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 昨年12月の前回には、「慰安婦」像設立に関し、大阪市長がサンフランシスコ市と姉妹都市関係を解消する方針を表明したことなど、「日本の名誉」をかえって損なう「歴史戦」運動の展開をご紹介した。
 さて、明けましておめでとうございます、新年からは明るい未来が待っている!
 …どうもそうではないらしい。

野田総務相がドゥテルテ大統領に遺憾の意
 野田聖子総務大臣は、1月9日、フィリピンの首都マニラでドゥテルテ大統領と会談し、2017年12月に「慰安婦」を象徴する女性像が同市内で設置されたことについて「非常に残念だ」と遺憾の意を伝えた(2018年1月10日朝日新聞デジタル「野田総務相、ドゥテルテ氏に遺憾の意 慰安婦像設置受け」)。大統領からは返答なし。野田大臣は「理解いただけたと思う」と記者会見で述べたというが、どう考えてもスルーされたとしか思えない。

 サンフランシスコ市と姉妹都市関係を解消するとの大阪市の決定が「人権を軽視し、女性差別的な国」という印象を与え、かえって国際的に「日本の名誉」を損なうと、前回のこのコラムで引用した山口一男シカゴ大学教授が述べたことは(「大阪市の決定の反国際性 サンフランシスコ市との姉妹都市解消の意味すること」2017年11月28日)、野田総務大臣の行動にもそのまま当てはまる。

 ドゥテルテ大統領が推進する「麻薬撲滅戦争」の下、超法規的な殺人が横行する自体になっていると、国内外から批判がわき上がっている(「焦点 フィリピン麻薬戦争1年、死者数千人でも見えない勝利」2017年6月28日ロイター)。米国と欧州議会は超法規的殺人に明確に批判しているが、日本政府は「長い沈黙」にあり、ODA等「気前の良い支援表明」をするばかりであるが、普遍的人権と法の支配を重視する友好国の責任として、明確に批判し、殺害事件に関する国連主導の国際調査への支持を表明するべきである、と2017年10月のドゥテルテ大統領の訪日前にヒューマンライツウオッチのアジア局副ディレクターPhelim Kine氏は指摘している(「人権ウオッチ:安倍首相は、血塗られたフィリピン政府の「麻薬撲滅戦争」を非難すべき ドゥテルテ大統領の訪日「いつも通り」ではすまされない」)。しかし、同月30日の日・フィリピン首脳会談でも、安倍首相はPhelim Kine氏の指摘した友好国の責任を果たさなかった。

 1月の野田総務大臣の記者会見からしても、この点に触れた形跡はない。「遺憾の意」を伝えるべきはこの点であるはずなのに。
 まさかと思いたいが、友好国の人権侵害に目をつぶっているのだから、日本の人権侵害についても目をつぶってくれていいではないか…と思っていたのだろうか。

国際社会において「名誉ある地位」を占めるには
 日本国憲法前文には、こうある。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」

 名誉ある地位を占めたいというなら、フィリピンでの人権侵害についても無視しないで意見すべきである。
憲法前文の要請に沿い、さらには、「軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題」である「従軍慰安婦」問題について、「心からお詫びと反省の気持ち」を持ち、「このような歴史の真実を回避することなく、歴史の教訓として直視していきたい」とし、「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返せないという固い決意を表明」したからには(河野談話)、サンフランシスコ市やフィリピンでの「慰安婦」像設置については、「永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返さない」という同じ決意のもとにあると、歓迎すべきことではないか。

日韓合意 その後なぜ炎上…?
 日韓合意をめぐる展開については、十分フォローし展開する余裕がない。そもそも、日韓合意とは何だと検索して読みたくても、文書はない。不思議な話だが、その点は措く。文在寅大統領は、1月10日の記者会見で、9日に発表された韓国政府の処理方向に関する質問に答え、両国間の公式的合意であるため、満足できなかったとしても、現実に最善の方法を探すしかないとし、「前政権で両政府がお互いやりとりする方式で被害者を排除した中で問題解決を図ったこと自体が間違った方式だった」と批判した。「基本的に慰安婦問題は真実と正義の原則に基づいて解決されなければいけない」とし「日本がその真実を認め、被害者に誠意を見せて謝罪し、それを教訓として二度とこのようなことが起きないように国際社会とともに努力していく時、おばあさんたちもその被害を許し、日本を許すことができるはずであり、それが完全な解決になると考える」と述べた(「文大統領「慰安婦問題、完全な解決には日本の誠意ある謝罪が必要」…新年記者会見)

 再交渉をするということではないし、政府間の法的な賠償請求などの話ではない。安倍政権も見直さない、継承すると答弁している河野談話(安倍政権の河野談話見直しに関する質問主意書・答弁書)で上記の通り言明していることと沿う話ではなかろうか。

 我が家では「歴史戦」と銘打っている某紙以外の3紙を取っているのだが、なぜか某紙が乗り移ったかのような炎上モードであり、めまいがする。
 康京和韓国外相は、平昌オリンピックに招請したが(2017年12月19日日経新聞)、2018年1月10日、安倍首相は開会式に欠席する方針を固めた。表向きは、1月22日に召集予定の通常国会の日程があるとするが、日韓合意についての韓国の姿勢に腹を立てたポーズをとるということもあろう。国内の報道では、表向きの説明よりも、日韓合意をめぐる韓国の姿勢にがつんと姿勢を示したかのような喧伝ぶりだ。

 そもそも、それって五輪の政治的利用ではないのか。東京五輪・パラリンピックで開かれる2020年を「新しい憲法が施行される年にしたい」と述べた安倍晋三首相に対してこんなことを言うのも、今更か…(「首相改憲発言 五輪を利用していませんか?「共謀罪」でも」毎日新聞2017年5月11日佐藤丈一、曽根田和久)

「慰安婦」問題を教える教師に希望、しかし
 今年もめまいばかりする一年か…。
 うんざりしながら新聞を開いたら、平井美津子さんという公立中学校の社会科教師を紹介した記事が名に入った(「(ひと)平井美津子さん「慰安婦」問題を公立中学で教え続ける社会科教師」朝日新聞2018年1月12日大久保真紀)
 戦争の本質の実相を知ることは、戦争を防ぐ力になると思う。
 こんなご時世に、大丈夫か…とつい心配になる。実際、「排外主義的な言論を繰り返す団体の関係者が学校に押しかけたこともある」。でも、「忘れたらあかんことがある。私たちには記憶していく責任がる。」。
 涙が出た。
 締め付けが厳しいはずの公立中学校でこんな素敵な先生が教え続けているなんて、希望が抱ける。
 でも、生徒や保護者から信頼が厚く(「愛してる!」と卒業式で卒業生から声を合わせて言われるほど!)、勇気がある希有な先生だけに頼っていてはいけない。

 「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを繰り返せないという固い決意を表明」する河野談話を継承した日本政府として、本来、永く記憶に留める歴史教育を推奨すべきなのだから。

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打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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