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警察ネタじゃない話がしたい、と思いつつ、問題を目にすると素通り出来ない。ということで、今回もこの話題で。

この春、兵庫県警のHP女性のための防犯ページがひどいということで批判を浴び、削除された。(どんだけ酷かったかってことは、こちらを参照。
https://www.lovepiececlub.com/feminism/mamoru/2017/02/23/entry_006502.html
ただし、記事にあるリンク先の県警HPは変更後のもの)。そのことは新聞でも報道された。

『毎日新聞』 2018.4.6 大阪朝刊27面
「下着ヒラヒラ 痴漢ムラムラ」 HPの注意喚起削除
「きれいな下着がヒラヒラ、痴漢の心はムラムラ」「肌を露出した服装は痴漢も大好き」。痴漢に遭わないための行動や服装について、女性向けに啓発する兵庫県警のホームページ(HP)上の文章表現が、閲覧者から不適切との批判を受け、削除されたことが5日、分かった。 (中略) 県警生活安全企画課によると、約10年前から公開。今月に入り、「表現が軽いのではないか」などのメールが複数届き、3日に全文を削除した。同課は、詳細な表現の確認をしていなかったとし「古い表現もあった。時代に合った内容に作り直す」としている。(後略)

実は、この新聞記事にも問題があって、HPが批判されたのは、文章表現が問題だったからじゃないのだ。根本的に、考え方が間違っているから、表現「も」不適切だったということ。
新聞記事によれば、兵庫県警は、問題になっているのは「表現」(のみ)だと思い、それも、表現が古かった、時代に合っていなかったことが問題だと思ったということらしい。つまり、自分たちのミスは、古いものを放置したことだ、と。とんでもない矮小化だなあ。

一方、兵庫県警は、毎月、HPに「女性のためのセーフティー・マンスリー ~女性を狙った性犯罪等の発生状況と防犯対策~」を掲載している。毎月更新しているんだから、時代に合ったもの、のはず。ところが、今年8月号には、こんなことが書かれていた。「暑い夏は、ショートパンツやミニスカート、胸元が開いたファッションをしたくなりますね。けれど、肌の露出が高い服装は男性を刺激してしまうことも!」。

このページの「表現」は、女性が好きなファッションを楽しみたいという意思を尊重し、服装が「男性を刺激してしまう」こともあるという情報を提供するけれども、そういう服装をするなとは強要しない、という態度を示したものになっている。被害者非難を出来るだけ避けようとしているのが見て取れる。でもね。女性に対する防犯指導を目的とした、読者を女性に限定した場であるゆえに、加害者に対する批判や警告のメッセージは書かれていないということを除外しても、これは酷いとしか言いようがないのだ。なんせ、ここに書かれていることは事実に基づいたものではないのだから。

前にも取り上げたことがあるけれど、内山絢子(科学警察研究所防犯少年部付主任研究官)「性犯罪被害の実態(3)―性犯罪被害調査を元にして―」(『警察学論集』2000年 53(5))によれば、警察が扱った性犯罪被疑者553名について行った調査では、被害者の選定理由として被害者の「挑発的な服装」を上げたのは、5.2%に過ぎず(ちなみに、複数回答のため、すべての回答の数値を合計すると246.4%になる)「従来流布されていたような被害者側の責任といったことは、ほとんど理由となっていないことがわかる」。

付け加えるのもばかばかしいのだけど、論文の出た2000年の情報が古くて、ミニスカートが性犯罪を呼ぶっていう方が今の情報、なんてことはないので念のため。

また、たとえ被害に遭った女性が、ミニスカート姿であったからといって、ミニスカート姿「だから」被害に遭ったわけではない。ミニスカート姿であったという外形的な事実と、本人の犯行動機、外部の者が加害動機・原因が被害者の服装に起因していると考えるのは、全く違うことだ。

事実に基づいていない認識によって(しかも、警察組織が出した「科学的調査結果」があるにもかかわらず)防犯指導を行うということは、これは、もう性犯罪被害を防ぎたいから防犯指導をするというのではないことを意味している。性犯罪を防ぐ(防犯)ことが目的なのであれば、事実に基づいた対策をとるはず。でもそうなっていないのは、女性のミニスカート姿そのものを問題にしたい、服装を管理したい、女性の行動を取り締まりたい、そちらに目的があるということ。やっていることは、性犯罪をなくすための活動ではなくて、性犯罪を脅しに使っての、女性の服装の管理、性規範の押しつけ、行動の抑制。いつの間に、警察はそんなことに口出しするようになったのか――って、前からそうでしたっけね。

「男性を刺激」と、加害者を男性一般に広げてしまうのも致命的。男は誰もが性犯罪者だと思えとでも? 性犯罪を、女性の服装に刺激された男による「自然」なものとみなすのは、男性全般を加害者に仕立て上げる言説で、こうした考え方は、男性諸君が恐れているらしい痴漢冤罪の元凶でもある。

春にHPが批判されたのは、県警の女性や性暴力に対する見方や考え方に、根本的に問題があるから。でも、何が問題にされていたのか、全く聞いていなかった、分かっていなかったということですね。それなのに、被害者に寄り添うとかよく言えるなあ、と思う。
ところで、兵庫県警のカラーガード隊の制服はミニスカートですが、これは問題にならないんでしょうか。
https://www.lovepiececlub.com/feminism/mamoru/2018/01/25/entry_006787.html 

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牧野雅子

牧野雅子(まきの・まさこ)

龍谷大学犯罪学研究センター
『刑事司法とジェンダー』の著者。若い頃に警察官だったという消せない過去もある。
週に1度は粉もんデー、醤油は薄口、うどんをおかずにご飯食べるって普通やん、という食に関していえば絵に描いたような関西人。でも、エスカレーターは左に立ちます。 

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