を探ったり、これからの道筋がみえてくることもあるのです。ぐだぐだと同じところを行きつ、戻りつ、時間のかかる人もあれば、さっさと動く人もいます。でも、それを待てるか、見守れるかは、こちらが問われる問題です。

 相談者の中には、とても根の深い、深刻な性暴力や虐待被害のトラウマを抱える人、それらの影響で精神疾患症状をかかえた女性が何人もいます。一見しただけではわかりにくいのが常です。そう簡単に自分の根の深い問題をぶつけてくるわけではありません。
 私たちにできることは、少しずつ関係を構築していくこと。ラポール(信頼関係)が生まれるのを待ち、ちょっと背中を押すこともありますが自ら語ることを待ちます。

 そんな彼女たちに対峙するには確かに覚悟がいります。でも、カウンセラーや相談員の覚悟なんて、大したものじゃない。彼女たちが生き抜いてきたこと自体が、映画やドラマと比べ物にならないほどの壮絶な人生だったかもしれないのです。どんなに問題が悲惨でも、残酷な事実でも、生きぬいてきたことが立派です。ほんと、根性ある人が多いのです。

 でも、そんな人生を望んでいたわけじゃないよね!?
 怒りたいだけ怒ったり、泣きたいだけ泣いたりして、これまでの自分にどうケリをつけるかだよね? それをやりつくしたら、自分の人生が見えてくるかもしれない。
 諦めるなんて、悔しいじゃない。どう、やってみない?


 真実を聴くほど、知るほど、彼女たちへの敬意は増すばかりです。

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具ゆり

具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んでいる。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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