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マモルくんたちの恒例イベント

牧野雅子2018.01.25

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1月のある休日。警察の年頭視閲式を見に行ってきた。

年頭視閲式 : 平成30年京都府警察年頭視閲式は、「力強く頼りがいのある警察」を目標に、警察職員相互の団結、厳正な規律の保持及び士気の高揚を図るとともに、京都の治安維持を府民の皆さんにお誓いするために行うものです。力強い京都府警察をご覧ください。(京都府警HPより)

この「説明」ではなんのことやら分からない。ざっくり言えば、制服を着た警察官が本部長や来賓の前で行進したりデモンストレーションをしたりする、マモルくんたちの年始の恒例イベント、である。
実のところ、年頭視閲式を見たのは初めてだ。出たことはあっても見たことはない。だいたい、寒風吹きすさぶ中、屋外で1時間も立っているなんて耐えられない。それなのに見に行ったのは、最近読んだ本の中に視閲式に触れたくだりがあり、そういえばこの時期だったっけ、と思い出したからなのだった。さいわい、会場までは、家から歩いて30分とかからない。
その日の京都は暖かかった。観覧者もかなりいる。耳に入ってくる彼らの話を聞いていると、警察官の家族が少なくないようだった。

府民の安心と安全を守るために云々…という警察本部長の訓示に来賓の挨拶、機動隊員によるデモンストレーションが終わり、行進が始まった。先導するのは女性白バイ隊。赤いユニフォームは、女子駅伝の先導でおなじみである。そして、カラーガード隊、音楽隊が続く。
カラーガード隊の女性警察官たちは、ミニ丈の赤いユニフォームにドゴール帽、白いブーツ。いくらタイツを履いているとはいえ、露出した(という言葉を使いたくなる!)脚が目に寒い。今は昔とは違い、女性警察官の制服も、スカートではない。なのに、カラーガード隊は、今でもミニだ。
カラーガード隊は、音楽隊と共に広報活動を担う「見せる音楽隊」「音楽隊の花」となるべく発足した。交通安全運動や各種行事、福祉施設への慰問に赴く。

カラーガード隊 : 京都府警察カラーガード隊は、警察音楽隊の活動をよりスマートにするなど一層の充実を図るため、昭和54年11月に創設されました。 隊員は女性警察官で編成されています。 フロアドリルのほか、ステージドリル、街頭啓発パレードなど、警察音楽隊と共に広報活動を行っています。(京都府警HPより)

スマートにするためになんで女性が必要なんだ? いや違う、なんで女性の「脚」が必要なんだ? っていうか、スマートにするってどういうこと?
だいたい、警察は痴漢被害に遭わないために、ミニスカートをはくなって言ってなかったっけ? このスカート丈はどうなの? 最近読んだカラーガード隊経験者の手記には、自分たちの存在を自嘲気味に「パンチラ公認」と書いてあった。スマートだかなんだか知らないけど、市民に親しみを持ってもらうためという名目で女性警察官にパンチラさせ、一方では、ミニスカートは痴漢を招くからはくなと。これって、どういうこと?

遠方の図書館で郷土資料を調べていたとき、ある県警の機関誌に交通安全パレードについて書かれた記事が目に留まった。記事によれば、パレードを先導したカラーガード隊は市民の注目の的だったそうで、その様子が「中老年男性のほとんどは、パレードより隊員のスマートな脚にみとれていたとか」(『警鼓』68(5) 1990)と、おそらくはユーモアを交えたつもりであろう文体で書かれていた。ひゃあ、キモい! 沿道の「中老年男性」が若い女性隊員の申し訳程度の長さの(っていうか、短さの)スカートから出た脚をニヤけながら見ている、でもって、それを見て、してやったり、とほくそ笑む署の幹部たち(もちろん、男性だ!)がいる。二重にキモい! 自分の職場の女性たちがオッサンたちからいわば性的な目で見られているのを見て喜んでいるわけだ。もちろん、自分たちが組織内の女性を「そういう目」で見ているから、できることである。オッサンがオッサンに、若い女の脚を提供する。いやいや、キモいどころの話じゃない。そして、これは、決して過去の話ではない。

制服姿の女性警察官部隊が目の前を過ぎていく。そこに、司会進行役が「女性ならではの能力・特性を活かす等幅広い分野で活躍します」と解説を入れる。女性ならではの能力とは何だろう。特性とは何だろう。そして、わざわざそれを言うのはどうしてなんだろう。
先のカラーガード隊を思う。「見せる音楽隊」という目的でデザインされたユニフォームだ。赤いミニ丈のユニフォームこそが、わたしたちに雄弁に伝える。

年頭視閲式が、警察が市民にアピールする場でもあり、見せたい姿を凝縮したものであるならば、警察が考える女性の特性や役割は、いまだに、身体を晒して人目を引き、組織の広告塔になることなのかと落胆せざるを得ないのだ。それは、「府民の安心と安全を守る」ことの対極にあるんじゃないのかと思わざるを得ないのだ。ましてやそれを「女性の活躍」という言葉で呼んでは欲しくないのだ。
行進を締めくくる「後押さえ」もまた、女性白バイ隊だった。

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牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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